昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~ (二) 格式に拘る茂作

2014-10-06 08:33:48 | 小説
思えば、茂作は格式といったことに厳格だった。
あの家は昔庄屋さんだった、あの家は山を幾つ持っている、あの人は役場の課長さんだのと、常々言い続けた。
あいつは小作人だったくせに農地解放でいい思いをした、あいつは新家(分家)だのと小馬鹿にするところもあった。

それ故に、彼に対してもそれを強要した。
次第に、彼自身も横柄な態度をとる相手と卑屈な態度をとる相手とを分けていくようになっていた。
そのことが、今の己を形成しているのだと感じた。

”変わらなくちゃ駄目だ。いつまでも爺ちゃんでもあるまい。
そもそも反対を押し切ってこの大学に決めたのは、爺ちゃんの干渉から逃れる為じゃないか! 
気持ちの上でも、決別しなくちゃ”

そんな茂作が目を細めるのは、彼の母が活け花を楽しんでいる時だった。
おそらくは今も活け花に勤しんでいることだろう。
しかし彼は、そんな母親が嫌いだった。口癖の言葉が彼は嫌いだった。

「お花の先生によく言われたものよ。
『花というものは、活けるそばから枯れ始めるものなの』って。
だからね、その美しさを大切にしなくちゃね」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿