昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~ (六十七) (七)

2013-10-03 18:51:52 | 時事問題
(七)

「おじさん! なによ、あれは。
パーティだっていうから、どこかのホテルでって思っていたのに。

お庭での、バーベーキューだったじゃない! 
着物を着てるからあまり食べられないし、武蔵は一人であちこち回っちゃうし」

不機嫌な折には、武蔵をおじさんと呼ぶ小夜子。
家に着いた途端に、武蔵に噛み付いた。

車中で無言を通した小夜子を、疲れからのことだろうと考えていた。
武蔵自身は、上機嫌だった。

“大成功だ。小夜子の着物姿に、みんな口あんぐりだ。
芸者たちで着物姿を見慣れたとはいえ、振袖姿は初めてのはずだからな。
写真で見たらしい舞妓に会いたいとせがまれていたからな。

然も、女ずれしていない、まったくの素人娘だ。
東洋の神秘だなんて声があったが、冗談じゃない。

妖艶さはこれから俺が引き出すんだよ。
今の小夜子を評すれば……。

そうだな、東洋のヴィーナスだ。
惚れ直したぞ、小夜子”


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