きのうのことだ。めずらしく岩田との車談義になった。
性能云々ということではなく、無謀運転だと岩田にはうつっている彼の走り方についてだ。
「罰金に、へたをすれば免停だよ。大損じゃないか」
と諭すように言った。噛みあわない会話だとおもいつつも、なんとかへこましてやろうと、ムキになって反論する彼だ。
「おまえのような模範生じゃダメだ。この気持ちが分かるはずがない。追い越しなんかで意地悪されるだろ」
「そんなことはないさ。ちゃんと、交通法規通りに走っているんだ、大丈夫だよ」
「分かってないな。そんなもん、破るためにあるんだぜ。
ポリスという職業がある以上、だれかが違反しなきゃ。
そうでなかったら、ポリスさんたちの存在意義がないだろうが。
おれら青年はだ……やめた。おまえにこんなこと言っても始まらない」
いつもこの調子で口論となる。
朝などにこれをやると一日が重苦しい気分になってしまう。
ただ単に朝の声かけだけで済ませてしまえば、口論などになることはないはずなのだ。
なのにどういうわけか……。
同世代は、この岩田という青年のみだ。
殆どが三十代以上の社員たちだ。なので必然彼と岩田が近づいてしまう。
しかし彼は岩田が嫌いではない。口論にはなるが会話自体は楽しいものだと思っている。
石部金吉と称される岩田が、彼は気に入っている。
(石部金吉?……それは彼のことだな……)
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