昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[ブルーの住人]第四章:蒼い友情 ~まーだー~

2023-10-14 08:00:15 | 物語り

(五)テレビ

 

 わたしに向かって投げかけたことばかと思い、身がまえるわたしだったけれども、新一の目はわたし見ていない。
テレビに視線は向いていたけれども、見ているようには感じられない。
そう、ブラウン管に映っている新一自身を見つめている、そんな風に感じた。

「おとなに分かるわけがない! そう主張するのなら、答える必要はない。
そもそもテレビに出るなど、言語道断だ。
文明社会を捨てて、大自然の中に戻るヒッピーなのに。
文明社会の最たるもののテレビに出るなど、だ。
明らかにギマンだ。
あいつはヒッピーじゃない! 単なるスネ男だ」

「ヒッピーはすでに人間失格なんだろ? 
文明社会においては、生存の場はないんだろ? 
だったら、ただだまって、大自然にかえればいいんだ。
トンボめがねをかけて、布袋を背にして、ゴム靴をひきずって。
もどきだ、もどきだよ! 淋しい、さびしいぞ、バカめが!」

 だれに話しかける風でもなく、むろんわたしを意識していた風でもない。
やはり、新一自身にむけてのことだったのか。

自身に対するメッセージだったのか。
新一のまぶたが閉じられるその刹那、新一の目に憎悪の炎がもえているように感じた。

けれども次にあふれでた涙で、炎は消えてしまった。
しばらくつづいた沈黙のあと、こんどはわたしがことばを紡いだ。

 



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