昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

にあんちゃん ~二十年前のことだ~(六)

2016-01-19 09:07:31 | 小説
 名前にしてから、道子には納得が出来ない。
初めに長男と付けたから、第二子は次男でいい、いや、でなければおかしいだろうと、まるで他人事のように言う孝男だった。

ほのかの折には、まさか三(み)女(な)子(こ)と…不安になった道子だったが危惧に終わった。
道子が怖れた名前ではなく、ほのかと名付けてくれた。

「どうだ、良い名前だろうが。ほのかに香る…だ」
 得意満面に語る孝男は、新婚当時の孝男そのものだった。

安堵する半面、不安な思いも過ぎった。
あまりにも急激すぎる変貌ぶりが気になる道子だった。

そしてその不安は、すぐに的中した。
ほのかに対する愛情の注ぎ方が尋常ではないのだ。
孝男の偏執とも思えるほのかに対する愛情の注ぎ方は、道子に重くのしかかっていた。

 長男そして次男には決して行うことのなかった授乳やら湯浴みやらを、嬉々としてほのかには行っている。
当初こそ微笑ましく見ていた道子だが、泣き声一つ逃さない孝男だ。

次第に懐疑の目を向けるようになった。
そして不用意に漏らしたシゲ子のひと言が、道子を失意のどん底に落とし込んでしまった。

「孝男ったら。あの娘さんを、まだ引きずっているのかねえ。たしか、鈴木ほのかさんだったわよねえ」
 不用意なのか、それとも道子に対する意趣返しなのか…。


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