11日(火).昨夕,東京文化会館で宮本文昭指揮オーケストラMAP'Sコンサートを聴きました オーケストラMAP'SはMiyamoto Artist PartnerS の略とのことで,都響,N響,神奈川フィルなどの首席奏者を中心に組織された臨時編成のオーケストラで,コンサートマスターは都響のコンマス・矢部達哉が務めます
プログラムは①モーツアルト「ディヴェルティメントK.137」,②同「セレナード第13番K.525”アイネ・クライネ・ナハトムジーク」,③グリーグ「組曲:ホルベアの時代より2曲」,④チャイコフスキー「弦楽セレナードハ長調」です
自席は1階L8列12番,左サイドの通路側です.会場は7割程度の入りでしょうか オーケストラの面々が登場します.男性陣は上下とも黒ですが上着なしのシャツ姿,女性陣はカラフルなドレス姿です
男女ほぼ半々の陣容で総勢31人の小編成です.顔を見て判るのはコンマスの矢部達哉と戸上真里(東京フィル・第2ヴァイオリン首席),柳瀬省太(神奈川フィル首席ヴィオラ)の3人くらいです
黒の上下の宮本文昭が登場し,1曲目のモーツアルト「ディヴェルティメントK.137」をタクトなしで開始します.この人の指揮を見るのは初めてですが,一言でいうと ました.まるでヒップホップを踊っているような,よく動き回る指揮ぶりです
指揮台なしで指揮をする理由が分ります.もし指揮台の上で同じ指揮をしたら,いつか転げ落ちているでしょう
指揮の系譜からすると,一昔前の山田一雄(指揮台の上でジャンプしていた),先輩格の井上道義(指揮をしながらバレエを踊っている)の流れを汲む人かもしれません ただし,オーケストラから出てくる音は何とも素晴らしくテンポ感も良いと思いました
K.137が終わると,「出没!アド街ック天国」でお馴染みの山田五郎と,「ららら♪クラシック」でお馴染みの野本由紀夫・玉川大学教授の二人が舞台に登場,宮本を交えてトークが始まりました
山田五郎は1958年生まれですが,上智大学文学部在学中にオーストリアのザルツブルク大学に1年間遊学して西洋美術史を学んだそうです(会場:へーぇ!).その当時,ザルツブルクには96人の日本人が居たそうで,そのうち92人が音楽関係者(学生など)で,音楽家でない自分は汚い物でも見るように見下されていたそうです(会場:カワイソー!).音楽関係者と知り合いであることはステータスが高いということで,とくにハープ奏者は高値の華だったそうです
その話を隣で聴いていた野本教授が「何しろハープは1台2000万円位しますからね ハープを弾く女性はお嬢さんなのですよ
」とツッコミを入れていました.
次に演奏するモーツアルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」について野本教授が,
「この”アイネ・クライネ・・・・・”というのは曲名ではないのです.モーツアルトは自分で作曲した曲を作品目録に残していましたが,”小さな夜想曲”と曲の紹介を書いたものが曲名のように呼ばれるようになったのです 実は,この曲が世界的に有名になったのは1930年代にSPレコードが発明されてからです.SPレコードに片面に1楽章づつ入れると2枚に収まるというので,当時はベートーヴェンの交響曲第5番”運命”とともに最も売れたSPレコードだったのです
」
と解説,会場から「ホー,さすがは大学教授」の声なき声が・・・・・・本当にためになります.そして二人は宮本から今度は客席で聴いてほしいと頼まれて,舞台を降りて前から2列目の左サイドの席に座りました
演奏終了後,感想を求められた山田は「前の方の端の席で聴きましたが,会場の真ん中で聴いているように感じました」と答えていました.これには,同感です
私も久しぶりに東京文化会館大ホールで,いつもと違って左サイドの席で聴きましたが,音響効果が優れたホールだと再認識しました
どこの席で聴いてもそれなりに満足のいく音が聴こえるのです
休憩後,二人は宮本から「女性奏者の背中の筋肉の動きがよく見えますよ」との誘い文句に乗せられて,舞台上の第1ヴァイオリンの後ろ側の特別イスで聴くことになりました.グリーグの組曲「ホルベアの時代より」第1曲「プレリュード」,第4曲「アリア」が演奏されました
演奏後,感想を求められた山田は「ヴァイオリンの人の演奏を聴いていましたが,よく自分が出している音を見失わないな,と感心しました アマオケなどで演奏していると,音程やテンポなど自分が正しく演奏しているのか判らなくなることがあります
その点,みなさんはしっかりと自分の出している音を把握していらっしゃると思いました
」と答えていました.うん,そうなのか,プロでもそうなんだろうな・・・・
今度は山田がコンマスの矢部に「指揮者としての宮本さんはどうですか?」とタブーの質問をしました.矢部は「宮本さんは世界一のオーボエ奏者として活躍してこられ,私も何度も素晴らしい演奏に接してきた.その音楽性を生かした指揮振りだと思います.われわれ演奏者は必ずしも常に指揮者を見て演奏しているワケではありませんが(会場・笑),心で感じて演奏しています.優等生的な答えで申し訳ありません(会場・笑)」と答えて,指揮者の苦笑をかっていました
最後のチャイコフスキー「弦楽セレナード」の演奏に移りましたが,厚みのある演奏で,たったの31人で演奏しているとは思えないほど迫力があり,個々人の力の大きさを感じました
気をよくした指揮者はアンコールにレスピーギ「リュートのための古風な舞曲とアリア」からと,モーツアルト「ディヴェルティメントK.136」第3楽章「プレスト」を颯爽と演奏しました
ところで,プログラムに挟み込まれていた主催者のアンケートの「好きなジャンルを教えてください」の選択肢の中に「歌謡曲(男性・女性)」という項目がありました これは,一般のクラシック・コンサートのアンケートの中にはないものです.主催者はMIN-ONとなっていました.昔”民音”と呼ばれていた組織ですよね.どうやら幅広いジャンルの音楽を手がけているようです
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