昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~ (八) 私の後ろに来て

2015-01-07 09:12:28 | 小説
そんな彼の言葉に耀子は、
「じゃあねえ、私の後ろに来て。男役のステップを踏むから、同じようにステップしてみて」
と、彼を手招きした。

耀子の後ろに立った彼は、言われるままに耀子の腰に手を当てて
「右、左、右、左。そうそう、スロー・スロー・クィック・クィック。できるじゃない!」
という声に、従った。

何度か繰り返した後に、
「うん、随分と良くなったわね。今、足下を見てる? それじゃあ、私の前に来て」
と言われるままに、耀子の前に回った。
そして、繰り返し繰り返しステップを踏み続けた。

「そうそう、そうね。はい、顔を下げないよあうにね。もっと、背筋をピンと伸ばして」
矢継ぎ早な声の指示に、彼はうっすらと汗をかき始めた。
「すみません、少し暑くなったので一枚脱いでいいですか?」
ポロシャツの上に着込んでいたベストを脱いだ彼は、
「結構、運動量があるんですね」
と、汗を拭いた。

「そうよ、ハードなの。私も脱ごうかしら、暑いわね」
羽織っていたカーディガンを脱いだ耀子は、Tシャツ姿になった。
それまで気が付かなかったが、細身の体の割に豊かな胸が現れた。
貴子とのデートではキスまでは許してくれるのだが、それ以上に踏み込むことができない彼にとって、悩ましいものだった。


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