15日(金)その2。よい子は「その1」から見てね モコタロはそっちに出ています
昨夕、サントリーホールで読売日響第554回 定期演奏家会を聴きました プログラムは①リヒャルト・シュトラウス「交響詩”ドン・ファン”」、②リスト「ピアノ協奏曲第2番イ長調」、③ツェムリンスキー「交響詩”人魚姫”」で、②のピアノ独奏は1983年スイス生まれのフランチェスコ・ピエモンテージ、指揮はミヒャエル・ボーダーです
ボーダーは巨匠ミヒャエル・ギーレンのアシスタント指揮者としてフランクフルト歌劇場で研鑽を積み、現在はデンマーク王立歌劇場首席指揮者兼アーティスティック・アドヴァイザーを務めています
オケがスタンバイします。この日のコンマスは長原幸太、すぐ隣には小森谷巧が控えます ロマンス・グレイのミヒャエル・ボーダーが登場、1曲目のリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」の演奏に入ります。極めてキビキビした指揮で、オケをグングン煽り立てます
このコンビによる小手調べといったところでしょう
グランド・ピアノがステージ左サイドからセンターに移動し、2曲目のリスト「ピアノ協奏曲第2番イ長調」の演奏に備えます。長身でガッチリした体格のソリスト、フランチェスコ・ピエモンテージが指揮者とともに登場します
この曲は2度の改訂を経て1857年に初演されましたが、その際にリストはソリストではなく指揮者として参画したそうです。曲は実質的に3つの部分から成りますが、曲の切れ目のない単一楽章です 聴いていて思うのは、ヴィルトゥオーゾ・ピアニストであるリストが、自分の超絶技巧の実力を披歴するために書かれた曲であるということです
というのは、バックを務めるオーケストラの演奏を見ると、例えば弦楽器だけを取り上げてみても、ヴァイオリンも、ヴィオラも、チェロも、同じパートの楽譜を弾いているのではないかと思うほど、弓使いがほとんど一致しているからです
ピアノ・パートの超絶技巧に比べて、あまりにも大雑把なオーケストレーションに思えます
そうしたピアノに関しては超絶技巧曲を、ピエモンテージは何の困難さも感じさせず、ダイナミックに演奏しました 彼はアンコールを演奏しましたが、私は最初の数小節を聴いて、リストには違いないけれど「コンソレーション」の何番か、あるいは、まさかの「巡礼の年」のどれかか、と思いながら聴いていましたが、結局分かりませんでした
すごく静かで感動的な曲でした。休憩時間にロビーの掲示を見ると、その まさか の「巡礼の年第1年」から「スイス」でした
まさかと思ったのは、今読んでいる本の中にその曲名が出てきたからです
CDで持っているかどうか、探さなければ、と思いました
それと同時に、アンコール曲として、彼が何故リストの作品の中から「巡礼の年第1年」から「スイス」を選んだのかが分かりました。もちろん、彼がスイス出身だからです
休憩後はツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」です。私が疑問に思ったのは、ドイツ出身のミヒャエル・ボーダーが、なぜツェムリンスキーの「人魚姫」を演奏しようと思ったのか、ということです それは彼の現在の肩書を見て分かりました
「人魚姫」はデンマーク生まれのアンデルセンの作った童話です。それに基づいてツェムリンスキーが作曲したのですが、それを演奏するボーダーは現在、デンマーク王立歌劇場の首席指揮者を務めています そう、デンマーク繋がりだった訳です。多分、彼は地元デンマークでも、この曲を演奏しているのでしょう
この曲は、一言でいえば、アンデルセンの「人魚姫」に基づくオーケストラのためのファンタジーで、物語をほぼ忠実に音楽によって描いています 第1楽章では首席ヴァイオリン奏者が人魚姫の主題を奏でますが、長原幸太の独奏は、人魚姫の悲しさを表現しているようで素晴らしいものがありました
ツェムリンスキーはシェーンベルクの作曲の師であることから、果たしてどんな とんでもない曲 を作ったのだろうか、と懸念していたのですが、実際に聴いてみると、非常に分かり易い音楽でした なお、彼の妹マティルデはシェーンベルクと結婚したので、姻戚関係になったとのことです
最後に指揮者ボーダーに注文するとすれば、演奏後、全員を立たせる前に、素晴らしいソロを演奏したコンマスの長原幸太を一人で立たせてほしかった、ということです