10日(日).昨日,午後3時から文京シビックホールで小林研一郎指揮東京フィルの「響きの森クラシック・シリーズ」第40回公演,午後6時からサントリーホールで東京交響楽団の第601回定期演奏会をハシゴしました ここでは東京フィルの文京シビック公演の模様を書きます
「響きの森クラシック・シリーズ」の2012-2013年シーズンは全4公演を小林研一郎が指揮し,ベートーヴェンの交響曲を取りあげます 新年度第1回目の演奏曲目は①チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」(ヴァイオリン独奏:渡辺玲子),②ベートーヴェン「交響曲第6番”田園”」の2曲です
自席は前年度と同じ1階17列センターブロック通路側席です.コンサートマスターを務めるのは三浦章宏です
1曲目のチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」は,作曲者がわずか1か月足らずで書き上げました 当時ロシアの第一人者レオポルド・アウアーに初演を依頼したものの「演奏不能」と拒否されます それから3年後の1881年にアドルフ・ブロズキ―によってウィーンで初演されてから徐々に人気を博すようになりました.チャイコフスキーらしい民族色豊かな情熱的な曲です
指揮者・小林研一郎に伴われてソリストの渡辺玲子が薄い藤色のドレスで登場し,チャイコフスキーに臨みます 曲想に相応しく情熱的な演奏を展開します.渡辺は時々ヴァイオリンが休むところで,指揮台に置いたハンカチを手に取り,ヴァイオリンを拭き,額の汗をぬぐいます.折しも梅雨入り宣言が出たこの日は朝から小雨が降っていたので,湿度が高かったと思われます それに加えて天井から照らす照明のせいで舞台は高温になっていたでしょう.こういう悪条件の中でもプロは実力を発揮しなければなりません
渡辺はそうした悪条件をものともせず,ロシアの民族色豊かな偉大なコンチェルトに真正面から臨み,最終楽章フィナーレでは熱狂的に演奏を展開し,聴衆の圧倒的な拍手を浴びました 曲自体の魅力も大きいのですが,演奏の力も劣らず大きかったと思います
休憩後のベートーヴェン「交響曲第6番」は”田園”と呼ばれていますが.「運命」や「英雄」と違って,ベートーヴェン自身が命名した通称です この曲は当時の音楽界では革命的でした.それは①交響曲は4楽章から成るという常識を覆して5楽章の曲として作ったこと,②3楽章から5楽章までを続けて演奏するように作曲したこと,③「標題交響曲」の元祖的な存在となったこと・・・・等です
小林の指揮は,ゆったりと”タメ”をつくって演奏効果を上げるのが特徴ですが,この曲の演奏も例外ではありませんでした 今回驚いたのは,第1楽章と第4楽章で,普段聴こえないメロディーを聴くことができたことです.第1楽章では管楽器,第4楽章では第2ヴァイオリンによって演奏されました.この曲を何度聴いたか覚えていないくらい聴いていますが,新たな発見でした 隠れたメロディーを引き出したこの演奏で指揮者・小林研一郎を見直しました そして,やっぱり,ベートーヴェンは偉大です
演奏者で目立ったのは首席ヴィオラ奏者の須田祥子です.コンマスの三浦よりも椅子の高さを高く調節して,”弾き下ろす”と言うのが相応しいような,力一杯体当たりの演奏をしていました
終演後,拍手の中,小林は例によって各セクションごとに立たせて聴衆の拍手を求めます.いつも思うのは”やりすぎ”ということです またまた例によって,拍手を制して「皆さまのやさしいオーラを感じることができました.足元の悪い中,お越しいただきありがとうございました.アンコールにダニー・ボーイを演奏します」と”演説”して,弦楽器だけでダニー・ボーイを濃密に演奏しました
終演に当たって,指揮者とオーケストラが揃って頭を下げて,来場に対する感謝の態度を示しました これも小林研一郎の指示によるものと思われますが,なかなか印象がいいんじゃないでしょうか
このあと,地下鉄で溜池山王に向かい,6時からサントリーホールで開かれる東京交響楽団の定期演奏会に向かいましたが,その模様は明日のブログに書くことにします
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