(二)
五平も初めの内こそ苦言を呈したが、武蔵の腹の内を聞かされてからは
「困ったもんです、道楽ですかねえ」と、受け流した。
“使い方が悪いのさ、餌が足りないんだよ”
“将来(さき)の楽しみを見せてやらないからさ”
“何より、適材適所ってやつだよ”
笑顔がどうしても作れない四十男には、倉庫番を任せた。
外回りにおいてノイローゼ寸前になっていた男だったが、人と接する必要の無い部署に着いたおかげで、生き生きと働き出した。
口から先に生まれたのかと思わせるおしゃべりな三十前の男には、配達業務を与えた。
営業向きだと判断した先の店では、一方的に喋ることがかえってお得意先の反感を買ってしまった。
ところが配達先で話し込むことが多く、中々帰ってこない。
やむなく倉庫番にしたところ、笑顔が作れぬ男との相性が良いらしく、私語の多さは気になるが仕事はきっちりとこなしていた。
そして極めつけは、今では若手三人衆に次ぐどら息子二人だ。
それぞれに立派な店を構える跡取りなのだが、親の過保護やら躾の厳しさで根性がねじ曲がってしまっていた。
客を客とも思わない態度に、それぞれが勘当されてしまった。
ワルの道に入り込む一歩手前で武蔵の目に留まり、新しく用意した寮に放り込まれた。
同じ年頃に囲まれた二人、そこの主(ぬし)である服部の指導よろしくみるみるまっとうな性格に戻っていった。
己に非があることに気付いていた二人、武蔵の
「会社のためじゃない、お前自身のために働け。働いた分だけ金はやる。
好きに使え、女に使え。だが、博打は御法度だ。身を滅ぼす元だ。即、辞めさせる。
未来を考えろ。上等な女を娶るも良し。会社を作るもよし。道楽に金をかけるも良し。
十年二十年先の自分を思え」という訓示に発奮した。
五平も初めの内こそ苦言を呈したが、武蔵の腹の内を聞かされてからは
「困ったもんです、道楽ですかねえ」と、受け流した。
“使い方が悪いのさ、餌が足りないんだよ”
“将来(さき)の楽しみを見せてやらないからさ”
“何より、適材適所ってやつだよ”
笑顔がどうしても作れない四十男には、倉庫番を任せた。
外回りにおいてノイローゼ寸前になっていた男だったが、人と接する必要の無い部署に着いたおかげで、生き生きと働き出した。
口から先に生まれたのかと思わせるおしゃべりな三十前の男には、配達業務を与えた。
営業向きだと判断した先の店では、一方的に喋ることがかえってお得意先の反感を買ってしまった。
ところが配達先で話し込むことが多く、中々帰ってこない。
やむなく倉庫番にしたところ、笑顔が作れぬ男との相性が良いらしく、私語の多さは気になるが仕事はきっちりとこなしていた。
そして極めつけは、今では若手三人衆に次ぐどら息子二人だ。
それぞれに立派な店を構える跡取りなのだが、親の過保護やら躾の厳しさで根性がねじ曲がってしまっていた。
客を客とも思わない態度に、それぞれが勘当されてしまった。
ワルの道に入り込む一歩手前で武蔵の目に留まり、新しく用意した寮に放り込まれた。
同じ年頃に囲まれた二人、そこの主(ぬし)である服部の指導よろしくみるみるまっとうな性格に戻っていった。
己に非があることに気付いていた二人、武蔵の
「会社のためじゃない、お前自身のために働け。働いた分だけ金はやる。
好きに使え、女に使え。だが、博打は御法度だ。身を滅ぼす元だ。即、辞めさせる。
未来を考えろ。上等な女を娶るも良し。会社を作るもよし。道楽に金をかけるも良し。
十年二十年先の自分を思え」という訓示に発奮した。
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