昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十ニ)

2013-05-19 13:37:42 | 時事問題
(一)

正三の泥酔ぶりは、翌日を二日酔いのために欠勤したことからも分かる。
とに角手に負えない状態に陥った。

ひとみに対する執着心が店中のひんしゅくを買ってしまったほどだ。
駄々をこねる幼子のように、ひとみを片時も離さない。

手洗いに立つ時ですら、その戸口まで付きまとった。
更には、中に入ろうとするに至っては、ひとみも穏やかではなくなる。

「堪忍え、正坊。
やんちゃばっかり言う子は、嫌いになるでぇ。
お願いやから、大人しぅ待っててぇな。」

「いやだ! 秘密の扉があって、さっきの奇術でもって、他の場所に行ってしまうだろうが!」
と、譲らぬ正三だ。

大きな箱の中に入れられたひとみが、ほんの数秒後には箱から忽然と消え失せていた。

拍手喝采をマジシャンが受けた後、ステージの裾からひとみが現れ出るに至って、
割れんばかりの拍手が沸いた。

しかしメインの胴体のこぎり切断ショーでは、又してもひとみの独壇上となった。

「それではこれから美女が、棺桶に入ります。
無事この世に生還できましたら、是非とも拍手大喝采でお迎えを~!」


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