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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

真保裕一著「奪取・下」を読む~偽札造りは成功したが・・・・

2015年09月02日 07時11分55秒 | 日記

2日(水)。わが家に来てから327日目を迎え,2020年の東京オリンピックの実施に向けて憂慮の想いを募らせるモコタロです  

 

          

         今度はエンブレムの使用中止だって 東京五輪は五輪終になちゃうよ

 

  閑話休題  

 

昨夕、Sさんと芥川賞受賞作、又吉直樹著「火花」を話題に西新橋のEで飲みました 先日、暑気払いの時にアラフォーの美人Sさんが「火花」を読みたがっていたので、私が同作品を収録した「文芸春秋」9月号を買って読み、Sさんがまだ読んでいないということだったので、お貸ししたのです。その時、読み終わったらお互いの感想を言い合いましょう、という約束をしたのです 私はブログに「火花」の感想を書きましたが、Sさんは先入観なしで読むため、私のブログは「火花」を読み終わってからご覧になったそうです

最初は西新橋のサラリーマンの慣習に倣い生ビールで乾杯して,さっそく「火花」について”火花”を散らしました 基本的な共通認識は,なぜ又吉直樹はあんな奇想天外な結末にしたのか,ということです 言葉で勝負すべき漫才という職業を背負っていながら,なぜ”天才漫才師”の先輩が言葉以外の方法で人を笑わせようとしたのか,その疑問です その前兆vとして,又吉は先輩芸人が後輩の自分を真似して金髪にしたことを酷評したことを書いています.その前兆があっての結末だということは分かるにしても,あまりにも唐突で違和感があります.それでも,又吉は,文章表現においては優れているということでも二人の意見は一致しました

Sさんと見解が違ったのは,彼女は又吉のコンビで実際に漫才を見たことがあり,その漫才が単なるしゃべくりではなく”被り物”を使って話を展開する独特の話法で,それがあの「火花」という小説に反映しているのではないか,と指摘されていたことです 日常テレビ番組を観ない私は当然,又吉もそれ以外の漫才も観たことがありません.蓄積する情報量の差が感想に表われたといった感じです

その上で,Sさんは又吉の「火花」よりも,同時に芥川賞を受賞した羽田圭介の「スクラップ・アンド・ビルド」の方を高く評価していました 主人公の青年が祖父が安楽死できるようにほう助してやるという,ある意味コミカルな話ですが,現代っ子のドライなところ,冷たい視線の半面,どこか優しさを感じさせる筆致が誰もが書けることではない,という評価だったように思います Sさんはマツコ・デラックスの番組に羽田圭介がゲスト出演した時のトークが印象に残っていて,こういう人がああいう小説を書いたんだ,と納得されたようです.私も「文芸春秋」で「スクラップ・アンド・ビルド」を読みましたが,それほど大きなインパクトは受けませんでした 同じ作品を読んでも見解が違うということほど面白いことはありません.だから読書好きは堪らないのです

話は芥川賞に止まらず,広く小説全般,映画,それに伴う映画音楽へと広がりました Sさんが今読んでいるのは「鹿の王」で本屋大賞を受賞し,国際アンデルセン大賞の受賞者でもある上橋菜穂子さんの作品とのことでした Sさんは純文学というよりも現実とメルヘンが入り混じったような小説がお好みのように思いました 前回,Sさんから薦められたのは水村美苗著「日本語が亡びる時」他でしたが,今回はロシア語同時通訳者の米原真理著「オリガ・モリソヴナの反語法」と,船曳由美著「100年前の女の子」でした.タイトルだけ見ると何だか不思議な世界の物語に思えますが,これだけは実際に読んでみなければ分かりません 後者は中島京子の「小さいおうち」的な物語なんだろうか,なんて勝手に想像しています.いつか読んでみようかと思います

映画の話では,私から山田洋二監督「男はつらいよ」では,よくクラシック音楽が使われていたことを話しました 一例として,大原麗子がマドンナを演じた映画で,大原が演ずる離婚の危機にある女性が喫茶店で人を待つシーンでモーツアルトの「ピアノ協奏曲第23番」の第2楽章が流れていたこと.そして同じ曲が西ドイツ映画「マリア・ブラウンの結婚」の食事シーンで流れていたことを話しました 好奇心旺盛なSさんはその場で,スマホで検索してその曲を呼び出して耳を澄ませて聴いていました

また,Sさんが「ショパンが好き.女性は好きですよね」とおっしゃるので,「ショパンは男の音楽です」と言うと,意外な感じを受けられたようです 私が言いたかったのは「ショパンは女性も男性も弾くけれど,音楽そのものは”男のロマンティシズム”を音として表したものだ」ということです それはラフマニノフの音楽にも通じることろがあると思います

新潟銘酒『八海山』の冷酒を呑みながら話し込んで,いつの間にか2時間半が経ってしまいました 「こういう話題で身近に話し合える人がいないんですよね.今日は楽しかったです」というのが共通の想いだったように思います 楽しい時間はあっという間に過ぎるものですね.Sさん,お付き合いいただきありがとうございました.また飲みましょうね

 

          

          

  も一度,閑話休題  

 

真保裕一著「奪取・下」(講談社文庫)を読み終わりました 真保裕一は1961年東京生まれ.1997年にこの「奪取」で日本推理作家協会賞と山本周五郎賞をダブル受賞しています

 

          

 

上巻で,偽札造りに励む道郎と雅人の前に現われたジジイは,かつて偽札造りに手を染めていた”その道のプロ”だった 二人はジジイと手を組み,ジジイが務める印刷会社の一人娘・幸緒(さちお)も巻き込んで偽札造りにまい進する しかし,ヤクザの罠にかかり,結果的に雅人は刑務所に服役することとなり,ジジイは拘束されて,道郎が救出作戦を展開する中で死んでしまう

その5年後,名前を変えた道郎はヤクザとその背後にいる大銀行に復讐するため,より完璧な1万円札を造り出すことに執念を燃やす 刑務所を出所した雅人と,成人した幸緒と再会し,3人でついに完璧なニセ1万円札を完成させる ヤクザと銀行の担当者を呼び出してニセ金を掴ませようとしたその時に,ちょっとしたアクシデントによってその企みがバレてしまう さて,3人の運命はいかに・・・・

読んでいると,本物のお札を発行するのに必要な知識が科学的に,詳細に解説されており,専門的すぎて,正直言ってついていけないところもありました 著者はこの作品を書くに当たって,何人かの印刷技術者に取材していますが,この本に書かれた通りにやれば「印刷に関する限り,見た目には寸分も変わりのない偽札を造ることが出来る」と自信を持って言われたそうです それだけに,あまりにも専門的過ぎて,もっと簡単に書いて欲しいという気持ちもありました.しかし,そこは読み飛ばして読み込んでいくと,読む手が止まらない面白さです

エピローグについては,読む人によっていろいろと評価が分かれるでしょう 私としては,「なるほどそういう手があったか しかし,エピローグとしてはどうかな?」というのが本当のところです

 

                         

 

ところで,今日,当ブログのトータル訪問者数(IP)が50万人を超えました.また,定期読者が570人に達しました これもひとえに毎日ご覧いだだいている皆さまのお陰です.ありがとうございます

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