昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

鼠小僧次郎吉 ~さると猿回し~ 二十二

2010-08-28 14:02:33 | 小説
屋敷からの帰り道、
次郎吉は今夜の収穫の大きさに胸が高ぶった。

何と二日後の夜、
茶会の為に主人が外出するというのである。

本家筋にあたる為、
お泊まりになるはずだとも。

命の洗濯をするから、
お前も来いというのである。

次郎吉は、
小躍りしたい気持ちである。

主人の居ない大名屋敷ほど
無防備な屋敷は無い。

皆、
酒に溺れて寝てしまうのが常であった。

次郎吉は、
その日以外に無いと決断した。

その夜、
薄曇りの天候で月明かりも弱い。

忍び込みには絶好である。

屋敷内は、
シンと静まり返り、
木の葉の落ちる音さえ聞こえそうである。

皆、
疲れ果てて眠り込んでいるようだった。

音を立てぬよう、
抜き足・差し足と、
長局奥向に近づいた。

半開きの障子から中を窺うと、
飲みつぶれた家臣達が寝転がっている。

次郎吉の目指す長局奥向には、
人影は無かった。

一つの局に
腰元達が三・四人は居るはずである。

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