4日(月).昨日は,これから1週間のハードスケジュールに備えて家でゆっくり体を休めたいと思ったのですが,午後,娘が友達のバースデ―・パーティーをわが家でやるというので,家を追い出されましたお客さんを招くためにリビングが片付くから,まあいいか
と自分を納得させて銀座に出かけました
歩行者天国の銀座通りは若い人と若作りの人とが行き交っていました
たしか和光裏のシネスイッチ銀座で映画「ファウスト」をやっているはず,と思い行ってみました
「ファウスト」は文豪ゲーテが生涯をかけて残した不朽の名作です ”人生とは何か”を問うた壮大な物語をロシアの巨匠アレクサンドル・ソクーロフが映画化しました
ファウスト伝説というのがありますが,悪魔に魂を売ったといわれる中世ドイツに実在した魔術師ファウストの物語は,ゲーテだけでなくシューマン,リスト,ベルリオーズなどがオペラや交響曲にしています この映画はゲーテの「ファウスト」をもとにソクーロフ監督が自由に脚色した映画です
19世紀のドイツの町.あらゆる地上の学問を探究したファウスト博士は,研究を続けるために悪魔と噂される高利貸ミュラーの元を訪れる.生きる意味を教えようと囁くミュラーに導かれたファウストは純真なマルガレーテと出会う 一目ぼれしたファウストだったが,ミュラーの策略によって彼女の兄を誤って殺してしまう
それでも彼女を手に入れたいファウストは,自らの魂をミュラーに差し出す契約を結ぶ.悪魔に翻弄されるファウストとマルガレーテ
かれらの行方は・・・・
映画の冒頭はファウスト博士による人体の解剖シーンです.内臓が人体から取り出されるシーンがしばらく続きます 私の右サイドに座っていた熟年カップルがぼそぼそと話をしていたかと思ったら,席を立って帰ってしまいました.予想と違った映画だったのでしょう
気持ちはよくわかります.最後まで観ていましたが,どこが面白いのかと疑問に思ってしまいました.この映画は2011年ヴェネチア国際映画祭のグランプル受賞作品とのことですが,私にはその良さがさっぱりわかりません.私の理解力のなさを痛感します
多分,この映画にエンターテインメントを求めるのは間違いです.もっと深いところで理解しなければならない映画なのだと思います,が,私にはできません
おそらく低弦によるワーグナーのような静かな音楽がこの映画の通奏低音のように流れていますが,誰のどういう曲なのかわかりません.多分オリジナルなのでしょう
この映画を観ようと思ったきっかけの一つは,チラシに載っていた出演者の中に”ハンナ・シグラ”の名前を見出したからです.彼女の名前を初めて知ったのは1979年の(西)ドイツ映画「マリア・ブラウンの結婚」です.彼女はヒロインのマリア・ブラウンを演じました
駅のホームで,戦争から帰る夫を待つマリア・ブラウンの心理を表現するかのように,ベートーヴェンの第9交響曲の第3楽章「アダージョ」が流れます 第3楽章「アダージョ」は次に来る第4楽章「歓喜の歌」の前触れであり,希望に満ちた曲なのです.つまり,この映画では,戦争から無事に帰ってくるはずの夫(第4楽章「歓喜の歌」)を待つマリアの期待を表す音楽として選ばれているのです.これには唸りました
まことに残念ながら最近のハンナ・シグラの活躍を知らないため,彼女が「ファウスト」の中で何の役を演じたのか最後まで分かりませんでした 家に帰ってあらためてこの映画のホームページを観て,彼女が高利貸の妻を演じていたことを知りました.あらためて33年の年月の流れを感じました