昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十六) 八

2013-09-21 16:27:13 | 小説
(八)

昨夜の疲れが残っている小夜子で、すぐにでも横になりたいと帰ってきたのだが、
これ程の歓待では、むげな態度を見せるわけにもいかない。

渋々と車座の中央に陣取ったが、キラキラと輝く娘たちの熱視線が心地よく小夜子に届いた。

「あらあら、そんなに一どきに尋ねられても。
いいわ、一つずつお答えしましょうね」

満面に笑みを浮かべながら、ぐるりと体を回してみせた。

「ほんと、おきれい」
「お着物姿もおきれいだけど、やっぱり小夜子さまはお洋服ね」

一斉にため息がもれる中、小夜子が口を開く。

「女優さんのお話ね。
確かにお話は頂いたわ。

でもあの時は、アーシアがねえ。
すごい剣幕で怒り出したのよ。

『あたしの妹をとらないで!』って。
熱心なお誘いだったけど、お断りしたのは正解だったかも」


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