昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十六) 十二

2013-09-26 18:15:49 | 時事問題

(十二)

聞き覚えのある声に、
「ひよっとして、幸恵さん?」
と振り向いた。

「覚えていてくださったのですか?感激です!」
と、涙ぐむ幸恵だった。

「もちろんよ! お元気だったかしら? 
今はどうなさってるの? 

ごめんなさい、脱線してしまったわね。
初めはね、足長おじさんのつもりだったと思うわ。

女給さんたちにちやほやされてばかりの中で、憎まれ口を叩く小娘が珍しかったのよ、きっと。
だって、あたしなんかよりずっときれいな人、たくさん居るもの。

女給さんもそうだけど、銀座という町を歩いている女性って、みんな女優さんみたいにきれいな人ばかりだから。
あたしは、ほんとに運が良かったのよ。」

一見謙遜の態を見せる小夜子だが、その言外に、その表情には明らかに
“あたしだからなの、誰でもいいわけではないのよ!”と宣しているように見受けられた。

「そうね、週に一回かしら? いつもお店を早退させてくれて、食事の後にはお店に戻るみたい。
あたしは、そのまま帰宅したけれど。
ビーフステーキって、分かるかしら? 牛のお肉なんだけれど、こーんなに分厚いの。」



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