昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十二) 明日への希望

2014-03-15 16:18:14 | 小説
(四)

「勝子、勝子。どうだった。楽しかったかい? 素敵なお洋服らしいね。
とても勝子に似合うって、小夜子さまにお聞きしたよ。
さあ次は、お食事だね。勝利もご一緒させてもらえるって、喜んでる」

病状のことなど、ひと言も話さない。とに角、明日への希望だけを話し掛ける母親。
勝利もまたそんな母親の横で、うんうんと大きく頷いている。

「姉さん。服部君と山田君、すごく残念がってたよ。
今日にもね、求婚するんだなんて言うんだぜ、山田君。

いくらなんでもそりゃ早すぎるんじゃないかって、服部君が言ったけどね。
そしたらね、山田君がね、なんて言ったと思う? 
『あんな美人を男が放っとくもんか。後の祭りなんてことになったらどうするんだ!』
って、噛み付いてたよ」

「今日ね、勝利の会社に行ったの。ほんと、良かった。
皆さんがね、すごく歓待してくれてね。嬉しかった、あたし。

ほんと、勝利の言う通りだったわ。
あたしね、母さん。皆さんに好かれてるの、びっくりした。

でね、皆さんがね、あたしのこと美人だって。
加藤専務さんなんてさ『いずれがアヤメかカキツバタか』だって。

小夜子さんよ、小夜子さん。びっくりよ、もう。
奥からね、服部君がね、大きな声でね、くくく…、ほんとに勝利の言う通りだったわ。
あたし、頑張るから。しっかりお薬飲んで、きっと病気に勝ってみせるわ。

ええ、負けてたまるもんですか。
元気になって、退院して、小夜子さんとお食事して、それから、それから…」

突然、勝子の声が小さくなり途切れた。


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