昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (二)やれやれ

2024-09-28 08:00:05 | 物語り

やれやれと思ったものの、甘かった。
帰宅後にかならず話をきかせてくれと、念をおされた。
まあ暇をもてあましているのはわかるのだが、
〝わたしは男なんですよ。勘弁してくれないかなあ〟。
そんな思いをもちながら、車にのりこんだ。

ハローワークの担当者が口すっぱくすすめる、エコ検定なるものがあった。
「邪魔になるものでもありませんし、ぜひお取りください。
わたしとしては、エコ検定をおすすめします。
大丈夫です、専門知識はいりません。問題集もでていますし、常識問題ばかりです。
こうした資格というのは、あんがいと再就職に有利にはたらくものですよ」

神妙な顔つきでうなずいてはみたものの、こころ内では
“受験だって? なんでいまさら…。かんべんしてくれよ”と舌打ちものだった。
しかし再就職に有利にはこときくにいたって、取得を決めた。
さっそく本屋によって問題集を買った。

まったく、なん十年ぶり…四十年以上か…、試験などとは。
眠気におそわれつつも、コーヒーのがぶ飲みで頑張った。
面接ではおもったいじょうの好感触で、有期けいやく社員としての入社がきまった。
有資格者として、好印象をもたれたようだ。

正直のところ、半信半疑だったけれども、これが見事にはまったわけだ。
ありがたくて、ハローワークの担当者には、感謝かんしゃだ。
あちらに足をむけて寝るわけにはいかない。

「フォークリフトの運転は…」
工場内を案内してくれる主任が問いかけてきた。
わたしは嬉々として「はい、前の会社で運転してました」と答えた。
「いやあ、そうですか。それはありがたいです。
それじゃ、免許証を初出社時にお持ち下さい。
コピーを取らせて頂きたいので」

「免許ですか? あるとは聞いていますが、無しで運転していました」
「それじゃ、だめですね。うちの会社では、免許がないとだめなんです。
そうですか、それは残念だ。あ、でもご心配なく。
山本さんにお願いしたい部署では、必要がありませんから。
持ってみえたらいいなあ、という程度のことですから」

明るく笑ってくれる主任の言葉に、ホッと胸を撫でおろした。
このことで採用が取り消されては、たまったものじゃない。
結局、給料の締め日の関係で、四日後からの出社となった。



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