(八)
そんな武蔵に、思いもかけぬ小夜子の言葉。
不意を突かれた思いの武蔵に、容赦ない小夜子の一撃が飛んだ。
「もういい! あたし、英会話やめる。
どうせあたしの英語なんて、誰も聞いてくれないんだから。
何を言ってるのか、さっぱり分からないもん。
おじさんの方が、よっぽど上手じゃない。
あたしなんか、要らないわよ!」
「小夜子、小夜子。機嫌直せ、直してくれ。
あいつらはな、みんな南部出身なんだよ。
アメリカって国は広いんだ。
東と西では、何百キロもいや何千キロと離れてる。
それに、北部と南部はな、昔戦争をしてるんだ。
仲が悪いんだ。
徳川幕府と薩長みたいなもんだ。
だから、あいつら南部人は、えっと、そう! 方言だ。
方言なんだよ。
あいつらの英語は、世界では通用しない。
そこにいくと、小夜子の英語は正統派だ。
グレートブリテンイングリッシュなんだ。
以前に言ったろうが。小夜子の英語でなければ、貿易がうまくいかないって。
だからしっかりと、勉強してくれ。」
小夜子の肩を抱きながら、必死になだめる武蔵。
実のところは、小夜子を英会話学校に通わせる理由は他のところにあった。
“止めさせるわけにはいかん。
正三とかいう坊ちゃんとの逢瀬の時間なんぞ、金輪際作らせるものか。”
これが本音だった、偽らざる武蔵の思いだった。
そんな武蔵に、思いもかけぬ小夜子の言葉。
不意を突かれた思いの武蔵に、容赦ない小夜子の一撃が飛んだ。
「もういい! あたし、英会話やめる。
どうせあたしの英語なんて、誰も聞いてくれないんだから。
何を言ってるのか、さっぱり分からないもん。
おじさんの方が、よっぽど上手じゃない。
あたしなんか、要らないわよ!」
「小夜子、小夜子。機嫌直せ、直してくれ。
あいつらはな、みんな南部出身なんだよ。
アメリカって国は広いんだ。
東と西では、何百キロもいや何千キロと離れてる。
それに、北部と南部はな、昔戦争をしてるんだ。
仲が悪いんだ。
徳川幕府と薩長みたいなもんだ。
だから、あいつら南部人は、えっと、そう! 方言だ。
方言なんだよ。
あいつらの英語は、世界では通用しない。
そこにいくと、小夜子の英語は正統派だ。
グレートブリテンイングリッシュなんだ。
以前に言ったろうが。小夜子の英語でなければ、貿易がうまくいかないって。
だからしっかりと、勉強してくれ。」
小夜子の肩を抱きながら、必死になだめる武蔵。
実のところは、小夜子を英会話学校に通わせる理由は他のところにあった。
“止めさせるわけにはいかん。
正三とかいう坊ちゃんとの逢瀬の時間なんぞ、金輪際作らせるものか。”
これが本音だった、偽らざる武蔵の思いだった。
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