昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第一部~(十)の三

2011-06-18 19:59:38 | 小説
「どうしました?
坂田さん。
なにか問題でも?」
舞台の袖から、
女性の声がした。
慌てて
「いえ、
問題はありません。
ちょっとこの小娘に、
説教をしてただけで・・」と、
小夜子を椅子から立たせた。
「ちょっと、
待って。
彼が、
“待ちなさい”って言ってます。」
傍らの外人と話をしながら、
小夜子をその場に留め置くよう伝えた。
「ちぇっ!
また、
あの女が!」
舌打ちしながら、
坂田は小夜子の腕を掴み続けている。
「放してください、
痛いです。」
「あ、あぁ。
ちょっと、
ここに居て。」と、
小夜子から離れて二人の元に駆け寄った。

外人からの要求に対して、
坂田が中々納得せずにいるようだ。
次第に外人の声が荒くなり、
坂田に詰め寄る風に見えた。
女性通訳と坂田との会話はステージの袖でのことで、
小夜子には聞こえない。
しかし三人が小夜子を見ている。
突然坂田が小夜子を手招きした。
不安な思いで立ち上がった小夜子に、
外人がその場に座るようにとでも言うように、
手を下に向けている。
“何よ、何なの。
こっちに来いだの、
座れだの。”
怪訝な面持ちをしている小夜子に、
またしても神経を逆撫でする声が聞こえた。


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