18日(月)。昨日、サントリーホール「ブルーローズ」(小ホール)で「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン」フィナ―レを聴きました 曲目はベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調”春”」,②モーツアルト「ピアノ協奏曲第14番変ホ長調K.449」,②ブラームス「弦楽六重奏曲第1番変ロ長調」,③メンデルスゾーン「弦楽八重奏曲変ホ長調」の4曲で,演奏はチェロ=堤剛,ピアノ=若林顕,弦楽四重奏=ヘンシェル・クァルテット,クァルテット・エクセルシオほかです.
自席はLb4列1番で舞台の左サイド後方です.会場は前日に続いて満席
1曲目のベートーヴェン「スプリング・ソナタ」は,それまでの4曲が3楽章で構成されていたのに対し4つの楽章から成ります 「スプリング・ソナタ」という愛称は,明るく爽やかな曲想から,後世の人が名づけました.ヴァイオリンの小林朋子が青緑の,ピアノの今井彩子がブロンズ色のドレスで登場します
軽やかなメロディーが会場を満たします.ベートーヴェンは交響曲も,弦楽四重奏曲もいいけれど,こういう穏やかな曲も心が休まっていいものです
2曲目のモーツアルト「ピアノ協奏曲第14番」のために,ピアノがセンターに移動し,蓋が外されます.そして,まず,バックを務める「チェンバーミュージック・ガーデン・アンサンブル」のメンバーが登場します メンバーリストを見ると桐朋学園大学卒の人が多いようです.それもそうでしょう.このコンサートの主催者はサントリーホールで,その館長が桐朋学園大学長の堤剛氏なのですから
今回のメンバーにはクァルテット・エクセルシオの4人(西野ゆか=Vn,山田百子=Vn,吉田有紀子=Va,大友肇=Vc)も加わっています.女性が多く,ドレスもブルー,イエロー,パープル,オレンジ・・・・とカラフルです
ピアニストの若林顕が登場し,客席に背を向けて指揮をしながらピアノを弾きます 20人弱の弦楽合奏は立ったまま演奏します.自席からはピアニストの左の横顔,ヴァイオリンセクションの背中を見ながら聴くという感じです
モーツアルト「ピアノ協奏曲第14番」は,彼がピアノを教えていたバルバラ・フォン・プロイヤー嬢のために作曲されました 長調の性格から曲想は明るいのですが,第3楽章などは時折,影が射してモーツアルトらしさが垣間見られます
あまり有名な曲ではないためナマで接する機会が少ないので,今回は絶好のチャンスでした
演奏も軽快なテンポでよかったと思います
後半の最初はブラームス「弦楽六重奏曲第1番」です.私は,ブラームスの作品の中で,交響曲以外で好きなのは「ピアノ三重奏曲第1番」ですが,次に好きなのがこの曲です ブラームスが26~27歳の時の作品ですが,全体的に明るく”前進”を感じさせる前向きな曲です
演奏はヘンシェル・クァルテットの4人とクァルテット・エクセルシオのヴィオラ・吉田有紀子,そしてチェロの堤剛というメンバーです 舞台左からダニエル・ベル(Vn),クリストフ・ヘンシェル(Vn),堤剛(Vc),マティアス・バイヤー=カルツホイ(Vc),吉田有紀子(Va),モニカ・ヘンシェル(Va)という並びです.吉田は青緑の,モニカは白のドレスに身を包まれています
第1楽章のアレグロ・マ・ノン・トロッポは堤のチェロと吉田のヴィオラで始まりますが,悠然としたテンポで進められます.これぞ,理想的なテンポ ヴァイオリン,チェロが加わって渋みのある分厚い音楽が流れます
ペースメーカーを務めるのはチェロの堤剛です.ヴィオラの吉田有紀子は堤を見ながら,時に右隣のモニカと目を合わせ,時に左隣のカルツホイと目で合図してニッコリ笑みを見せながら,表情豊かにメロディーを奏でていきます
第2楽章は吉田有紀子のヴィオラ・ソロで始まりますが,その哀しみを湛えた演奏を聴いて,感動で背筋が寒くなりました この人は何と素晴らしい音楽を語ることができるのか
こんなに素晴らしいブラームスは滅多に聴けません
6人のソリストはそれぞれが目と目でコミュニケーションを取りながら,ある意味,楽しみながら演奏を展開していました 曲自体が素晴らしいのに加え,演奏も最上の出来でした
最後のメンデルスゾーン「弦楽八重奏曲」の準備のために椅子がセッティングし直しされます.照明が落ちて,拍手の中,チェロのカルツホイと大友肇が登場します・・・・が,後にだれも続いてきません 2人は不思議そうに入り口の方を見ていましたが,2人で優雅な音楽を演奏し始めました
すると照明がまた明るくなり,同じメロディーが会場の後部の方から聴こえてきました.よく見ると,他の6人のメンバーが楽器を弾きながらゆっくりと舞台に近づいてくるのが見えました.心憎い演出です
彼らは演奏が終わると舞台に上がりスタンバイしました
演奏はヘンシェル・クァルテットとクァルテット・エクセルシオの8人ですが,舞台左から,ダニエル・ベル,西野ゆか,クリストフ・ヘンシェル,山田百子,モニカ・ヘンシェル,吉田有紀子,マティアス・バイヤー=カルツホイ,大友肇という配置を取ります
メンデルスゾーンは「弦楽八重奏曲」を何と16歳の時に作曲したと言われています.とても信じられません モーツアルトに次ぐ早熟の天才と言われる所以です
全体は4つの楽章から成りますが,全体的に明るく”疾走する喜び”とでも表現すべきスピード感のある溌剌とした曲です
ソリストたちの顔を見ても,演奏するのが楽しくて仕方ないといった表情に溢れています
メンデルスゾーンは,自身も演奏できたので,演奏する側に立って作曲したという側面もあると思います
この日は朝から疲れが残っていて,身体が重かったのですが,このコンサートが聴き終わってからは気分も明るく,身体も軽くなったような気がします 「良い音楽,良い演奏」は市販の薬よりもよく効く(聴く?)特効薬です