26日(土).昨日の朝日朝刊・教育面に「ロボットは東大に入れるか」という人工知能(AI)の研究を続けてきた国立情報研究所の新井紀子教授が論考を寄せています 結論から言うと「現状の技術の延長線上では,AIが東京大学に合格する日は永遠に来ないだろう」ということです AIに関する彼女の論考を超約すると以下の通りです
「2010年に,AIはどこまで行き どこで止まるのか.AIはどのように仕事を奪い 仕事を生み出し,社会を変えるのか をはじき出した結果,『2030年に現在のホワイトカラーの仕事の半分がAIに置き換えられる』という予測が立った 『なぜ,仕事を奪うかもしれないAIの研究をするのか』と問われるが,私がAIの研究を止めても世界の企業や研究者はAIの研究をやめはしない ならば,AIの可能性と限界をきちんと見極め,対策をとろう.AIには弱点がある.それは『まるで意味がわかっていない』ということだ 意味を理解しなくてもできる仕事は遠からずAIに奪われる.どうか『意味』を理解する人になってほしい.それがAIによって不幸にならない唯一の道だ」
私はン十年前の学生時代に自動車の組み立てのアルバイトをしたことがありますが,その時すでに機械化・自動化が図られていました しかし,現在ではさらにAIを組み込んだ技術が進み 人間が極力少ない自動車工場が稼働しているのが現状です これと同じようなことが,AIの導入によってホワイトカラーの仕事で進められようとしているわけです これは実は大変なことだと思います.今やっている仕事について,その意味を良く理解した上で進めないといけないということでしょう
ということで,わが家に来てから今日で788日目を迎え,無料クラシック音楽情報誌ぴあクラシックを見て感想を述べるモコタロです
アンさん 双子のお子さんが生まれたって! アンずるよりも生むが易しっ てか
閑話休題
昨日チケットを2枚買いました 2枚とも東京芸術劇場の「芸劇ブランチ コンサート」です 開演はいずれも午前11時で,所要時間は約1時間,全席指定2,200円です
12月21日(水)のプログラムは①チャイコフスキー「アンダンテ・カンタービレ」,②ボロディン「ノクターン」,③ハイドン「ひばり」「セレナーデ」「皇帝」から,④シューマン「ピアノ五重奏曲」です 出演は,ヴァイオリン=藤江扶紀,大江馨,ヴィオラ=佐々木亮,チェロ=富岡廉太郎,ピアノ=清水和音です
来年2月22日(水)のプログラムは①ブラームス「クラリネット・ソナタ」より,②モーツアルト「クラリネット五重奏曲」です 出演はクラリネット=伊藤圭,ヴァイオリン=大江馨,藤江扶紀,ヴィオラ=鈴木康浩,チェロ=富岡廉太郎,ピアノ=清水和音です
も一度,閑話休題
昨夕,渋谷のNHKホールでNHK交響楽団の第1849回定期演奏会を聴きました NHKホール前の通路では輝くイルミネーションがお出迎えです
この日の公演はオール・ショスタコーヴィチ・プログラムで①ロシアとギルギスの民謡による序曲,②ピアノ協奏曲第1番ハ短調,③交響曲第12番ニ短調「1917年」が演奏されました ②のピアノ独奏はアレクセイ・ボロディン,指揮は井上道義です
井上道義は1946年東京生まれ.2007年1月からオーケストラ・アンサンブル金沢の音楽監督を,2014年4月からは大阪フィルの首席指揮者を兼務しています N響の”定期公演”に出演するのは何と38年ぶりとのことです この日のコンマスはロンドンのロイヤル・フィルのコンマスを務めるダンカン・リデルです
1曲目は「ロシアとキルギスの民謡による序曲」です この曲は1963年6月にキルギス共和国で帝政ロシアへの併合100周年を祝う「ロシア・ソヴィエト音楽祭」が開催され,ショスタコーヴィチもロシアからの派遣団に参加し,その時に民族音楽に触れ 作曲することになったとのこと 3部形式で構成されています
井上道義のタクトで序奏に入りますが,確かに民族色に彩られた音楽で,いかにも「国家の”社会主義レアリズム”の方針に沿った民衆に分かり易い音楽」という感じの曲想でした
2曲目は「ピアノ協奏曲第1番ハ短調」です この作品は1933年に作られました.内容的には「ピアノ,トランペット,弦楽合奏のための協奏曲」です 1977年 レニングラード(現サンクトペテルブルク)生まれの39歳,アレクセイ・ボロディンが登場,ピアノに向かいます すぐ近くにトランペット独奏の菊本和昭がスタンバイします.この曲は4つの楽章から成りますが,切れ目なく演奏されます ボロディンのピアノはショスタコーヴィチのアイロニーを見事に表現しており,菊本和昭のトランペットは瞬発力のある切れ味鋭い演奏でした
ボロディンはアンコールにショスタコーヴィチ「10の小品 作品12」から第10曲「スケルツォ」を鮮やかに演奏し,拍手喝さいを浴びました
この曲は,マルタ・アルゲリッチのピアノ,イェルク・フェルバー指揮ハイルブロン・ヴェルテンベルク室内管弦楽団によるCD(1993年1月録音)で予習しておきました アルゲリッチの演奏は刺激的です
休憩後は交響曲第12番ニ短調”1917年”です この曲は1960~61年8月に作曲され,ロシア革命を導いたソ連共産党指導者ウラディミール・レーニンに捧げられました 第1楽章「革命のペトログラード」,第2楽章「ラズリフ」,第3楽章「アヴローラ」,第4楽章「人類の夜明け」の4つの楽章から構成されていますが,各楽章は切れ目なく演奏されます
この曲は,エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルによるCD(1984年録音)で予習しておきました これはムラヴィンスキー最後の録音ということですが,ストイックなまでの引き締まった演奏です
ショスタコーヴィチがこの曲を作曲したのは共産党の党員候補となった後で,結果としてこの曲は「レーニンを讃えることで共産党を賛美し,党に捧げられた作品として広く認知された」と言われています 予習をしている時は「ずいぶん激しい曲想だな」くらいにしか思わなかったのですが,実際に目の前で約40分ノンストップで聴くと,第1楽章の暴力的なまでの激しさと,それ以降の苦悩に満ちた沈潜と,最後の勝利の誇らしげな音楽と・・・・といったように,一筋縄ではいかない複雑な音楽であることが分かってきます こういう複雑怪奇な音楽は,井上道義が得意とするところだと思います
井上道義の実力を知ったのは1999年~2000年にかけてトリフォニーホールで新日本フィルを振って演奏した「マーラー交響曲全曲ツィクルス」です すべての公演を聴きましたが,あの当時の日本におけるマーラー演奏の最高峰的なパフォーマンスでした すべてライブ録音されCD化されました 思い出すのは,その第1日目の「交響曲第1番」のコンサートです.第1楽章が始まって ほんの数分経ったところでケータイの着信音が鳴ったのです その音は指揮者の井上や楽員にも届きました その時何が起こったか・・・・・井上が「アーッ」と叫びながら指揮台から転げ落ちたのです それはライブ録音が頭にあったからだと思います.何とか最初から演奏し直さなければならない,それにはどうしたら良いか,と考えた結果が”自主転落”だったのです 普通の指揮者だったら,単純に演奏を止めて最初からやり直すでしょうが,そこが井上道義らしいところです 十数分後,再び指揮台に立った井上は第1楽章の冒頭から演奏し直しました しかし,話はそれで終わらず,録音を再生した結果「録り直しが必要」という結論が出て,当日の聴衆を招待して後日 再度トリフォ二ーホールで第1番を演奏し録り直したのです そのCDを持っているのですが,例によってCD棚のマーラーのコーナーに見当たりません いつものことですが,我ながら情けないです
21世紀に入ってからは,井上道義のコンサートを聴くことはマレになりました マーラーは良かったのですが,それ以外の曲があまり気乗りしなかったのです それは演奏曲目というより,井上の演奏スタイルが気に入らなかったと言った方が正確でしょう.どちらかと言うと,楽員がどう思おうと自分のペースで音楽を進める,タクトについて行けないくらい速いテンポを要求する,演奏が上手くいくと自分の手柄だと言わんばかりにエエカッコシイをする といったやや強引なやり方が窺えたのです それが数年前からちょっと変わってきたように思います.多分オーケストラ・サンサンブル金沢の音楽監督を引き受けて数年経ったくらいからだと思います 踊るような指揮のスタイルは変わりませんが,あくまでも楽員を立てるようになりました さらに,咽頭がんの手術をしてからさらに良くなってきたように思います
今回のショスタコーヴィチの第12番は,時にボクシングをやっているのか と思うような指揮ぶりや バレエを踊るような仕草が見られましたが,井上道義の良い面が前面に出た演奏だったように思います 先日のコバケンこと小林研一郎(76歳)にしても,この井上道義(今年70歳!)にしても,歳をとるにつれて 良い方向に進化しているように思います