真っ青な空に、ひとつふたつと雲がうかんでいる。
太陽は正天にあり、ギラギラと輝いている。
秋に入ったとはいえ、まだ汗ばむような陽気がつづいている。
白い筋のように水平線があり、視線の先に貨物船がすすんでいる。
砂浜でレースのフリルがついた白い水着姿に、ピンクの縁に黒いレンズのサングラスをかけた小夜子が、「おおおおーーい!」と、大声をはりあげた。
数人のグループが、あちこちに点在していて、おどろきの目が小夜子にそそがれるが、まるで動じない。
“あたしの幸せを、みんなにも分けてあげる”とばかりに、胸の前で合わせた両の手を、大きく空にむかって開放した。
「なにをあげたんだ? 神さま、よろこんで受け取ってくれたか?」
「やっと起きた、武蔵が」
いつもの膨れっ面を見せる小夜子。そしていつものように指で押して、武蔵がしぼませる。
ぶふっと音をたててしぼまった唇を、小夜子がつきだした。
はやく、早く、とせがんでくる。その意図は、武蔵だけが知る。
以前にGHQ将校のハウスで、大画面のスクリーン上でくりひろげられた他愛ないあそび感覚の接吻を、小夜子がせがむ。
しかしさすがに武蔵も、この海辺ではためらわれた。
しかしお構いなしにあごを突き出す小夜子に、苦笑いしつつ武蔵が応じた。
「な、なんて、はしたないことを」
老人の連れ合いが言う。
「いいじゃない、お婆ちゃん。むかしと違うんだから」と、海から上がってきた娘がたしなめた。
小麦色の肌に海水がキラキラとかがやき、にっこりと笑った白い歯が印象的だ。
「ありがとう、地元の方なの? あたしたちはね、新婚旅行なの」
負けじと、小夜子も満面に笑みをたたえて、言葉をかえした。
「新婚さんですか? うわあ、おめでとうございます。
どうしてここを選ばれたんですか? どちらからお見えになったんですか? いつまでみえるんですか?」と、矢継ぎばやに質問してくる。
「ありがとう。武蔵がね、ここを選んでくれたの。
きらきら輝いてる海をね、どうしても見せてやりたいって。住まいはね、東京なのよ」
「そんな遠いところからですか? いいなあ、すてきな旦那さまで」
まぶしげに見上げるような視線の娘に、「ふふ。でしょ?」と、すこし誇らしげに、自慢の武蔵を見せびらかす小夜子だった。
「な、なんて、はしたないことを」
老人のつれあいが言う。
「いいじゃない、おばあちゃん。むかしと違うんだから」と、海から上がってきた娘がたしなめた。
小麦色の肌に海水がキラキラとかがやき、にっこりと笑った白い歯が印象的だ。
「ありがとう、地元の方なの? あたしたちはね、新婚旅行なの」
負けじと、小夜子も満面に笑みをたたえて、言葉をかえした。
「新婚さんですか? うわあ、おめでとうございます。
どうしてここを選ばれたんですか? どちらからお見えになったんですか? いつまでみえるんですか?」と、矢継ぎばやに質問してくる。
「ありがとう。武蔵がね、ここを選んでくれたの。
きらきら輝いてる海をね、どうしても見せてやりたいって。住まいはね、東京なのよ」
「そんな遠いところからですか? いいなあ、すてきな旦那さまで」
まぶしげに見上げるような視線の娘に、「ふふ。でしょ?」と、すこし誇らしげに、自慢の武蔵を見せびらかす小夜子だった。
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