七
銀座のランプ亭で、小夜子が武蔵に問い質す。
「お父さん。聞きたいことがあるの!」
「なんだ? そんな恐い顔して、どうした?」
「あたしのこと、どう説明したの?
高井さんの話だと、あたしお父さんのお嫁さんになるみたいだけど。」
「なんだ、そのことか。
高井が勝手に決め付けたんだ。
『そろそろ身を固められる頃じゃありませんか?』
そう言うから、『そうだな。』って答えたんだ。」
「それがあたしって、わけ?」
「うん、そう言うことだな。
高井が言うには、小夜子は良いお嫁さんになるってことだ。
で、『その節は、当デパートをご利用下さい。』と言うわけだ。」
良いお嫁さんと言われて悪い気はしない。
「お父さんも、そう思ってるの?」
つい聞いてしまった。
「もちろんだ!
小夜子以外には、俺は考えていないぞ。
どうだ、嫁さんになっても良い気になったか?
大事にするぞ。お爺さんだって、大事にしてやる。
どうだ、何か困ってることはないか?」
茂作翁の抱える借財のことを口にしょうかとも考えたが、
小夜子が嫌がるかもしれないと、止めた。
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