(一)
娘たちのため息が洩れる中、小夜子の話は続いた。
「でもね。あたくしだって、のほほんとくらしていた訳じゃないのよ。
お昼はイングリッシュスクールに通って、すべてイングリッシュでの会話なの。
日本語なんて、誰も使わないの。
グッドモーニングに始まって、グッドバイで終わるの。
ううん、スチューデントは全員日本人なのよ。
ティーチャーはアメリカ人ですけどね。
あ、ごめんなさいね。
スチューデントは生徒で、教師はティーチャーと言うの。
ご存知だったかしら」
得意満面な小夜子に、誰もがうんうんと頷くだけだ。女王然とする
小夜子の性格を知る、賢い娘たちだ。
「変わっていないね、竹田嬢は。」
「そうだね、相変わらずの女王様気取りだ」
車座から離れた場所で、ふたりの恩師が囁きあう。
「でも、そんな彼女を、皆さん認めてらっしゃるんでしょ?
在学時から、特別待遇でしたものね」
遅れて来た女教師が話の輪に加わった。
「そう、そうなんですよ。
どうもね、あの娘に限っては許してしまうんですよ。
不思議と腹もたたないんですね」
「同感です。
某教師は『卒業したら求婚してみるかな。
へなちょこ坊主の佐伯正三なんぞに渡してなるものか!』
なんて、真顔で言ってましたから」
「それって、案外、君の本音じゃないの。
いや、冗談だけどね」
娘たちのため息が洩れる中、小夜子の話は続いた。
「でもね。あたくしだって、のほほんとくらしていた訳じゃないのよ。
お昼はイングリッシュスクールに通って、すべてイングリッシュでの会話なの。
日本語なんて、誰も使わないの。
グッドモーニングに始まって、グッドバイで終わるの。
ううん、スチューデントは全員日本人なのよ。
ティーチャーはアメリカ人ですけどね。
あ、ごめんなさいね。
スチューデントは生徒で、教師はティーチャーと言うの。
ご存知だったかしら」
得意満面な小夜子に、誰もがうんうんと頷くだけだ。女王然とする
小夜子の性格を知る、賢い娘たちだ。
「変わっていないね、竹田嬢は。」
「そうだね、相変わらずの女王様気取りだ」
車座から離れた場所で、ふたりの恩師が囁きあう。
「でも、そんな彼女を、皆さん認めてらっしゃるんでしょ?
在学時から、特別待遇でしたものね」
遅れて来た女教師が話の輪に加わった。
「そう、そうなんですよ。
どうもね、あの娘に限っては許してしまうんですよ。
不思議と腹もたたないんですね」
「同感です。
某教師は『卒業したら求婚してみるかな。
へなちょこ坊主の佐伯正三なんぞに渡してなるものか!』
なんて、真顔で言ってましたから」
「それって、案外、君の本音じゃないの。
いや、冗談だけどね」
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