昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(四十九)の一と二

2012-10-27 13:24:59 | 小説

(一)

「おう、昨日はご苦労だったな。それでどうだった?」

「安心してください。
無事、入院ですわ。

おふくろさんも、今回ばかりは、ですわ。」
と、合掌の真似をする五平だ。

「うん、そうか。」
満足げに頷く武蔵。

「なにせ、本性を現しましたから。」
「どういうことだ?」

「見張りが居たんでしょう。

三人連れの恐いお兄さんを引き連れての、ご登場でした。
さすがにおふくろさんも、ビックリですわ。」

「ほう、やっぱりだったか。でっ?」

「でって、そんなもの。
何という事はないです。

ギャーギャー騒いでましたが、一喝して終りですわ。
あの親分さんの名前を出す必要もなかったです。」

「なんだ、そりゃ。
素人さんか?」

「そこらの食いっぱぐれですわ。
ついニ三日前に雇われたようです。

祈祷師やら占い師やらの間で、結構有名になっていましてね。」




(二)

「どういうことだ、それは。」

「入れ替わり立ち代りの状態になっていました。

一つ二つどころか、二桁に迫る状態です。
驚きましたよ、まったく。」

「そんなにか! 食い物にされていたんだな。
もっと早くに相談すればいいものを、竹田の奴。」

眉間に皺を寄せて歯がゆがる武蔵に、五平も相槌を打つ。

「まったくです、残念です。
あたしも迂闊でした。

机の前でぼんやりとしている竹田を見はしたのですが、まさかこんなこととは…。
思いも寄りませんでした。」

「竹田の奴、大はしゃぎでした。
車の中で、喋ること喋ること。
初めてですよ、あんな竹田を見るのは。」

「そうか、そんなに喜んだか。」

「いや、違いますぜ。
勘違いなすってる。」

「勘違いって、お前。どういう意味だ。」

「小夜子奥さんですよ、奥さん。」

ニタニタとする五平に、
「小夜子がなんだ! 惚れたっていうのか、竹田が。」
途端に不機嫌になった。


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