3日(木・祝).文化の日は「晴れの特異日」と言われていますが,その言い伝えのとおり東京は朝からよく晴れています 絶好のコンサート日和ですね ということで,わが家に来てから今日で766日目を迎え,お姉ちゃんの部屋で黒の衣装をかじっているモコタロです
おやつは飽きたから お姉ちゃんの衣装を味見したら 叱られちゃったよ
閑話休題
昨日は凄く寒かったので,夕食はおでんにしました 秋になってから初めてエアコンの暖房をつけました.今年は秋が短く冬が長いような気がします
も一度,閑話休題
昨日,晴海の第一生命ホールで「雄大と行く 昼の音楽散歩 岡本誠司ヴァイオリンが歌うロマンス」公演を聴きました プログラムは①クライスラー「愛の喜び」,②同「愛の悲しみ」,③クララ・シューマン「3つのロマンス」,④ラフマニノフ「2つのサロン風の小品」,⑤シベリウス「ロマンス」,⑥スーク「愛の歌」,⑦シマノフスキ「神話」から3つの詩,⑧エルガー「愛のあいさつ」です 岡本誠司は1994年生まれ,20歳でJ.S.バッハ国際コンクールで優勝した東京藝大在学中の俊英,ピアノ伴奏はパリ高等音楽院ピアノ科・室内楽科准教授の上田晴子です
岡本誠司の演奏を聴こうと思ったのは,6月30日に開かれた東京藝大「モーニングコンサート」で弾いたハチャトゥリアンの「ヴァイオリン協奏曲ニ短調」の演奏が素晴らしかったからです
自席は1階6列11番,左ブロック右から2つ入った席です.会場は7割程度の入りでしょうか 会場を見渡すと帽子を被ったままの男性が数人目に付きました コンサートを聴くのに帽子を被ったままというのはどうなんでしょうか? もちろん,中には「帽子をとると頭が涼しすぎて風邪を引きそう」という止むを得ない頭髪事情をかかえている人もおられることでしょう そうでもない限り,帽子を被ったまま演奏を聴くのは演奏者に対して失礼だと思いますが,皆さんはどうお考えでしょうか? ベスト・アンサーには,当該者に成り代わって脱帽します
さて,岡本誠司と植田晴子がステージに登場し,さっそくクライスラーの「愛の喜び」と「愛の悲しみ」の演奏に入ります 岡本はおそらくストラディヴァリウス・クラスの名器を駆使して美しい音色で喜びと悲しみを弾き分けます 抑制された演奏の美しさが光ります
ここで,ナビゲーターの山野雄大が登場,岡本誠司が 先週ポーランドで開かれた第15回ヴィエ二ャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールで第2位を獲得したことを紹介(会場 ),次に演奏するクララ・シューマンの人と曲について解説しました それによると,今でこそ夫のロベルト・シューマンの方が有名だが,当時は妻のクララの方が大ピアニストとして名を馳せており,演奏旅行に行く先々でロベルトはクララのマネージャーと間違えられたほどだったそうです ロベルトはそのたびに「も~ 頭にクララ」と言ったかどうかは分かりません
クララ・シューマンの「3つのロマンス」は1「アンダンテ・モルト」,2「アレグレット」,3「情熱をこめて速く」から成ります いずれもロマンティックな曲想ですが,どうしてどうしてなかなか聴かせる曲です 彼女に限らず女性作曲家の作品が演奏される機会があまりないのは残念なことです
次に,ラフマニノフ「2つのサロン風の小品」が演奏されます 1.「ロマンス」,2「ハンガリー舞曲」の2曲ですが,「ロマンス」は 聴く限り 「サロン風」というような優雅さは感じません むしろ濃厚で深い情感に溢れています.そして「ハンガリー舞曲」は激しく技巧的な曲で,こちらもサロン風とは趣が異なります 両曲ともラフマニノフらしい聴きごたえのある作品です
次にシベリウス「ロマンス」が演奏されます.この作品は1915年に書かれた「4つの小品」の第2曲です シベリウスは交響曲とか「フィンランディア」などで,独自の個性を発揮した曲を作っていますが,「ソナチネ」とかこの「ロマンス」のような小さいながらも魅力溢れる曲も書いています
次いで,ヨゼフ・スーク「愛の歌」が演奏されます もともとは「6つのピアノ小品」の第1曲でした.とてもロマンティックな曲です ヨゼフ・スーク(1874-1935)はドヴォルザークの弟子で娘婿でもあるチェコの作曲家です.もう一人の同姓同名のヴァイオリニスト,ヨゼフ・スークは彼の孫です 私は彼の演奏するCDを4枚持っていますが,残念ながら「愛の歌」は収録されていません
ここで,山野雄大が登場,「これまで聴いてきたクライスラーからスークまでの曲は,流れるようなメロディーで すんなりと耳に入ってきたと思うが,これから聴くシマノフスキの曲は美しい曲だが 趣が異なる」と解説,ピアニストの植田晴美にマイクを譲ると「印象派的な感じがする.あるいは,ターナーの絵のような感じ」と印象を述べていました
ポーランドの作曲家カロル・シマノフスキ(1882-1937)は,緻密で神秘的な音楽を突き詰めた人で,「神話:3つの歌」は彼の代表作です ギリシャ神話をモチーフにして想像を膨らませた作品で,1「アレトゥーサの泉」,2「ナルシス」,3「ドリアードと牧神」から成ります
この曲の演奏に入って,植田晴子のピアノが俄然輝いてきました それまでは何とかヴァイオリンを引き立てて・・・・と控えめな演奏に徹していた感がありますが,シマノフスキの第1曲「アレトゥーサの泉」に入るや否や,水を得た魚のように自由自在に弾き始めました ヴァイオリンとの丁々発止が聴きものでした
なるほど,山野氏の解説の通り,この曲は今まで聴いた曲とは美しさの性質が違います ひと言で言えば「神秘的」です.特に弱音による演奏が強く印象に残る曲です
最後にエルガーの「愛のあいさつ」が演奏されました これは「愛」とか「ロマンス」をテーマにしたコンサートでは定番の曲です
アンコールは,岡本がヴィエニャフスキ・コンクールの時にも弾いたヴィエニャフスキの「華麗なるポロネーズ第1番」を華々しく演奏,盛大な拍手を浴びました
岡本誠司は大器の器だと思います 演奏は言うまでもなく,トークでの話の内容も話し方もしっかりしていて,良い意味での”自己主張”があると思います これからも注目していきたいと思います
休憩なし90分の「昼の音楽さんぽ」,2000円で十二分に楽しむことが出来ました