昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

ごめんね…… (二)

2017-12-17 13:38:18 | 小説
 私にとっての祭りの一番は、何と言っても見世物小屋だ。
全国の祭りを求めて渡り歩いているそれが、私にはとても懐かしいものになっている。

 しかし最近では、よほどのことがなければ見かけることがない。
もう過去の遺物となってしまったのだろうか。
そんな感傷に浸っていると、あの懐かしい呼び声が聞こえてきた。

「さあさあ、お代は見てのお帰りで結構だよ~。
さあ、急いだ急いだ~。
けどさ~、心臓の悪い方は止めとくれよ~。
化けて出られちゃあ、あたし、嫌だからねえ~。
でもねえ、きれいなお姉さんの幽霊なら~、大歓迎だよ~」

 慌てて辺りを見回してみるが、それらしい小屋はない。
「なあ、妙子。今、呼び込みの声が聞こえなかったか? 今さ、聞こえてきたんだよ」

 しかし彼女は首を振り、怪訝そうな表情を見せている。
キョロキョロと辺りを見回していたが、お目当てのりんご飴を売る夜店を見つけて、脱兎の如くに駆け出した。


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