(四)
「勝子、勝子。どうだった。楽しかったかい? 素敵なお洋服らしいね。
とても勝子に似合うって、小夜子さまにお聞きしたよ。
さあ次は、お食事だね。勝利もご一緒させてもらえるって、喜んでる」
病状のことなど、ひと言も話さない。とに角、明日への希望だけを話し掛ける母親。
勝利もまたそんな母親の横で、うんうんと大きく頷いている。
「姉さん。服部君と山田君、すごく残念がってたよ。
今日にもね、求婚するんだなんて言うんだぜ、山田君。
いくらなんでもそりゃ早すぎるんじゃないかって、服部君が言ったけどね。
そしたらね、山田君がね、なんて言ったと思う?
『あんな美人を男が放っとくもんか。後の祭りなんてことになったらどうするんだ!』
って、噛み付いてたよ」
「今日ね、勝利の会社に行ったの。ほんと、良かった。
皆さんがね、すごく歓待してくれてね。嬉しかった、あたし。
ほんと、勝利の言う通りだったわ。
あたしね、母さん。皆さんに好かれてるの、びっくりした。
でね、皆さんがね、あたしのこと美人だって。
加藤専務さんなんてさ『いずれがアヤメかカキツバタか』だって。
小夜子さんよ、小夜子さん。びっくりよ、もう。
奥からね、服部君がね、大きな声でね、くくく…、ほんとに勝利の言う通りだったわ。
あたし、頑張るから。しっかりお薬飲んで、きっと病気に勝ってみせるわ。
ええ、負けてたまるもんですか。
元気になって、退院して、小夜子さんとお食事して、それから、それから…」
突然、勝子の声が小さくなり途切れた。
「勝子、勝子。どうだった。楽しかったかい? 素敵なお洋服らしいね。
とても勝子に似合うって、小夜子さまにお聞きしたよ。
さあ次は、お食事だね。勝利もご一緒させてもらえるって、喜んでる」
病状のことなど、ひと言も話さない。とに角、明日への希望だけを話し掛ける母親。
勝利もまたそんな母親の横で、うんうんと大きく頷いている。
「姉さん。服部君と山田君、すごく残念がってたよ。
今日にもね、求婚するんだなんて言うんだぜ、山田君。
いくらなんでもそりゃ早すぎるんじゃないかって、服部君が言ったけどね。
そしたらね、山田君がね、なんて言ったと思う?
『あんな美人を男が放っとくもんか。後の祭りなんてことになったらどうするんだ!』
って、噛み付いてたよ」
「今日ね、勝利の会社に行ったの。ほんと、良かった。
皆さんがね、すごく歓待してくれてね。嬉しかった、あたし。
ほんと、勝利の言う通りだったわ。
あたしね、母さん。皆さんに好かれてるの、びっくりした。
でね、皆さんがね、あたしのこと美人だって。
加藤専務さんなんてさ『いずれがアヤメかカキツバタか』だって。
小夜子さんよ、小夜子さん。びっくりよ、もう。
奥からね、服部君がね、大きな声でね、くくく…、ほんとに勝利の言う通りだったわ。
あたし、頑張るから。しっかりお薬飲んで、きっと病気に勝ってみせるわ。
ええ、負けてたまるもんですか。
元気になって、退院して、小夜子さんとお食事して、それから、それから…」
突然、勝子の声が小さくなり途切れた。
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