昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十五) 実害は出ていないんだけど

2014-04-20 13:35:40 | 小説
(一)

「いや。竹田の心配、案外当たってるかもよ。
実は、俺も少し気になってることがあるんだ。

今のところは、実害は出ていないんだけどな。
そう言えば、日の本商会という名前、聞いた気がするんだ。

富田商店の大将は、内の社長に恩義があるから、まだ…。
けど、価格交渉は受けそうな気がする。

奥さんと、こそこそ話してるんだ。
で、俺が近付くと話をやめちゃうんだ」

山田が声をあげた。

「気の回し過ぎじゃないのか? 俺の地区と山田の地区とでは、相当に離れているぞ。
他の奴、どうなんだ? 何か変なことに、気付かないか?」

山田をけん制しつつも、不安げな顔で皆に問い質してみる。
するとあちこちから
「そう言えば、見慣れない車を見かけたような。
僕が着くと、荷物の積み下ろしを止めちゃうこともあったです」
といった声が上がった。

「車に社名はあったか?」
「さあ‥‥気が付きません。なかった、と思うんですけど。君の所は?」

「うん。俺も、なかったと思うんだけど」
「ばか! 思います、じゃだめなんだよ。もっと、しっかり見ろ!」

服部のイライラが募り、八つ当たり気味に怒鳴ってしまった。

「服部くん、やめろよ。気が付かなくて当たり前さ。
いろんな会社が出入りしてるんだ。無茶を言うなよ」
竹田が間に入ってとりなした。


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