(十三)キャハハハ
少年の上げた手に気付いた黒服が、コーラの注文を受け付けた。
ここには階下の光の洪水はない。
音も階下に比べられば、抑えられている。
この階上は踊り疲れた者たちの休憩場所としての役目を帯びているようだ。
そしてもう一つ、メイクラブの場としての役目も。
あちこちの席に、ひそひそ声がある。
重なり合う頭もある。
カウンターに陣取っていた彼を、なぜこの場に移したのか、少年は戸惑うばかりだ。
キョロキョロと辺りを窺うわけにもいかないが、気になり始めると目が右に左にと激しく動き回る。
そして、奇異な二人連れを発見した。
ステージ近くのボックスに、女二人が陣取っている。
時折黒服が近寄っては、話に興じている。
時折“キャハハ!”と嬌声を上げたりしているが、そのうちのひとりが常連らしく、もう一人は俯いていることが多い。
ときおり作り笑顔をしながら頷いてはいるが、興に乗っているわけではないようだ。
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