昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~ (十一) 定番だぜ、ラーメンとチャーハンは。

2015-03-19 09:08:21 | 小説
「よおぉ、彼えぇ!」
学食内に響き渡るような野太い声が、彼を襲った。
相変わらずカレーライスを食している彼の元に、吉田が押っ取り刀で現れた。
額から滝のような汗を掻きながら、
「どうした? 元気ないじゃないか。年上の女性にふ振られでもしたか?」
と、彼の前に座り込んだ。

「いや、そんなことはないさ。すこぶる、元気だよ。それより、どうしてたんだ」
「しかし、暑いなあ。もう暦の上では秋だというのに。汗っかきの俺には、酷な気温だぜ、まったく」
彼の問いかけに答えることなく、殆ど濡れタオル状態になっているタオルで汗を拭いながら、辟易した表情を見せていた。
ハンカチでは間に合わないからと、タオル持参の吉田だった。

「しかし君も、変わっているな。『暑い、暑い!』と言いながら、熱いラーメンを食べるんだから」
「冗談言うな! 定番だぜ、ラーメンとチャーハンは。
第一、一日に一杯はラーメンを食わなきゃ。生きてる実感がない、ホントだぜ」
豪快に笑いながら、吉田は勢いよく音を立てて麺を吸い込んだ。
そんな吉田の食べっぷりに圧倒されつつ彼は、空になったコップに水を注いだ。

「それはそうと、評判良いじゃないか。感心してたぜ、叔父さん。よくも手なずけられたもんだって」
「何のことだい、一体」
「娘だよ、娘。しっかり勉強してるらしいじゃないか。
お父さんから、お礼の電話が入ったらしいぜ。今どき珍しい好青年だって。
うん? どんな魔法を使ったんだぃ。まさか、手を出したんじゃないだろうな」

上目遣いに探りを入れてくる吉田に対し、彼は気色ばんで答えた。
「おい、おい。何を言い出すんだ、まったく。まだ子供だぜ、相手は」
「冗談、冗談だよ。今のお前さんには、年上の女性が居るもんな。
どうだい、良いもんかい?」


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