人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

上岡敏之+読響でシューベルト&ショスタコーヴィチの「ピアノ五重奏曲」を聴く~読響アンサンブル

2016年11月10日 08時01分02秒 | 日記

10日(木).昨日の朝日朝刊「オピニオン面」の「ことばの広場 校閲センターから」は「言葉の変化(上)」として言葉の使い方の変化を超略次のように紹介しています

「芥川龍之介は『とても』は『かなわない』などの否定形を必ず伴ったのに,東京では『とても寒い』という用法が広まっている,と指摘した.円地文子も 文章の中で『とても』を肯定に遣う気にはならない と記している.『とても良い』などは,今や当然のように使われるが,なじまないとされた時期もあったのだ

ひと昔前に「ヤバイ」が「マズい」「危ない」などに使われていたのが,今や「カッコいい」と肯定的に使われるようになったのも言葉の使い方の変化の表れでしょう 言葉の使い方は時代の変遷とともに変化していくようですね ということで,わが家に来てから今日で773日目を迎え,英国のEC離脱決定に次いで 今年2度目の想定外の出来事となったアメリカ大統領選挙の結果を受けて 感想を述べるモコタロです

 

          

             「上り坂」「下り坂」そして第3の坂「まさか」がアメリカで起こってしまった

             てっきりジョーカーだと思っていたトランプはエースになってしまったようだ

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「豚としめじの味噌チーズ炒め」「生野菜サラダ」を作りました  「豚としめじ~」は初挑戦ですが,子供たちにも好評でした

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日の日経朝刊に「音大に新専攻  職業選び充実~専門家以外の道も示す」という見出しの記事が載っていました.記事を超訳すると

「近年,音楽大学の間に,商業音楽やリベラルアーツ(教養教育)のコースを新設する動きが広がっている 東京音楽大学では来年度『ミュージック・リベラルアーツ』専攻を音大で初めて立ち上げる.1年生で英語スキルを習得し,2年生から原則英語で人文,社会,自然科学の教養を学ぶ 念頭に置くのは,ハーバード大など海外では一般大学に音楽学部などが設置されている点だ.野島学長は『音楽は実社会で無駄にはならず,教養として力を持つ.一般企業に就職する学生にも広く門戸を開き,国際的に活躍する人材を育てたい』と語る 昭和音大は,吹奏楽の歴史から指揮,編曲までを体系的に学ぶ国内初の『ウィンドシンフォニー』コースなど4コースを新設する.プロ奏者はもちろん,国内約1万1千の中学・高校にある吹奏楽部などの指導者を育てる.音楽大学がコースを新設する背景には,学生の就職環境の変化がある.プロ演奏家が狭き門であることに変わりはないが,近年は音楽教室や教員の需要が減少.一般企業への就職を志向する学生が増えている

としています.そして,東京音大の2015年度の就職先を紹介しています.それによると,「進学・留学」が34.0%で一番多く,次いで「企業」が17.6%,「教員」9.3%,「音楽教室講師」と「音楽活動」が各8.4%と続き,「公務員」が0.6%,「その他」が21.7%となっています 「その他」の割合がかなり高いと思いますが,具体的にはどんな内容なのでしょうか? まだ買っていませんが『最後の秘境  東京藝大』(二宮敦人著・新潮社)には,「東京藝大の卒業生の半分近くが行方不明になる」と書かれているそうですから,東京音大でも似たような状況ということでしょうか

それにしても,芸術系の大学にご子息を通わせている親御さんは経済的に大変なご苦労をされているのではないかと同情します わが家にも4年制の美術大学を出て現在無職の娘が約1名いますので他人事ではありません 音大でも高い授業料を4年間払って,卒業したと思ったら就職先がほとんどないというのが 上の東京音大のデータからも読み取れます   世の中厳しいですね.誰のせいなんでしょうか

 

  最後の,閑話休題  

 

昨夕,よみうり大手町ホールで読響アンサンブル・シリーズ 第12回「上岡敏之と読響メンバーの室内楽」を聴きました プログラムは①シューベルト「ピアノ五重奏曲『ます』イ長調」,②ショスタコーヴィチ「ピアノ五重奏曲ト短調」です

開演に先立って読売新聞の鈴木美潮さんの進行により上岡敏之氏の「プレトーク」がありました 最初に鈴木コーディネーターから「皆さん,今日は世界的にみて歴史的な日になると思いますが,アメリカ大統領選挙のことは忘れて演奏をお楽しみください」という挨拶がありました.次いで上岡氏の経歴(長年ドイツのオケで活躍し,現在新日本フィル音楽監督,コペンハーゲン・フィル首席指揮者を務めている)を紹介しました その後,上岡氏がピアノを弾きながらシューベルトとショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲について解説しましたが,興に乗ると止まらない性格のようで,ショスタコーヴィチの曲の解説に至っては,まずピアノでベートーヴェンの第九の第1楽章を演奏し,次にブルックナーの荘重な第9番を紹介し,「それらに比べてショスタコーヴィチは軽い」と実演で示しました 「マーラーは・・・・」というところで,鈴木コーディネーターから「上岡さん,申し訳ありませんが,お時間の関係でこれくらいで・・・」とストップをかけられてしまいました 止めなければ開演時間になっていたことでしょう

さて,本番です.1曲目のシューベルト「ピアノ五重奏曲”ます”」は,ヴァイオリン=太田博子,ヴィオラ=三浦克之,チェロ=芝村崇,コントラバス=小金丸章斗,ピアノ=上岡敏之というメンバーによる演奏です 

この曲は1817年に作られた歌曲「ます」のメロディーを第4楽章に使っていることから”ます”という愛称で呼ばれていますが,1819年7月(作曲者22歳)に作曲されました ピアノ五重奏曲は,プレトークでも話があった通り,通常 弦楽四重奏曲(ヴァイオリン2挺,ヴィオラ,チェロ)にピアノを加える形をとりますが,シューベルトの「ます」はヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバス,ピアノという編成をとるのが特徴です もう一つの特徴は5楽章から構成されていることです

第1楽章に入ります.第1ヴァイオリンを中心に軽快な音楽が奏でられます 感心するのは上岡のピアノです.本業は指揮者ですが,ピアノもプロ級です この人の良い所は喜びに満ちて演奏するところです 彼の明るい雰囲気が他のメンバーに伝染して楽しい音楽作りが進んでいることが分かります 他のメンバーも演奏することに喜びを感じていることが覗えます.上岡氏はこの調子で指揮をしているのでしょう

 

          

 

休憩時間に,定期会員で当ブログの読者Nさんとコーヒーを飲みました

Nさん:モコタロくんもアメリカ大統領選挙をテレビで観たりするんですか?

tora  :はい.それにしても予想外の結果でしたね

Nさん:予想外と言えば予想外ですね.あら,コンサートを聴きに来てこんな話をしていちゃいけませんね.もっと余裕をもって聴かなくちゃ ところで,今度の読響定期はかなり高齢のピアニストが演奏しますよね

tora   :イエルク・デームスですね.毎年のように「今年が最後の来日」とか言われて,また来年も来るというピアニストです

Nさん:演奏家って高齢でも演奏していけるんでしょうかねぇ

tora   :そうですね.ヴァイオリニストではギトリスがいるし

Nさん:指揮者はどうなのかな?

tora   :指揮者は自分では演奏しないから長生きするんじゃないかな.朝比奈隆とか・・・・

そんな話をしているうちに,あっという間に15分が経ってしまいました.休憩時間は20分にしてほしいと思います

休憩後はショスタコーヴィチ「ピアノ五重奏曲ト短調」です この曲は1940年(作曲者34歳)に作曲されました.シューベルトと同じく5つの楽章から成りますが,コントラバスはありません 演奏は,第1ヴァイオリン=赤池瑞枝,第2ヴァイオリン=山田友子,ヴィオラ=長岡晶子,チェロ=松葉春樹,ピアノ=上岡敏之というメンバーです

この曲は,ピアノ=ウラディミール・アシュケナージ+フィッツウィリアム弦楽四重奏団によるCDで予習しておきました

 

          

 

ピアノの上岡氏は今度はメガネを着用しています シューベルトに比べてショスタコーヴィチは楽譜が音符で真っ黒で読み取りにくいのでしょう 第1楽章がピアノの力強い演奏で入ります 上岡氏は腰を浮かせてピアノを打ち下ろします.冒頭から緊張感に満ちています この曲で面白いのは第3楽章「スケルツォ」です.第2楽章から180度転換した曲想で,ショスタコーヴィチ特有の諧謔的で暴力的とまで言えるような激しい音楽が展開します この楽章の終結部は,フルスピードで走っていたスポーツカーが急ブレーキをかけたため,運転手が慣性の法則で前につんのめるような感じで,予告なく放り出されるような感覚を抱きます.この放心状態の感覚がたまりません 一転,第4楽章では,チェロのピッツィカートに乗って第1ヴァイオリンがロシア民謡風のメロディーを奏でますが,赤池瑞枝のヴァイオリンがとても美しく響きました

もう一つ面白いのは最後の第5楽章の終結部です 今までの不安な音楽は何だったのか というような楽観的な曲想が現れ,終結部はフォルテで「ジャーン」と終わるのではなく,あくまでも軽く「はい,これで おしまい」という感じでソフトに終わります これがまた,ショスタコーヴィチらしいアイロニカルな終わり方で好きです.5人の演奏はショスタコーヴィチの魅力を十二分に引き出した素晴らしいパフォーマンスでした

アンコールはコントラバスを加えた6人で,モーツアルトの「ピアノ協奏曲第23番変ホ長調K.488」から第2楽章「アダージョ」を演奏し,満場の拍手を浴びました 実はこの曲の一部は「プレトーク」で,シューベルトの憧れの作曲家としてベートーヴェンとともに挙げられたモーツアルトの曲を紹介する過程で上岡氏が演奏していたのです さすがは上岡氏です.本番前からアンコールの伏線を張っていたのです まさか,シューベルトとショスタコーヴィチの曲のコンサートのアンコールでモーツアルトの曲を,しかも私の一番好きなK.488を聴くことができるとは思いもよりませんでした この日の公演はアンコールを含めて素晴らしいコンサートでした

コメント (2)
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