昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

[ブルーの住人]第五章[蒼い情愛]~はんたー~

2024-03-02 08:00:26 | 物語り

(二)繋がり

 その○刑囚は、冷たい銀のフォークの眼差しで、裁判官の胸を突き刺した。
「あんたに、なにがわかる!」。こころのなかでつぶやいた。

 ひとり、○刑を宣告された現実をかみしめる○刑囚。
 うす暗い、四方を冷たいコンクリートで閉ざされた部屋。
 便器と文机と、そしてキチンと畳まれたせんべい布団一式。

 俗界につながる、唯一の楽しみの窓は、頭上高くにある。
 太陽がのぞきこむ少しの時間と、空の一部のみを見るという哀しみ。
 いっそ、なければいいのに。

 いやいやいまの○刑囚にはそのことよりも、その窓があるということが、忌いましい。
 その窓が、○刑囚の俗界に対する未練心を、郷愁をかきたてさせることが腹立たしい。
 いっそ、なければいいのに。

 もし…窓がふさがれたら…やはり腹立たしい。

 青空…雲…流れる…流浪…涯て…老い…○
 思い浮かぶことばが、○刑囚の意図することなく繋がりをもとめていく。



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