昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(二十)の一と二

2011-10-16 21:31:48 | 小説


昭和24年にドッジ経済顧問が来日したことにより、
富士商会は不況の荒波に揉まれることになった。
ハイパーインフレの収束を目指した経済政策は、
日本を未曾有のデフレへと導いた。
前年にGHQから発令された『経済九原則』を、
日本政府に対して強硬にドッジは断行させた。
緊縮予算実施の為に大量の解雇が始まり、街には失業者が溢れた。
復員兵を大量に雇い入れていた国鉄も、
九万五千人という大量人員整理を命じられた。
当然の如くに、民間企業も次々と人員整理に追い込まれた。
既に社員数五十余名に膨れ上がっていた富士商会も、
半数の社員が余剰気味に陥った。
「社長!背に腹は変えられません。首切りを断行しましょう。」
詰め寄る五平に対し、武蔵は頑として受け付けなかった。



「俺たちの取り分をゼロにしてでも、首切りはやらん!
一年の辛抱じゃないか!
朝鮮半島のきな臭さを考えれば、早晩戦争は起きる。
そうなれば、特需だ。
大企業ならいざ知らず、富士商会如きに優秀な社員が集まる筈もない。」
「しかし社長、持ちますか?それまで。」
「なぁに、心配するな。
いざとなれば、裸になれば良いんだ。
今まで良い思いをしてきたんだ、泥水を啜ってでも持たせるさ。
幸い、あの三人も給金は当分不要だと、言ってきた。」
「えっ!?あの三人が、ですか・・」
五平は、絶句した。

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