原木 【 ふたりだけのイヴ 】 恋獄の世界

初恋の人の想い出は、雲海のような煙のたちこめる中でのことだった。 その人の亜麻色の髪から漂うその甘い香りは、私をどことへなく連れ去った。 . . . 本文を読む

愛の横顔 ～地獄変～ （十二）娘の世話

そしてその翌夜のことでございますが、娘がわたくしの肩や腰をもんでくれました。 勿論、はじめてのことでございます。 . . . 本文を読む

水たまりの中の青空 ～第三部～ (四百二十三)

五平と真理江との式は地味なものとなった。 武蔵にしろ佐多にしろ、品格のある一流ホテルでと考えた。 しかし真理江がどうしても納得しなかった。 . . . 本文を読む

ポエム ～焦燥編～ （レモンの夕立ち）

－トシ君とアコちゃん、どうかしらねえ。 ＝トシ君、もう高校生でしょ。 　アコちゃんも、小学生とはいえ六年生だしねえ。 . . . 本文を読む

青春群像 ご め ん ね…… えそらごと（二十二）

一応「オーバーしてましたか？」と確認してみるが、若い警察官の事務的な言葉が冷たく耳に入る。 「７３キロだよ、ここは５０キロだからね」 . . . 本文を読む

［ブルーの住人］第五章：蒼い情愛 ～はんたー～

一体全体、世間の奴らはどういうつもりだ。 　殺せ殺せと焚きつけておいて、いざ思惑通りに事がはこぶと、今度はうらを返しやがって。 . . . 本文を読む

スピンオフ作品 ~ 名水館女将、光子！ ~ （八）（大女将の引退：一）

　十年近く経ったたとき、何の前触れもなく栄三が倒れた。脳卒中だった。すぐに往診で医師が駆けつけたけれども、自宅での治療は無理だと病院に搬送された。「暫く前に頭が痛いと仰ってました」。「めまいがすると言われていました」。「手足がしびれると聞きました」。一つ一つの症状が軽くすぐに収まってしまったが為に、珠恵に伝えられることはなかった。「若女将の教育がお忙しそうでしたので」と、異口同音に皆が言った。「そ . . . 本文を読む

原木 【 ふたりだけのイヴ 】 地獄編 後

「フーン。だけどあの人、シンちゃんに気がありそうよ」 シン公の言葉にかぶせた。 「へえー、そうかい。それは、それは」 . . . 本文を読む

愛の横顔 ～地獄変～ （十一）朝食

そうそうお話しておりませんでした、朝食のことでございます。 妻が寝込んでからは、止むなく麺類にしております。 . . . 本文を読む

水たまりの中の青空 ～第三部～ (四百二十二)

難色を示していた真理江が、佐多の懇願にちかい説得によって、五平との婚姻を受け入れた。 将来の社長含みとしての五平を受け入れた。 風采のあがらぬ三十半ばの男を、夫とすることに同意した。 . . . 本文を読む

ポエム 焦燥編 （傘がない）

雨が　降ってきた！ 　　　　　　どしゃぶりの雨だ、 　　　　　　傘を　ささなくちゃ。 . . . 本文を読む

青春群像 ご め ん ね…… えそらごと（二十一）

小さな店舗の並ぶ忠節橋通りに入った。 道路にひさしを延長した形状の片側式アーケードになっている。 原型は江戸時代に出現したという。 . . . 本文を読む

［ブルーの住人］第五章：蒼い情愛 ～はんたー～

○刑囚はゆっくりと大きく吐き出し、煙の行方を目で追った。 　そして○刑囚の目に映ったものは。 . . . 本文を読む

スピンオフ作品 ~ 名水館女将、光子！ ~ （七）（名水館の大女将、珠恵）

光子にとって、寝耳に水のことだった。事前に告げられたことではなかった。 えっ？　という表情――口をぽかんと開けて、目を大きく見開き――で、思わず珠恵を見た。 . . . 本文を読む

原木 【 ふたりだけのイヴ 】 地獄編 前

Silent night holly night.　All is calm all is bright.　Round yon vergin mother and child. 　Holy in fant so ten-der and mild.　Sleep in heavenly piece.　Sleep in heavenly piece.━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ . . . 本文を読む