人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立オペラ、プッチーニ「トスカ」を観る~キャサリン・ネーグルスタッドのトスカ、ホルヘ・デ・レオンのカヴァラドッシ、クラウディオ・スグーラのスカルピア、ヴィオッティ✕東京フィルにブラボー!

2018年07月02日 08時08分43秒 | 日記

2日(月)。わが家に来てから今日で1369日目を迎え、細野豪志元環境相(無所属)が昨年秋の衆院選期間中に証券会社から5千万円を受け取っていた問題で、資金提供の時点で借用書が交わされていなかったことがわかった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      最初から返す気が無かったんだろうな 政治家っていい商売だよな 与党も野党も

 

         

 

昨日、初台の新国立劇場「オペラパレス」でプッチーニの歌劇「トスカ」を観ました 出演はトスカ=キャサリン・ネーグルスタッド、カヴァラドッシ=ホルヘ・デ・レオン、スカルピア=クラウディオ・スグ―ラ、アンジェロッティ=久保田真澄、スポレッタ=今尾滋、シャルローネ=大塚博章、堂守=志村文彦、羊飼い=前川依子。管弦楽=東京フィル、合唱=新国立劇場合唱団、TOKYO FM少年合唱団、指揮=ロレンツォ・ヴィオッティ、演出=アントネッロ・マダウ=ディアツです

 

     

 

舞台は1800年6月のオーストリア支配下のローマ。共和派の画家カヴァラドッシは、脱獄した友人のアンジェロッティを匿った罪で捕らえられる 彼の恋人トスカを我がものにしようと狙う警視総監スカルピアは、トスカに分かるようにカヴァラドッシを拷問し、彼の命を救う代償にその身体を要求する。トスカは取引に応じ、カヴァラドッシを形だけの死刑にするという約束を取り付け、2人の出国許可証を手にするが、偶然手にしたナイフでスカルピアを刺し殺す 明け方、城の屋上で見せかけのはずの銃殺刑が執行される

 

     

 

私が新国立オペラで「トスカ」を観るのは2003年、2009年、1012年、2015年に次いで今回が5回目です 演出・舞台はすべて同じアントネッロ・マダウ=ディアツによる極めてオーソドックスなものです ヒロインのトスカは、エリザベス・ホワイトハウス、イアーノ・タマ―、ノルマ・ファンティー二、マリア・ホセ・シーリと聴いてきましたが、これまでのマイ・ベストは2012年に歌ったノルマ・ファンティー二です 歌唱力・演技力ともに強烈な個性を持ったソプラノでした それ以来、彼女を超えることが出来るかどうかが「トスカ」を聴く基準になっています

スイス・ローザンヌ出身の若手指揮者ロレンツォ・ヴィオッティがオーケストラ・ピットに入り、3つの力強い和音から成る「スカルピアの動機」で全曲の幕が開きます この演奏を聴いて、この公演の成功を確信しました 何より音が良く鳴っています これがショボい音だとガックリします。一気にトスカの世界に引き込まれました

トスカを歌ったキャサリン・ネーグルスタッドはアメリカ出身のソプラノですが、2006年にドイツ芸術省から宮廷歌手の称号を授与されている実力者です トスカ役はウィーン国立歌劇場、パリ・オペラ座、ベルリン・ドイツ・オペラほか、世界中の歌劇場で歌い演じているということで、当たり役と言えるかも知れません 第2幕の有名なアリア「歌に生き、愛に生き」をドラマティックに歌い上げ大喝采を浴びました 同じ幕のスカルピアを刺し殺した後のシーンで、息絶えたスカルピアを見下ろして「死んでしまった。今はもう許してあげるわ」というモノローグは、いかにトスカがスカルピアに苦しめられてきたかを如実に表すドスの効いた声で、演技力抜群でした

カヴァラドッシを歌ったホルヘ・デ・レオンはスペインのカナリヤ諸島出身のテノールですが、前回(2015年)に続いての出演です 伸びのあるテノールで歌唱に無理がありません 第3幕でのアリア「星は光りぬ」は感動を呼びました

さて、今回 私が最も強く印象に残ったのはスカルピアを歌ったクラウディオ・スグ―ラです   ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、英国ロイヤルオペラなど世界のオペラ劇場で活躍し、2018/19シーズンにはスカルピア役で米メトロポリタン歌劇場にデビュー予定とのことです ふてぶてしい面構えからして”悪代官”スカルピアにピッタリで、力強く威圧感のあるバリトンは冷酷な性格のスカルピアに最適です

「トスカ」を観るたびに一番感動するのは第1幕のフィナーレです スカルピアが「お前の心の中に、スカルピアは根を下ろしたぞ! 行け、トスカ お前の嫉妬の鷹を飛び立たせたのはこのスカルピアだ。行け、トスカ」と歌う中、舞台が転換し、鐘やオルガンに伴われた三部合唱が「テ・デウム」を歌い上げてクライマックスに達しますが、このシーン(上のチラシの場面)の音楽を聴くたびに背筋が寒くなるほどの感動を覚えます

第2幕はスカルピアが夕食をとる場面で始まりますが、窓の外から「ガヴォット」(一種の舞曲)が聞こえてきます これを聴いたスカルピアは「下手くそな演奏だ!」と こき下ろしますが、この「ガヴォット」はプッチーニの弟ミケーレが書いた作品です したがって、プッチーニは「つまらない音楽だ」ではなく「下手くそな演奏だ」と言わせたのかも知れません

さて、オペラ「トスカ」を観ていて、一番分かりにくいのは 第2幕で スカルピアが部下のスポレッタに対し「カヴァラドッシを パルミエリ伯爵の時のように、偽の、見せかけの銃殺をするように」と命令しますが、この「パルミエリ伯爵の時」の銃殺がどのような方法かが分からないのです 今回の演出を注意深く見ていたら、聖アンジェロ城の屋上でカヴァラドッシが銃で撃たれて倒れたところに、一人の兵士が近づいて短銃でとどめを刺そうとすると、スポレッタがそれを引き止めるシーンがあります。これを見て「パルミエリ伯爵の時のように」というのは、「銃殺はするが、とどめは刺さない方法を取ること」ではないかと推測しますが、そのように気が付く人は少数かも知れません なぜなら「通常の銃殺」がどのようなものかを知らないので「パルミエリ伯爵の時の銃殺」がどのようなものかがイメージできないからです これについては、今年2月19日にMETライブビューイングの「トスカ」を観て初めて理解できました スコットランド生まれのデイヴィッド・マクヴィカーの演出による「トスカ」では、「通常の銃殺」を舞台上で再現させることによって、両者のどこがどう違うのかが可視化され、われわれが理解できるように工夫されているのです 興味のある向きは2月20日付のtoraブログをご覧ください。いずれにしても、スカルピアの言う「偽の、見せかけの」というのは真っ赤な嘘(それ自体が偽の、見せかけの言葉!)で、最初からカヴァラドッシを銃殺しようとしていたことには違いがないのです

今回のプルミエ(初日)公演で、歌手陣に劣らず大健闘だったのは若き指揮者ロレンツォ・ヴィオッティ指揮東京フィルです 歌手にぴったり寄り添いながら、歌うべきところはしっかりと歌い上げていました カーテンコールで歌手陣とともに満場の拍手とブラボーを浴びていたのは 十分頷けます

急病人が出て第2幕終了後に救急車で搬出され 第3幕が10分遅れての開始となるアクシデントがありましたが、オペラの方は初日から大成功裏に終わったと言うべきでしょう

 

     

コメント
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