昭和の恋物語り

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大長編恋愛小説 【ふたまわり】(二)の4

2011-02-26 16:55:48 | 小説
どこから品物を調達してきたのか、
大量の物資を抱え持つ富士商会は、
瞬く間に一大勢力となった。
テキ屋達が列を作り、
その物資を血眼になって求めた。
汲めども尽きない井戸水の如くに、
物資が提供された。
勿論、
日本軍の隠匿物資の一部であることは確かなのだが、
それだけではなかった。

進駐軍に対し、
軍の隠匿物資の事実を暴露したのである。
そしてその橋渡し役は、
五平であった。
進駐軍の通訳であるトーマス・カトウ軍曹は、
幸運なことに五平の遠い親戚筋に当たった。
祖父方の一人が、
戦前にアメリカに渡っていたのだ。
祖父の墓参りに来ていたトーマス軍曹に、
偶然に出会ったのが幸運の始まりだった。
更に、
五平の女衒という生業が幸いした。
トーマス軍曹は、
進駐軍の高官達のオンリーと称された現地妻探しを極秘に命令されていた。
それを五平が請け負ったのだ。
その見返りとして、
進駐軍からの物資調達に道が開かれた。
更には、
本国に戻る米兵の土産物を一手に販売する権利を得た。


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