昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~ふたまわり・第二部~(三十)の五と六

2012-02-25 14:20:51 | 小説
三部構成の、大長編です。
どうぞ気長に、読んでください。
実はこれ、まだ執筆中なんです。
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肩を窄める小夜子に対し、
「うーん、覚えてないが・・。言ってごらん。
小夜子の頼みは、何でも聞いてやるから。」と、身を乗り出した。
「わたし、一人暮らし・・したいの。
窮屈なの、今のお宅は。
色々お小言を聞かされるしさ。」
「そうか・・、お小言をなぁ。
まぁ、それが当たり前だろうな。」

「違うの! 女が社会で活躍することは、そんなにいけないことなの?
家に閉じこもっていろと言うの? そんなの、男の横暴よ。」
小夜子の頬は、ほんのりと赤みを差していた。
吐き出した筈の酒に、少し酔ってしまったようだ。

「分かった、分かった。
これから女性の社会進出は、当たり前のことになるさ。
その先進グループに入りたいんだな、小夜子は。
しかし一人暮らしは、なぁ……。
あぁ、思い出したぞ。
『愛人になれ!』と、口説いたんだな。
だけど小夜子は、即座に『イヤッ!』と言ったんだ。」

「それはそうよ。
私には好きな人がいるんだから、愛人はイヤよ。」
“奥さんなら、いいかも・・”
突然、思いも寄らぬ言葉が浮かんだ。
危うく、口の端に乗せそうになった。

“な、なにを、考えるのよ、あたしったら。
でもどうせ、間に受けはしないでしょうけど。”
ぽっと、頬を赤らめた小夜子だ。





武蔵は、物怖じせずに答える小夜子が可愛くて仕方がなかった。
軽くお触りをしようとすると、即座に“ピシャッ!”と、手が飛んでくる。
そんな仕種が又、武蔵には可愛い。

「そうだ、そうだ。段々、思い出してきた。
一人暮らしの時には援助してやると、言ったんだ。
そのことか?」
「そう! そうなの。だからね、お願~い。
愛人はだめだけど、月に一度か二度くらいはこうしてお酌してあげるから・・。」

「ハハハ…。愛人のことは、冗談さ。
お前みたいな、ねんねは相手にせんよ。
ションベン臭い未通女なんぞ、女じゃないさ。」
「社長!ねんね、ねんねって、言わないで!
もう大人なんだから。」
頬を膨らませながら、小夜子は武蔵のお猪口に酒を注いだ。

「どうだ! いっそ、俺の家に来んか?
愛人になれ、とは言わん。
メイドとしてなら、良いだろうが。
なぁに、たまに掃除をしてくれれば良いさ。
しっかり勉強しろ。
で、俺の会社に入ればいい。
通訳として、仕事をしてくれんか。」



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