やれやれと思ったものの、甘かった。
帰宅後にかならず話をきかせてくれと、念をおされた。
まあ暇をもてあましているのはわかるのだが、
〝わたしは男なんですよ。勘弁してくれないかなあ〟。
そんな思いをもちながら、車にのりこんだ。
ハローワークの担当者が口すっぱくすすめる、エコ検定なるものがあった。
「邪魔になるものでもありませんし、ぜひお取りください。
わたしとしては、エコ検定をおすすめします。
大丈夫です、専門知識はいりません。問題集もでていますし、常識問題ばかりです。
こうした資格というのは、あんがいと再就職に有利にはたらくものですよ」
神妙な顔つきでうなずいてはみたものの、こころ内では
“受験だって? なんでいまさら…。かんべんしてくれよ”と舌打ちものだった。
しかし再就職に有利にはこときくにいたって、取得を決めた。
さっそく本屋によって問題集を買った。
まったく、なん十年ぶり…四十年以上か…、試験などとは。
眠気におそわれつつも、コーヒーのがぶ飲みで頑張った。
面接ではおもったいじょうの好感触で、有期けいやく社員としての入社がきまった。
有資格者として、好印象をもたれたようだ。
正直のところ、半信半疑だったけれども、これが見事にはまったわけだ。
ありがたくて、ハローワークの担当者には、感謝かんしゃだ。
あちらに足をむけて寝るわけにはいかない。
「フォークリフトの運転は…」
工場内を案内してくれる主任が問いかけてきた。
わたしは嬉々として「はい、前の会社で運転してました」と答えた。
「いやあ、そうですか。それはありがたいです。
それじゃ、免許証を初出社時にお持ち下さい。
コピーを取らせて頂きたいので」
「免許ですか? あるとは聞いていますが、無しで運転していました」
「それじゃ、だめですね。うちの会社では、免許がないとだめなんです。
そうですか、それは残念だ。あ、でもご心配なく。
山本さんにお願いしたい部署では、必要がありませんから。
持ってみえたらいいなあ、という程度のことですから」
明るく笑ってくれる主任の言葉に、ホッと胸を撫でおろした。
このことで採用が取り消されては、たまったものじゃない。
結局、給料の締め日の関係で、四日後からの出社となった。
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