14日(土).10日に初めてお会いした当ブログ愛読者Nさんからメールが届きました フィラデルフィアの自宅に戻って11日付の当ブログをご覧になったとのことで,ご自宅近くのカーティス音楽院の近況について詳細に書かれていました 以下にNさんからのレポートを転載させていただきます
「カーティス音楽院は,ピアノは中国が,コントラバスを除く弦楽器は韓国勢が多く占めています 一昨年は定員10名前後のヴァイオリンの席に韓国から250名以上の志願者がいたとのことです カーティスは寄付によって成り立っており,学費が無料です.入学時の年齢が21歳以下(下限がないのでピーター・ゼルキンはかなり小さいころに入っている?)と決められているので,天才少年・少女(ランラン,サラチャン,ヒラリー・ハーン等)もたくさんいます」
よく音楽関係の学校のことをご存知だなあと感心していたら,次のような文面が続いていました.
「実は息子が,カーティス,ジュリアードほどの知名度はないのですが,音楽の教育関係者が多いオーバリン大学という学校に今秋,進学予定です ここも大学部はアメリカ人が多いのに,音楽部とくに子供のころからハードな練習を要する弦楽器とピアノは,韓中(とそれらの国の移民2世)が占めています.それにもかかわらず,オーケストラのお客さんは,やはり熟年世代以上の白人がほとんどです このまま,アジア系演奏者の比率が進むと彼らはどう思うのでしょうか 寄付に反映してくるのか興味があるところです」
アジア勢恐るべしですね そんな中でも寄付を続けているアメリカの市民の皆さんの心の広さを感じます でも,これ以上続くとどうなのかと言われれば,どうなんでしょうね?・・・・・・・・第2のヴァン・クライヴァーン現われよと祈るばかりでしょうか・・・・・それにしても,ご子息が音楽関係の大学に進まれるとは驚きました N家は音楽一家なのでしょうか?ご子息には韓中の諸君に負けずに頑張っていただきたいと思います
閑話休題
昨日休暇が取れたので,すみだトりフォニーホールに新日本フィル「新クラシックへの扉シリーズ」を聴きに行きました プログラムは①チャイコフスキー「バレエ組曲:眠りの森の美女」,②同「交響曲第6番ロ短調”悲愴”」の2曲.指揮は三ツ橋敬子,コンサートマスターは崔文殊です
平日の午後2時だというのに会場のトりフォニーホールはほぼ満席 察するところ地元のお年寄りが多いようです.ほとんど当日券に近い状態でチケットを手配したため通路側席が取れず,1階27列22番と,かなり後方の通路から3番目の席になりました
舞台に登場した三ツ橋敬子は2010年のトスカニーニ国際指揮者コンクール準優勝と聴衆賞を受賞した実力者です いつものように髪を後ろで束ね,黒のスーツで颯爽と登場します 小柄な彼女は,まるで宝塚歌劇出身かと思われる先輩指揮者・西本智実とはまた違った魅力があります
1曲目のバレエ組曲「眠りの森の美女」は,チャイコフスキーが自ら作曲したバレエ音楽「眠りの森の美女」から5曲を選んで組曲にしたものです
序奏の「リラの精」に続いて,第2曲「アダージョ」はハープの美しいメロディーから始まるオーロラ姫の優雅な踊りです.篠崎和子のハープが美しく奏でられます 第3曲「性格的な踊り」,第4曲「パノラマ」に続いて第5曲「ワルツ」では舞踏会で踊る若者たちのダンス音楽が優雅に展開します
2曲目の交響曲第6番ロ短調”悲愴”は,1893年10月16日に初演されましたが,そのわずか9日後に,チャイコフスキーは不慮の病で死去しました この曲を作曲した時,彼は親しい皇族に「この終楽章はレクイエムである」というメッセージを送ったと言われています
第1楽章はコントラバスの重低音に乗ってファゴットがテーマの断片を奏でます.有名なテーマが現われる直前,三ツ橋は長い”間”を取りました.暗い曲想が続きますが,途中で突然,オーケストラが嵐のような咆哮をはじめ,寝ていた人はビクッと起こされます
第2楽章ではワルツのような優雅な音楽が続きます.そして,第3楽章に入るとまるで”行進曲”です最初は静かに始まりますが,徐々に音量が拡大してテンポが速くなり,”悲愴”の気分を蹴散らしていきます
この楽章の終わりが近づいてきた時,私は一つの不安を抱いていました 音楽の好きな方ならすぐに思いつくでしょう.そう,この楽章「アレグロ・モルト・ヴィバーチェ」は勇壮なフィナーレで終わります.この曲を聴いたことのない人は,これでこの曲が終わったと勘違いして,拍手をするのではないか・・・・・という不安です
その不安は見事に的中しました 第3楽章の演奏が終わるや否や,会場のそこかしこで”ブラボー”と拍手が巻き起こったのです.立ち上がって拍手をしている人もいます.私の両隣の女性も,つられて拍手をしています.”あー,やっちまった~”
さすが,三ツ橋敬子は後ろを振り向くこともなく,慌てず騒がず,しばらくタクトを下ろしたままたたずみ,頃合いを見計らっておもむろにタクトを上げて第4楽章の演奏に入りました
実は私は,第3楽章までは三ツ橋敬子でなくても,だれが演奏しても同じじゃん,と思っていたのですが,ここからが彼女の本領発揮でした 第4楽章に入って,深い嘆息,瞬間的な希望,運命の一撃,悲劇のどん底へ・・・・と曲想を変え,最後は第1楽章冒頭と同じように,コントラバスだけの重低音で終わっていく一連の物語を見事に音にして表現しました
アンコールにチャイコフスキーの歌劇「エフゲニー・オネーギン」から「ポロネーズ」を優雅かつ勇壮に演奏し聴衆の喝さいに応えました
私は新日フィルと室内楽のファンなので、とら様のブログをいつも楽しく拝見しています。今後も楽しみにしております!
その上で,ひとこと言いたいのは,少なくともプログラムが配られているのですから,”悲愴”交響曲は4つの楽章から成り立っているということくらい”予習”しておいて欲しいということです 演奏する側の集中力を奪うようなことがあってはならないと思うのです コメントをいただくと励みになります.また感想などお寄せください.お待ちしております
それにしても三ツ橋さんは魅力ありますよね。またぜひ聴きたいです~~~
8月10,11日の萩原麻未(Pf)と来年3月8,9日のシン・ヒョンス(Vn)は聞き逃したら絶対に損します