昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(二十)の三と四

2011-10-16 21:34:21 | 小説


それからの武蔵は、まるで鬼人の如くに動いた。
徹底的に、同業他社を叩き潰しにかかった。
売価の徹底値下げを図った。
他社と正式契約を取り交わしている相手に対し、半ば恐喝まがいの行為で破棄させた。
他社の提示価格よりも一割、二割と値下げ提示して回り、
「なぁに、早晩自滅するさ。
いつまでもあんな商取引が続くわけがない。」と、陰口を叩かれた。
武蔵の、赤字覚悟の攻勢だった。
『まず、売価有り!』の戦法を取った。
納入後に、仕入先との値段交渉に入ったのである。
有無を言わさぬ価格決定に対し、轟々たる非難が起こったが、
武蔵はどこ吹く風とばかりに受け流した。



掛けではなく、徹底した現金仕入れを取り入れもした。
直接、製造工場に乗り込んで、テーブルの上に札束を積み上げた。
明日の利益よりも今の現金に目が眩んだ工場主は、武蔵の軍門に下っていった。
夜逃げ寸前の町工場に乗り込んで、調達したことも多々ある。
大手のメーカーでは、工場長の犯罪さえ誘発した。
その折には、富士商会の名前は出さず架空の会社名で買い漁った。
小さい物はは爪切りから、大きい物は機械旋盤まで、
ありとあらゆる物を買い漁った。
食品にも、手を出した。
生鮮食品以外の、ありとあらゆる物を買い込んだ。
倉庫は勿論のこと、事務室内果ては廊下にまでうず高く積み上げた。
武蔵の自宅は勿論、下っ端の社員宅まで運び込んだ。





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