昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (二十四)

2025-03-01 08:00:46 | 物語り

 公園をとり囲むようにして樹木がある。
残念ながらその種類はわからない。
何本かの木が桜であることは、春になればわかる。
あのピンク色の花びらをつけた木が、桜だとは。
ただ残念なことに葉桜になってしまうと、もうわからない。
秋冬の枝だけだと、もう区別がつかない。

そうだ、ポプラの木はわかる。
あのセンス型の花びらといっていいのだろうか、あれがくっついていればわかる。
ああ、まだあった。
この公園には植わっていないけれども、松に杉、この二本もあった。
この日本国に何種類の木々があるのか、皆目けんとうもつかないけれど、情けない話ではある。
母親が子供たちに、あれはなんの木であの花はこれこれよ、と話しているのがしゃくに障った思い出がある。

 すこし離れたその横では、お父さんであろう男相手に、ボール蹴りに興じている男の子がいた。
年のころ、3、4歳だろうか。ころころと転がるゴムボールを、一生懸命に追いかけている。
そして追いついたところで、声を上げて「シュート!」と、打とうとする。
しかし決まって、空振りしている。
なんどか繰りかえすうちに、足がボールに当たった。
転がりはしたものの、2、3メートルほどで止まってしまった。
しかしその子は追いかけるでもなく、離れた父親が打ちかえすのを待っている。

「もう一度シュートしてごらん。ほらほら、頑張れ!」
 父親が声をかけると、やおら男の子が走りだした。
こんどはうまくいちどでボールに当たったけれども、残念なことに方向が悪く、父親からはさらに離れた場所に行ってしまった。
その場に立ち止まった男の子は、「まだけるの?」と言わんばかりに父親を見やっている。
さすがにこんどは、父親がボールに向かった。



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