「牧子さんて、どんな方? その方も不倫中なの? どうも、武士さんって分からないわ」
「いえ、違います!」
「でも、牧子さんって仰有ったわよ、今」 . . . 本文を読む
「いや、実、、、」
「いいのよ、何も仰有らないで。責めてるのでは、ないことよ。武士さんは、悪くありませんわ。唯、お可哀相で。でも凄い女性ね、男を手玉に取られるのだから。ええっと。確か…お名前は、貴子さんでし、、」
「牧子さんは、そんな女性じゃ、、」
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疲れている麗子ではあった。婚約者の独善性に振り回される日々に、疲れている麗子だった。
「黙ってついてくれば、いいんだ!」
少しでも異論を唱えると、叱責された。思えば、そんな不満のはけ口を彼に求めていた麗子だった。 . . . 本文を読む
彼にしても、驚いた。構えることなく出た言葉に、信じられない思いだった。以前の麗子からは、想像も出来ないことの連続に、正直のところ面食らっていた。嘗ての傲慢さが消え、姉さん気取りの麗子だった。車中で弁当を差し出されること等、考えられない。洒落たレストランでの食事以外、考えられない麗子なのに。 . . . 本文を読む
牧子と疎遠になって以来、女性との縁がプツリと切れてしまった彼だった。
由香里が相変わらず、彼とのデートをせがんでくるが、気乗りがしなかった。
真理子の件が一段落すると、無性に牧子に逢いたくなる彼だった。
一度手紙を書いたものの、牧子からの返事はつれないものだった。
父親の介護に追われる牧子は、とてものことに身動きがとれない状態だった。
こちらから押し掛けようかとも考えてはみたが、二の足を踏んで . . . 本文を読む
車が、静かにパーキングエリアに滑り込んだ。
海が見える、眺望の良い場所に車は止められた。
窓を少し開けると、潮の匂いが車の中に入り込んできた。
軽く深呼吸をしながら、麗子は海に視線を投げかけた。
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始まりは、一匹の蜂くんでした。可愛らしい物でした。
それが、あれよあれよという間に、
小舟から、巨大軍艦へと変貌です。
いや、巨大空母というべきですかね。
こうなってしまっては、実効支配状態です。
国際司法裁判所へ訴えようとしても、多分のこと蜂くん達が嫌がるでしょう。
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高速道路に入ると、麗子は車のスピードをグングン上げた。
メーターを見やると、優に100kmを越えていた。
「どこへ、行くんですか?」
不安げに尋ねる彼に、麗子は薄ら笑いを浮かべるだけだった。
今日の麗子は、彼の知る麗子ではなく、異邦人のように感じられた。
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その後、彼は頻繁に求めるようになってきました。
でも、麗子は拒否しています。そんなにふしだらな女ではありませんことよ、麗子は。
勿論、無理強いをするような彼ではございませんし。
彼を愛していますわ、勿論。
でも、彼には立派な学者になって頂きたいの。
研究をおろかにさせることは、できません。
何せ、日本の将来を左右するような、立派な研究なのですから。
超伝導とかいう技術の開発に、携わっているの . . . 本文を読む
貴方はね、私を通してご自分を探してらっしゃったの。
もしもあの噂が本当だとしたら、その方の中に、ご自分を見つけようとなさっているのよ。
ご自分を押し殺し、お相手の反応を見ていらっしゃるの。
そしてね、ああ、自分はこんな人間なのだと、推し量っているのです。 . . . 本文を読む
彼には、「青天の霹靂」の如き文面だった。
思わず消印の日付を確認した。
“麗子さん、僕からの手紙、今の今まで読んでなかったのか?”
大きなため息をつきながら、麗子の指摘に対して
“確かに、言われてみればそうかも。
高嶺の花だった、麗子さんだ。
床の間に飾ってある人形として、見ていたのかもしれない。
だけどそうさせたのは、誰あろう、麗子さん、貴女だ!”
と、反論する彼だった。
急に喉の渇きを覚え . . . 本文を読む