初恋の人の想い出は、雲海のような煙のたちこめる中でのことだった。
その人の亜麻色の髪から漂うその甘い香りは、私をどことへなく連れ去った。
私は、現実の世界から飛び立つ。
私は、支えるものも無く、私はその中を歩いた。
私は、跳び続け、酔いしれたーいや酔いしれすぎた。
そしてそのあまり、私の脳裏に焼き付けられた初恋の人は、
この世に存在してはならない人になった。
雲海のような煙のたちこめる中で、その人は香りだけを漂わせる。
決して姿を見せないーそんな人でなければならなかった。
そしてその時の私自身も、鏡のない世界に居なければならない。
私自身の姿さえわからないーそう、『恋獄の世界』。
私は、初恋の人を、そこに置いてしまった。
そしてそれが為に、現実世界にいたその人を忘れがちとなり、遂には破局への道を歩き始めた。
『恋獄の世界』に、初恋の人は想い出として、残された。
私の脳裏深くに、一服の絵画が焼き付けられた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます