「結婚しょう!」と言い出すこともない日々を続け、その間何度か中絶をさせた。
そして、「これ以上は母体に異常をきたし二度と子供の産めなくなるよ」と、医者に注意された。
“今のままではだめだ。何とかしなくては。しかし、定職に就いていない俺では…。
あいつを水商売で汚れさせている俺だ。あの事以来何をやってもうまく行かない。
何度転職したのか。今じゃ、アルバイトの毎日だ。
今は、何に対しても情熱が湧かない。ヒモ同然の生活だ”
しかし焦れば焦るほどに、両手からみずがこぼれ落ちる。
こぼれ落ちた水は大地に吸い込まれて、二度と男には見つけることも触れることもできない。
幾人かの友人の伝手を頼って就職活動を行ってみるが、職を失った理由を詮索されてはいかんともし難い。
男の不手際から会社に損害を与え、落伍してしまった。
「待っててくれ。きっと、舟を探してくる」と言い残しはしたものの、当てはない。
逃げ出しただけかもしれない。しかし、探さねばと、男は思い続けた。
「ネエ、おじさん。何考えてるの?」
不満気に娘(少女とはもう呼べない)は尋ねた。
「ああ、ごめん。ちょっと、ね」
「おじさん、寒くない? マントを一緒にしようか? 暖かいよ、これ。うん、そうしよう」
娘は男の返事を待たずに首のボタンを外し、男の肩にもかけた。
そして左手を男の腰に回すと、ピッタリと寄り添った。
男は苦笑しながらも、娘のその思いやりに頬がゆるんだ。
「ありがとう」
「いいんだって。だけどさ、あたい達どんな風に見えるかなあ。
親娘? だけど案外恋人に見えてたりして。フフフ」
娘ははしゃいでいた。箸が転がっても笑い出す年頃なのだろう、と男には思える。
しかし時折見せる妖艶な目つきに、男は衝動を感じる。その度に、強く戒めた。
まだ大人としての分別は残っていた。
そして、「これ以上は母体に異常をきたし二度と子供の産めなくなるよ」と、医者に注意された。
“今のままではだめだ。何とかしなくては。しかし、定職に就いていない俺では…。
あいつを水商売で汚れさせている俺だ。あの事以来何をやってもうまく行かない。
何度転職したのか。今じゃ、アルバイトの毎日だ。
今は、何に対しても情熱が湧かない。ヒモ同然の生活だ”
しかし焦れば焦るほどに、両手からみずがこぼれ落ちる。
こぼれ落ちた水は大地に吸い込まれて、二度と男には見つけることも触れることもできない。
幾人かの友人の伝手を頼って就職活動を行ってみるが、職を失った理由を詮索されてはいかんともし難い。
男の不手際から会社に損害を与え、落伍してしまった。
「待っててくれ。きっと、舟を探してくる」と言い残しはしたものの、当てはない。
逃げ出しただけかもしれない。しかし、探さねばと、男は思い続けた。
「ネエ、おじさん。何考えてるの?」
不満気に娘(少女とはもう呼べない)は尋ねた。
「ああ、ごめん。ちょっと、ね」
「おじさん、寒くない? マントを一緒にしようか? 暖かいよ、これ。うん、そうしよう」
娘は男の返事を待たずに首のボタンを外し、男の肩にもかけた。
そして左手を男の腰に回すと、ピッタリと寄り添った。
男は苦笑しながらも、娘のその思いやりに頬がゆるんだ。
「ありがとう」
「いいんだって。だけどさ、あたい達どんな風に見えるかなあ。
親娘? だけど案外恋人に見えてたりして。フフフ」
娘ははしゃいでいた。箸が転がっても笑い出す年頃なのだろう、と男には思える。
しかし時折見せる妖艶な目つきに、男は衝動を感じる。その度に、強く戒めた。
まだ大人としての分別は残っていた。
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