昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

ボク、みつけたよ! (五十一)

2022-03-26 08:00:23 | 物語り

 ピッカピッカの一年生として入学したのは、どこだったんだろう。
大分県の佐伯市だったはずなんです。でも、学校の名前が浮かばないんです。
それよりもなによりも、通学した記憶がまるでないんです。
これは大問題ですぞ、ほんとに。頭の中のひきだしをあちこち開けてみますが、なかなかに。
片っ端から開けていくうちに、なにやらうっすらと浮かんできたことが。

 学校とは関係のないシーンなのですが、辺りが暗く街灯の付いていた道路わきの屋台に。
たぶん佐伯市だとおもうのですけれども、駅舎近くでした。
ラーメンをすすったような、すすってないような。
親父に食べさせてもらったような、やっぱり自分で食べたような。
ただ不思議なことに、その場には母も兄もいないんです。
父とわたしのふたりだけでして。おかしいですよ、これは。
実のところは、いたと思います、というよりいたはずですわ。

 そうだ! 板塀があった。突然にすみません。
いちばんはしっこのひきだしを開けたら「ごめんなさい」って、ちっちゃな声がきこえました。
「おにいちゃんやらおねえちゃんたちがはしりまわってたの、おぼえてない?」
高さはどのくらいだったか。ピョンピョンと跳び上がって、それでやっと運動場が見えたんです。
そう、そうなんです。渡り廊下でした、たしかに。

ピョンピョン跳ぶのに疲れて、下のすき間からのぞきこんだような気がします。
急に立ちどまったもんですから、うしろの子にけとばされたことも思いだしました。
「泣いたの?」。いやあ、それはおぼえてないですが、たぶん泣いたでしょうね。
でもって、わたしをけとばしした子も泣いたんじゃないですかねえ。
みんなして、わあわあと泣いたと思いますよ。
ああいうのって、どうしてだか伝播というか伝染しちゃうでしょ?
それだけなんです、あとは、なーんにも思いだせません。

 伊万里の話に戻りましょうか。
校門が開いていたので、敷地内に車を停めて散策しました。
木造だった校舎も、当たり前の話ですが、立派なコンクリートです。
門の正面に体育館があり、横の庭には大きな木が植えられていました。
種類は分かりませんが、大きく枝をのばしてりっぱでした。
葉っぱは少しですわ。青々(緑々といきたいですが)とはいきませんて。冬ですからねえ、すきまだらけです。

 それにしても、伊万里小は鷹揚です。
他の学校の正門はぴったりと閉じられて、中に入ることはできませんでした。
ああそういえば、校庭でサッカーに興じている子どもたちが数人いましたね。
手を振ってみたのですが、わたしには気付いてくれませんでした。
「サビシー!」



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