人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「エンジョイ!ウィークエンド・スペシャル・ナイト」を聴く~サントリーホール「ブルーローズ」

2015年06月20日 08時44分35秒 | 日記

20日(土).わが家に来てから254日目を迎え,思索にふけるモコタロです 

 

          

         

  閑話休題  

 

昨夕,サントリーホール”ブルーローズ”で「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン」の「スペシャル・ナイト」公演を聴きました 開演は午後8時.かなり遅いスタートです 同じ会場で前の公演が終了するのが午後3時半なので,会場整備の時間を考慮しても午後7時の開演は余裕だと思うのですが,どうでしょうか?「そんなこと分かったうえでチケットを買ったはずだろう」と言われればその通りですが,ちょっと遅すぎるような気がします

と思って食事をしてから,1時間前の7時に着くとホワイエがかなり賑わっています 大ホールの公演がないのにこんなに多くの人が・・・・と思ってチケットをよく見ると「ワン・ドリンク付」と書かれていました 入口でパンフレットと一緒に「ドリンク券」を配っていました.私はこの公演のチケットを「早割」で取ったので1,500円.ワン・ドリンク付ということは400円を引いて1,100円で1時間半のコンサートが聴けるということです これなら午後8時の開演も文句は言えないな,と思い直しました

早速ホット・コーヒーを注文しているとロビーの方からアナウンスが流れてきました.「これからロビー・コンサートを始めます」と言っているようです 掲示を見ると「ロビー演奏」のプログラムが表示されていました.レスパス弦楽四重奏団の若い4人が大ホール中央の5番扉の前にスタンバイして,早速演奏に入りました 演奏曲目を簡単に解説してから演奏するスタイルを取りました 2曲目のシベリウスは過日,フィンランドの指揮者リントゥ氏の記者会見の時に都響メンバーが演奏した曲です.短い曲ですが良い曲です 多くの人々がドリンク片手に耳を傾けていました.いいですね,こういう企画は

 

          

 

さて,本番のプログラムは①ラヴェル「弦楽四重奏曲ヘ長調」から第1楽章、第4楽章、②リスト「ラ・カンパネラ」、③モリコーネ「映画”海の上のピアニスト”から”愛を奏でて”」、④ニーノ・ロータ「映画”ロミオとジュリエット”」から、⑤ヘンリー・マンシー二「ムーン・リバー」(以上、ピアノ=若林顕)、⑥小松亮太「風の詩~THE 世界遺産」、⑦ピアソラ「ファイブ・タンゴ・センセーションズ」から「3.不安」「5.恐怖」、⑧同「オブリヴィオン」、⑨同「ブエノスアイレスの冬」、⑩同「リベルタンゴ」(以上、バンドネオン=小松亮太、弦楽四重奏=クアルテット・エクセルシオ)です

 

          

 

自席はC7列1番,センターブロック左通路側席です.会場はほぼ満席 クァルテット・エクセルシオのメンバーが登場します.現在,第1ヴァイオリンの西野ゆかが療養中のため花田和加子が代演します.この人,プロフィールによると英国オックスフォード大学音楽学部卒業と書かれていますが,オックスフォード大学に音楽学部があるのが意外です

最初の曲,ラヴェル「弦楽四重奏曲ヘ長調」から第1楽章と第4楽章が色彩感豊かに演奏されます 次いで,グランド・ピアノがステージ中央に運ばれて若林顕が登場,リスト「ラ・カンパネラ」を,そして映画音楽を3曲~モリコーネ「海の上のピアニスト」から「愛を奏でて」,二―ノ・ロータ「ロミオとジュリエット」からの音楽,ヘンリー・マンシー二「ムーン・リバー」をロマンティックに演奏しました

そして,バンドネオンの小松亮太が登場すると大きな拍手が起こりました この人,相当人気があります.出て来るなりマイクを片手に

「よく誤解されるのですが,バンドネオンは両サイドにボタンばっかり付いているアコーディオンだと思っている人が多くいます バンドネオンとアコーディオンはまったく違います バンドネオンはバンドネオンでしかないのです バンドネオンの特徴は①長いこと(と言って広げて見せる),②両サイドが正方形なこと(なるほど長方形ではない),③音色です ここにアコーディオンがないので聴き比べができませんが,まったく違います

と解説します.クァルテット・エクセルシオが加わり,小松亮太作曲による「風の詩~THE世界遺産」を演奏しました これはTBSの日曜夜に放映されている(らしい)テレビ番組のテーマ音楽だそうです

次にピアソラの「ファイブ・タンゴ・センセーションズ」から「不安」と「恐怖」をエクセルシオとともに演奏,会場一杯の拍手を受けます 再度マイクを握り

「大友さん,サントリー音楽賞の受賞おめでとうございます

と大友を立てますが,山田百子から「それ,違いますよ!」と耳打ちされ,

「齋藤秀雄メモリアル基金賞でした.最初の”サ”しか合ってませんでした

と訂正,

「昔はいろいろありまして,お金がなくて困ってました 大友さんが無償で出演してくれたりして助けてもらいました・・・・大友さんがいなかったら今の自分はなかったです.いや,ホントの話

とあらためて過去の秘話を披瀝しました.そして「オブリヴィオン」,「ブエノスアイレスの冬」を演奏 その後,

「いよいよ最後の曲になってしまいました.次はあまりにも有名なあの曲です

と言って「リベルタンゴ」をノリノリで演奏しました 大友のチェロが唸ります 花田,山田のヴァイオリン,吉田のヴィオラが刻みます コマツのバンドネオンが叫びます 見事な演奏でした.会場は興奮の坩堝です

カーテンコールが繰り返され,会場は拍手が鳴り止みません.最初バラバラだった拍手が,いつの間にかザッ,ザッ,ザッとリズミカルな「アンコール期待」の手拍子に変わりました   すると,小松が再度バンドネオンを持って登場,

「正直言ってもうやるのもがありません 今まで演奏したどの曲をもう一度やるか,という選択です オブリヴィオンで良いですか?」

とエクセルシオに同意を求めます.会場は大拍手です その線で一致をみた5人は「オブリヴィオン」をアンコール演奏し拍手喝さいを浴びました

実に楽しいコンサートでした この公演はクラシックから少し離れ,気軽に音楽を楽しめる好企画でした.来年も是非続けてほしいと思います

 

          

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ミロ・クァルテットでベートーヴェン「弦楽四重奏曲第15番,第13番(大フーガ付)」を聴く

2015年06月19日 07時01分32秒 | 日記

19日(金).名古屋の出張から帰った娘の”おみや”はウイロウです 暇つぶしにひつまぶしを食べたいと思っていましたが,外れました 名古屋だけにこれで期待はオワリです

 

          

 

ということで,わが家に来てから253日目を迎え,大きな手に遭遇して戸惑うモコタロです 

 

          

            誰か手を落としていかなかった? なに,手違いだって?

 

   閑話休題  

 

昨夕,サントリーホール”ブルーローズ”でミロ・クァルテットの「ベートーヴェン・サイクルⅣ」を聴きました プログラムはベートーヴェンの「弦楽四重奏曲第15番イ短調」と「同第13番変ロ長調(大フーガ付)」です.これは「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン2015」の一環として開かれた「ベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会」の第4夜のコンサートです

 

          

 

自席はRb2列6番,会場はほぼ満席です このシリーズはベートーヴェンの弦楽四重奏曲を作品番号順ではなく,実際の作曲順に演奏するもので,この日は最初に第15番イ短調・作品132番を,後から第13番変ロ長調・作品130番を演奏します さらに付け加えれば,第13番には2つの第6楽章が存在しますが,ベートーヴェンが最初に作曲した”大フーガ”を置いたオリジナル・バージョンで演奏します

 

          

 

拍手の中,ミロ・クァルテットのメンバーが登場します 第15番は第12番までの4楽章形式から離れ,5つの楽章から成ります.演奏時間にして約50分かかる大作です この中で最も印象的なのは第3楽章「モルト・アダージョ」です.この楽章はベートーヴェン自身の言葉によって「病より癒えたる者への神への聖なる感謝の歌」と表現されています ベートーヴェンは当時,一時死を覚悟するほどの腸炎に罹っていました 同時期に,18歳になる甥のカールを巡る家庭問題も抱えていてストレスは極限に達していました それにも関わらず,彼は一時的に回復した際に,神への感謝の音楽を作ったのでしょう ミロ・クァルテットは神への感謝の気持ちを切々と歌い上げます

休憩後は第13番「大フーガ付」です.この作品もそれまでの作品と違い6つの楽章から成ります 第2楽章「プレスト」などはたったの3分足らずの曲で,数あるベートーヴェンの作品の中で最も短い楽章です 初期の弦楽四重奏曲なら1曲まるまる収まる演奏時間です.反対に第6楽章の「大フーガ」などは20分もかかる大作です 誤解を恐れずに言えば,この曲はバラエティーに富んでいて実に楽しい曲です 私が好きなのは後半の3つの楽章です.第4楽章は楽しい舞曲で,微笑ましいチャーミングな曲です 第5楽章の「カヴァティーナ」はベートーヴェン自身もお気に入りだったようですが,第15番第3楽章「モルト・アダージョ」と相通じる性格を持った「神への感謝の歌」といった穏やかで神々しい曲想です

あらためて最後の「大フーガ」を聴いて感じたのは,顰め面をしたベートーヴェンばかりではなく,まるでジャズのような曲想が顔を出したりして”多面的な”ベートーヴェンが詰まっているということです 先日も書きましたが,ベートーヴェンの音楽の特徴は”多面性”ではないか,と思います.ミロ・クァルテットの面々はその魅力を十分に引き出していました この作品も約50分かかる大作ですが,まったく飽きません.それは作品に力があるからであると同時に,演奏が素晴らしいからです

ミロ・クァルテットのベートーヴェン・サイクルもあと1回を残すのみとなりました 第14番作品131,第16番作品135,そして「大フーガ」の代わりに作曲された第13番の第6楽章です これらの作品は20日(土)午後7時から演奏されます.楽しみです

 

          

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ジェフリー・アーチャー「追風に帆を上げよ(上)」を読む~007よりも面白い!

2015年06月18日 07時02分22秒 | 日記

18日(木).昨日、当ビル10階ホールで当社の定時株主総会が開かれました 役員の一部変更に伴って当社の態勢が変わり、新しい仲間が入社してきたので、夕刻、新橋の中華料理店で”新人歓迎会”が開かれました ビールと紹興酒と日本酒(持ち込み)をしこたま飲んで,その後,有志4人で六本木のカラオケ・スナックに行ってウイスキー・グラスを片手にそれぞれの持ち歌を歌いました 中には青森生まれだと言って「津軽海峡冬景色」を歌いながら,次の曲では,実は六本木生まれだと言って,六本木にまつわる歌を歌う多国籍歌手が約1名いましたが,無視して次に歌う持ち歌の選曲に専念することにしました ということで、わが家に来てから252日目を迎え、おねーちゃんに抱っこされてくつろぐネザーランド・ドワーフのモコタロです 

 

          

           アップに耐える顔とは ぼくのことかな・・・・・なに 耳がないって? てぇへんだ!

 

  閑話休題  

 

ジェフリー・アーチャー著「追風に帆を上げよ(上)」(新潮文庫)を読み終わりました 前巻「裁きの鐘は(上・下)」では,ハリーとエマの息子セバスチャンが,交通事故と見せかけた陰謀によって死亡したらしいというところで終わっています

ハリーとエマは失意のもと,病院に駈け付けるが遺体はセバスチャンのものではなかった 宿敵マルティネスの息子ブルーノは彼の友だちだったが,マルティネスは予想外の出来事で息子がセバスチャンとともにその車に乗っていることを知らずに,複数の車を使い事故を起こすように仕掛けて,結果的に自分の息子の命を奪ってしまった バリントン家とクリフトン家の破滅だけが生きがいのマルティネスは,ますます復讐心を燃やし,彼らを陥れることを企む 彼の意を汲んだフィッシャーは株の取得を背景にバリントン海運の役員として送り込まれマルティネスのために暗躍する 一大事業である豪華客船の建造が進む中,養女として育ててきたセバスチャンの妹ジェシカの身に思わぬ不幸がもたらされる

この物語,いつまで続くのかは分かりませんが,とにかく面白くて読む手が止まりません 危機一髪でかろうじて難を逃れるという手法は007ジェームス・ボンド並みですが,007は単発でその都度完結してしまうのに対し,このシリーズは世代を繋いで続いていきます 取りあえず下巻が楽しみです

 

          

 

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川瀬賢太郎+読響でオール・モーツアルト・プログラムを聴く~読響アンサンブル

2015年06月17日 07時01分15秒 | 日記

17日(水).わが家に来てから251日目を迎え、何にでも興味を抱くモコタロです 

 

          

              こんなの食べて お腹がコショウしないかなぁ

 

  閑話休題  

 

昨夕,よみうり大手町ホールで「読響アンサンブル・シリーズ」公演を聴きました 今年度からこのシリーズの定期会員になりました プログラムはモーツアルトの①歌劇『フィガロの結婚』序曲,②ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216,③交響曲第41番ハ長調K.551”ジュピター”です.②のヴァイオリン独奏はアレクサンダー・シコトヴェツキ―、指揮は神奈川フィルの常任指揮者・川瀬賢太郎です

 

          

 

このシリーズ,どういう訳か開演が午後7時半と遅いのです 忙しいサラリーマンに配慮しているのかも知れませんが,満席の会場を見渡す限りシニア世代が圧倒的に多いのは他のコンサートと変わりません もっとも7時からは指揮者によるプレトークがあるので,その時間を計算に入れているのかも知れませんが,個人的にはそれを早めて午後7時からの演奏開始にしてほしいと思います

オケの面々が登場しスタンバイします.総勢40人位でしょうか.コンマスは小森谷巧,チェロにはソロ・チェロの毛利伯郎,ヴィオラにはソロ・ヴィオラの柳瀬省太が控えています オーボエ首席の蠣崎耕三に合わせてチューニングが行われ,指揮者を待ちます

今年31歳を迎える川瀬賢太郎が威勢よく登場し1曲目の歌劇「フィガロの結婚」序曲の演奏に入ります 川瀬は指揮棒なしで指示を出します.モーツアルトの歌劇の序曲には適切なテンポがありますが,川瀬はまさにその軽快なテンポでメリハリを付けて音楽を進めます

2曲目はヴァイオリン協奏曲第3番です.指揮者とともにソリストのアレクサンダー・シトコヴェツキーが登場します 名前からして仕事好き~な感じを受けますが,名ヴァイオリニスト,ユーディ・メニューインに見出されたロシアが誇るヴァイオリニストです 彼に対しては顰め面をしたバッハ弾きといったイメージがありましたが,舞台に現われた彼は愛想のよさそうな優しい顔をしていました 早速演奏に入りますが,厳粛なバッハのイメージから離れた軽快な演奏を展開します オーボエの蠣崎耕三をはじめ管楽器群のソロが美しく奏でられ,シトコヴェツキーのソロを支えます

会場一杯の拍手に応え,日本語で「アリガトゴザイマス」と言って,バッハの「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番」から「サラバンド」を静かに,鮮やかに演奏しました.やはりバッハです

前半の演奏が終わり立ち上がろうとした時,会場にアナウンスが流れました

「ただ今から開演でございます.お早めにお席に・・・・・・・」

休憩のため席を立とうとした聴衆は一瞬???と首をかしげましたが,すぐに

「ただ今から休憩時間となります」

と正しいアナウンスが入ったので会場に笑いの輪が広がりました   これで,アナウンスは生ではなく録音ボタンを押していることが分かりました それにしても,よみうりホールは聴衆を飽きさせないように色々と工夫を凝らしてくれます.そのサービス精神は見上げたものです

休憩が終わり自席に着くと,なんとシトコヴェツキーがヴァイオリン・ケースを抱えて自席の斜め前の席に着いたのです.これには驚きました

 

          

 

3曲目はモーツアルトの最後の交響曲”ジュピター”です 川瀬はここでもメリハリの効いた起伏の激しい音楽作りをします.ティンパ二の強打が効果的で,演奏にアクセントを与えます 川瀬は右を向いたり左を見たり,時に指揮台の上で飛び上がったり,「ファイト一発!リポビタンC」「元気溌剌!オロナミンD」といった,ひと時もじっとしていない指揮ぶりです 勘違いしないでいただきたいのですが,私は彼の指揮を批判しているのではありません.身体全体を使って思うところをオケに伝えるのは良いことです 若いのに老成した指揮をするような指揮者よりもずっと好感が持てます 若い時には若いなりの指揮をすれば良いのです

読響の面々は川瀬の忙しい指揮によく付いて行っていました 第41番”ジュピター”の,とくに第4楽章のフーガは素晴らしい音楽ですが,会場が500席の小ホールであることもあり,迫力満点の演奏を楽しめました

 

          

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クス・クァルテットでメンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲第2番」「弦楽四重奏曲第6番」他を聴く

2015年06月16日 07時02分09秒 | 日記

16日(火).わが家に来てから250日目を迎え,一杯ひっかけてほろ酔い気分のモコタロです 

 

          

           何言ってんだい 真昼間から酒なんて飲めるわけないじゃん

 

  閑話休題  

 

ウィーン・フィルのコンマス,ライナー・キュッヒル氏が朝日夕刊のコラム「人生の贈りもの わたしの半生」で”別格の指揮者”カルロス・クライバーの思い出を語っています 面白いエピソードを抜き出してみると

「彼はとても不思議な人でした.クライバーと親しい人から聞いた話ですが,彼は待ち合わせ場所に一番乗りしないといけないそうです 彼より先に着いては絶対にだめ.だから,ウィーン楽友協会で彼と初めて待ち合わせをしたとき,私は早めに行って,建物の角からずっと入口を見張っていました そして,彼が入るのを見届けてから入ったんです.ちなみに初対面の言葉は何だと思います?これは絶対に当てられないはず.だって,「すしの盛り合わせ」ですよ.頭の中が突然,おすしのことでいっぱいになってしまったようで,おすしの話が始まりました

とにかくクライバーという指揮者は変わり者だったようで,とんでもないエピソードが沢山あります ところで長い間クラシック音楽を聴いてきた私の唯一の自慢は,カラヤン指揮ベルリン・フィルを聴いたことでもなく,カール・ベーム指揮ウィーン・フィルを聴いたことでもなく(両方とも聴きましたが),カルロス・クライバー指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団を聴いたことです(1986年5月.神奈川県民ホール).その時のプログラムはベートーヴェンの交響曲第4番と第7番というこれ以上願ってもないクライバーの得意中の得意の曲目でした もちろん,第4も第7もエキサイティングな演奏でしたが,アンコールに演奏されたヨハン・シュトラウス2世のポルカ「雷鳴と電光」の華麗な指揮とその時の興奮を忘れることが出来ません まさにカリスマ指揮者による”神が降りた”演奏でした

 

  も一度,閑話休題  

 

14日(日)午後2時からサントリーホール”ブルーローズ”で,「サントリーホール室内楽アカデミー・ゲストコンサート」を聴きました この公演は「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン2015」の一環として開かれたもので,ベルリンに拠点を置くクス・クァルテットとアカデミーの選抜奏者が演奏します プログラムは①メンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲第2番ハ短調」,②同「弦楽四重奏曲第6番ヘ短調」,③チャイコフスキー「弦楽六重奏曲ニ短調”フィレンツェの思い出”」です

 

          

 

先週は毎日コンサートがあり予習の時間が取れなかったため,当日の午前,急きょCDで予習をしました メンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲第2番」は,ピアノ=エマニュエル・アックス,ヴァイオリン=イツァーク・パールマン,チェロ=ヨーヨー・マの演奏です

 

          

        

メンデルスゾーン「弦楽四重奏曲第6番」は,お気に入りのパシフィカ・クァルテットの演奏です

 

          

 

自席はC6列1番,センターブロック左通路側です.会場はほぼ満席 最初にアルク・トリオが登場します.このトリオは2012年サントリーホール室内楽アカデミー第1期生によって結成されたピアノ三重奏団です ヴァイオリンは前日,文京シビック”響きの森”シリーズ公演で東京フィルのコンマスを務めた依田真宣,ピアノは東京藝大卒の小澤佳永,チェロは同じく東京藝大卒の山本直輝です

メンデルスゾーンは習作を含めて3曲のピアノ三重奏曲を作曲していますが,この日演奏する第2番は1845年の作品です.メンデルスゾーンは1847年に38歳の若さで亡くなっているので,死の2年前の作品ということになります

第1楽章の冒頭から悲劇的な様相を帯びたメロディーが展開します.これは第1番ニ短調の三重奏曲と曲想が共通しています 一言で言えば哀しみが疾走しています それでも最後の第4楽章では悲壮感よりも情熱が勝って,感動的に曲を閉じます 3人はなかなかの熱演を展開し満場の拍手を集めていました

2曲目の弦楽四重奏曲第6番ヘ短調は弦楽四重奏曲としては最後の作品で,死の年,1847年に作曲されました 最愛の姉ファニーを亡くし,自分自身も体調がすぐれなかった時期で,そんな暗い気持ちが曲に表れています

拍手に迎えられてクス・クァルテットが登場します.1991年に結成されました メンバーは第1ヴァイオリン=ヤーナ・クス(女性),第2ヴァイオリン=オリヴァー・ヴィレ,ヴィオラ=ウィリアム・コールマン,チェロ=ミカエル・ハクナザりアンという面々です

第1楽章冒頭は,何かに追いかけられているような切迫感があります まるでシューベルトが”魔王”で描いた死の予感のような感覚を受けます.第2楽章のスケルツォ的な曲想を経て,第3楽章アダージョに入りますが,この四重奏団は音が非常に美しいと思いました とくにヴァイオリンの2人(共に創設メンバー)が素晴らしい

第4楽章に入ると,ほとんどメンデルスゾーンは嘆いています 慟哭の音楽と言っても過言ではありません.聴いていて辛い思いがします.なにしろ,メンデルスゾーンはこの年に天国に召されたのですから

4人は美しい音色で素晴らしい演奏を展開しました.やっぱりドイツ系のクァルテットはいいな,とあらためて思いました

 

          

 

休憩後はクス・クァルテットにヴィオラの福井萌とチェロの増山頌子が加わり,チャイコフスキーの「弦楽六重奏曲ニ短調”フィレンツェの思い出”」が演奏されます クス・クァルテットのヴィオラとチェロの間に福井と増山が挟まれる態勢をとります

この曲はヴァイオリン,ヴィオラ,チェロが各2本という編成による六重奏曲ですが,作曲者がイタリアのフィレンツェを訪問した時に作曲されました 第1楽章は序奏なしにいきなり第1主題に入り,否が応でも燦々と輝くイタリアの世界に引きずり込みます クスは最初からグングン他のメンバーを引っ張ります.聴こえてくる音楽はあくまでも美しく,流れるようなメロディーを紡いでいきます 第2楽章はピチカートに乗ってヴァイオリンがセレナード風のメロディーを奏で,ヴィオラに,そして間を置いてチェロに引き継ぎます このクァルテットの真骨頂というべき演奏です.日本の若者たちも違和感なく溶け込んでいます

第3楽章は軽快なロシア民謡風の音楽が聴かれます イタリアとロシアの融合と言ったら良いでしょうか・・・・そして第4楽章に入りますが,ロシア民謡風の音楽の雰囲気が続いています.明るく楽しい音楽でフィナーレを迎えます.素晴らしい演奏でした

クス・クァルテットは音の美しさでは,あるいはミロ・クァルテットを上回っているかも知れません 彼らの演奏でベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を聴いてみたいという思いに捉われました 来年の「ベートーヴェン・サイクル」はクス・クァルテットで良いのではなか,と思ってプログラムの「予告」を見ると,来年の出演予定者にキュッヒル・クァルテットの名前がありました.ウィーン・フィルのコンマスを”卒業”するキュッヒルの再登場だったら文句なしですが,いつかはクス・クァルテットでやって欲しいと思います もう一組挙げればパシフィカ・クァルテットで,もう一度ベートーヴェンを全曲演奏してほしいと思います

6月14日に聴いたこのコンサートは、今年聴いたちょうど100回目のコンサートでした

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ミロ・クァルテットでベートーヴェンの弦楽四重奏曲「ハープ」「セリオーソ」「第12番」を聴く

2015年06月15日 07時01分06秒 | 日記

15日(月).わが家に来てから249日目を迎え,白ウサちゃんを奪い返そうとするモコタロです 

 

          

           白ウサちゃんはオレのガールフレンドなんだ 返してよ!

 

  閑話休題  

 

13日(土)は午後3時から文京シビックホールで「響きの森クラシック・シリーズ」公演を聴いた後,夕食を取り,午後7時からサントリーホール”ブルーローズ”で「ミロ・クァルテット ベートーヴェン・サイクルⅢ」公演を聴きました 昨日「響きの森」について書いたので,今日はミロ・クァルテットの公演の模様を書きます

これは「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン2015」の一環として開かれたもので,ミロ・クァルテットによるベートーヴェン「弦楽四重奏曲全曲演奏会」の第3日目の公演です プログラムは弦楽四重奏曲①第10番変ホ長調「ハープ」,②第11番ヘ短調「セリオーソ」,③第12番変ホ長調です

 

          

 

自席はRb2列6番,会場はほぼ満席です 拍手の中,ミロ・クァルテットのメンバーが登場します.左から第1ヴァイオリンのダニエル・チン,第2ヴァイオリンのウィリアム・フェドケンホイヤー,チェロのジョシュア・ジンデル,ヴィオラのジョン・ラジェスです この日がシリーズ3回目ということもあって,メンバーの顔をすっかり覚えてしまいました.自席からは,ヴィオラのラジェスが後姿しか見られないだけで,後の3人はよく顔が見えます

1曲目の第10番変ホ長調は第1楽章でハープのように弦をはじく場面があることから「ハープ」の愛称で呼ばれています 前回聴いたラズモフスキーの3曲と比べるとかなり穏やかな曲です.そうした中で,第3楽章「プレスト」では第5交響曲の”運命のテーマ”が速いパッセージで短く聴こえてきたりします

2曲目の第11番ヘ短調は”厳粛な”という意味の「セリオーソ」という愛称が付いています この曲で一番印象的なのは第3楽章のアレグロ・アッサイです.ベートーヴェンは怒っています 何に対して怒っているのか分かりませんが,とにかく怒り狂っています ところが,第4楽章に入ると機嫌を直したのか穏やかな音楽が展開します と思って安心していると,急激にテンポを上げてフィナーレに突入します この曲は”気まぐれベートーヴェン”の性格を表している典型的な曲のような気がします

休憩時間にロビーに出ると,クァルテット・エクセルシオの山田百子さんの姿が見えましたが,他のメンバーは見られませんでした エクセルシオはこのミュージックガーデンの常連なので,弦楽四重奏曲の演奏会がある時は誰かしら来ているようです

 

          

 

 休憩後は第12番変ホ長調です.この曲はとくに愛称は付いていませんが,とても穏やかで好きな曲です とくに第2楽章のアダージョは,あんなに厳つい顔をしたベートーヴェンが,どうしてこんなに優しく美しい音楽が書けるのだろう,と思うほど美しさを称えた曲です 先日,ベートーヴェンは複数のDNAを持っているのかも知れないと書きましたが,その一つが”アダージョ”のDNAかも知れません

4人の演奏は,気分を良くして帰ることが出来る,とても良い演奏でした

先週は月曜日の伯母の葬儀以外は毎日コンサートがあった(昨日もあった)ので,さすがに疲れました が,油断はできません.今週は仕事では当社の一代イベントである定時株主総会が開かれる重要な週であり,プライベートでは6回のコンサートが待ち受けるハードな週でもあります 先週に引き続き睡眠時間平均5時間はつらいところですが,体調管理に気を付けて気持ちをしっかり持って1週間を乗り切りたいと思います

 

          

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小林研一郎+東京フィルでオール・チャイコフスキー・プログラムを聴く

2015年06月14日 09時39分15秒 | 日記

14日(日).わが家に来てから248日目を迎え,コバエ・ホイホイが自分に仕掛けられたと勘違いして怒り心頭のモコタロです 

 

          

           おいらコバエじゃないよ 見りゃ分かるだろう ゴジラの子だよ

 

  閑話休題  

 

昨日午後3時から文京シビックホールで「響きの森クラシック・シリーズ」公演を、午後7時からサントリーホール”ブルーローズ”で「ミロ・クアルテット・ベートーヴェン・サイクルⅤ」を聴きました 今日は先に聴いた「響きの森クラシック・シリーズ第52回公演」について書きます

今年度の「響きの森」シリーズは全4公演で小林研一郎指揮東京フィルの演奏によりチャイコフスキーの楽曲が取り上げられます 今回の公演はその第1弾です.プログラムはチャイコフスキーの①バレエ組曲「くるみ割り人形」から「花のワルツ」,「金平糖の踊り」「葦笛」,②イタリア奇想曲,③歌劇「エフゲニー・オネーギン」から「ポロネーズ」,④ロココの主題による変奏曲(チェロ独奏=上野通明),⑤大序曲「1812年」です

 

          

 

オケがスタンバイしますが,コンマスが荒井英治でも三浦章宏でもなく,若いヴァイオリニストです あらためてプログラムのメンバー表で確かめると依田真宣とありました.この若者は昨年のサントリーホール・チェンバーミュージックガーデンでピアノ三重奏の「アルク・トリオ」のメンバーとして演奏した人です 確か,昨年の今頃のブログで「近い将来,頭角を現す実力の持ち主だと思う」旨を書いた記憶があります まさか,1年足らずで日本一の団員数を誇る東京フィルのコンマスに就任するとは思っても見ませんでした それは良いとして,メンバー表のどこを探しても「コンマス=荒井英治」の名前が見当たりません.いったいどうしてしまったのでしょう モンゴーア・クァルテットの活動に専念するのでしょうか?東京フィルの会員とはいえ「文京シビック・響きの森シリーズ」は年4回しかないので,楽員人事の情報がなかなか入ってきません 東フィルファンさん,教えてください

 

          

 

拍手の中,小林研一郎が登場しますが,指揮台に上がる前に「1曲目に『エフゲニー・オネーギン』の”ポロネーズ”を演奏します.勝手に順番を変えてゴメンナサイ」と言って,本来は後半の1曲目に演奏するはずだった”ポロネーズ”の演奏に入りました 事前のアナウンスも何もなかったので,彼が言わなければ,最初の音楽を聴いて誰もが首をかしげていたことでしょう

プログラミングとしては”ポロネーズ”を最初に持ってくる方が正解です この曲は歌劇「エフゲニー・オネーギン」の第3幕冒頭の公爵家の舞踏会シーンで演奏される華麗で壮大な音楽ですが,コンサートの幕開けに相応しい音楽です

コバケンは今度はマイクを持って「皆さんにチェレスタの音を聴いていただきましょう.お願いします」と言って,ステージ左サイドに控えていた女性奏者に演奏を促すと,オルガンのような楽器から鉄琴のような音が流れてきます 「チャイコフスキーは,ある街角でこの楽器の音色を聴いた時,『リムスキー・コルサコフにだけは教えないように.彼はオーケストレーションが上手だから,先を越されてしまう.自分が最初にこの楽器を使って作曲するから,それまでは黙っていてほしい』と語ったと言われています」と解説,オケ全体でチェレスタが活躍する『金平糖の踊り』を演奏しました

またマイクを持って「次にフルートに葦笛の音楽を吹いてもらいます」と言って,フルート奏者3人を立たせて演奏を促しました.そしてオケ全体で『葦笛の踊り』を演奏,最後に締めくくりとしてお馴染みの『花のワルツ』を優雅に演奏しました

次の『イタリア奇想曲』については「この曲は解説するより実際に聴いていただいた方がいいと思います」と言って指揮に入りました この曲は1879年末に弟のモデストと共にパリやローマを訪れた際の印象を音で表したものです.一言で言えば”どんよりと曇ったロシア”から来た作曲家が”太陽が燦々と輝くイタリアの世界”を描いた音楽です 管楽器も弦楽器も輝くような音で明るいイタリアを表現していました

 

          

 

休憩後,なぜか指揮台が外され,チェロの演奏台が設置されます.指揮者とともにソリストの上野通明が登場します 2014年オーストリアで開催された第21回ブラームス国際コンクールで第1位を獲得しています

「ロココの主題による変奏曲」は1876年12月から77年1月にかけて作曲された,一種のチェロ協奏曲です.上野は懸命に弾くというのでなく余裕を持って弾いています 曲想が激しい音楽でないこともありますが,決して強奏することなく自然体で弾いている姿が好感が持てます

演奏が終わると,何度かカーテンコールがあり,コバケンが上野にアンコールを促して,自分は女性ヴィオラ奏者の椅子に半分腰かけて見学を決め込んでいます いきなりアンコールを指名されたルーキー上野通明は,阪神ー広島戦・9回裏ツーアウト満塁スリーボール・ツーストライクに追い込まれた阪神の鳥谷敬のように茫然自失の体で,空を仰ぎます 果たして上野はマエケンをリリーフしたコバケンの変化球を打ち返すことが出来るのか??? しかし,この若者はしばし考えたあげくバッハの「無伴奏チェロソナタ第6番」の”プレリュード”を何の苦も無く弾き始めました 弾き終わった時の会場は,満塁ホームランを放った鳥谷敬をホームベースに迎え入れる時に賞賛の拍手を送る甲子園球場の阪神ファンさながらの風景でした

さてここで,コバケンがなぜ指揮台を外したのか,を考えてみたいと思います.それは演奏家,とくに若い演奏家への配慮だと思います 私が思うに,コバケンは「指揮者というのは,いくら全体を統括している存在だとしても,自分では一切音を出すことはない その意味では,演奏している者こそ賞賛され敬われるべき存在である」という姿勢を貫いているのではないかと思います とくに自分の孫のような将来性のある若者に対しては,しっかりサポートをして暖かく見守ってあげようという姿勢が見えます.コバケンの良い面はそういうところでしょう

あらためて指揮台が設置され,オケが拡大しフル・オーケストラで「大序曲1812年」の演奏に備えます 左サイドには大太鼓がスタンバイしますが,すぐ前の第1ヴァイオリン最後列2人の椅子の背中には,透明のアクリル板が機動隊の楯のように固定され,曲の終盤で大砲の代わりに強打される大太鼓の大音響に伴う風圧から守ります あの楯がなければ彼女たちは現代のベートーヴェンになっていることでしょう

この曲は1812年にモスクワに攻め入ったナポレオンが,寒さと飢えとロシア軍の反撃によって敗北した様子を表現にしたもので,1881年の産業・芸術博覧会のために作曲されたイベント音楽です とにかくド派手な曲で一般大衆受けする曲の筆頭とも言える作品です

曲の終盤になると,ステージ左右の張り出し部分に,それぞれトランペットとトロンボーンが2本ずつスタンバイし,ステレオ効果を狙います コバケンはオケの方を向いて指揮したり,後ろを振り返ってブラス・ユニットを指揮したり,大忙しです

この曲をLPレコード時代に聴いた時,大砲が鳴るところで(本物の大砲の音が入っている)レコード針が跳んで演奏が一気に終わってしまった経験があります その悩みはCDの登場で解決しましたが,こういう曲は家の中でチマチマ聴く音楽ではありません.生で聴いてこその音楽でしょう

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児玉桃+竹澤恭子でラヴェル「Vnソナタ」,ショーソン「PとVnとSQのための協奏曲」を聴く

2015年06月13日 09時02分47秒 | 日記

13日(土).わが家に来てから247日目を迎え、お姉ちゃんの大阪出張みやげをしっかり”確保”するモコタロです 

 

          

          お姉ちゃんが大阪から帰って来たよ オミヤはタイガース?

 

  閑話休題  

 

昨夕,サントリーホール”ブルーローズ”で,「サントリホール室内楽アカデミー・ゲストコンサート#1」を聴きました これはサントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン2015の一環として開かれたものです。プログラムは①ハイドン「弦楽四重奏曲ニ長調」、②ラヴェル「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ト長調」、③ショーソン「ピアノとヴァイオリンと弦楽四重奏のための協奏曲ニ長調」の3曲 出演はピアノ=児玉桃,ヴァイオリン=竹澤恭子,弦楽四重奏=レスパス弦楽四重奏団です

 

          

 

自席はC8列1番、 センターブロック左通路側席です.会場はほぼ満席 自席の4つ前の席にはサントリーホール館長でチェリストの堤剛氏が,その2つ隣には元文化庁長官・近藤氏が座っています

1曲目のハイドン「弦楽四重奏曲ニ長調」は、ハイドンがエステルハージ侯爵家の宮仕えから解放された後、ロンドンを2度訪問した際に作曲され、アポニー伯爵に献呈された3曲の弦楽四重奏曲の一つです

演奏のレスパス弦楽四重奏団はヴァイオリン=鍵冨弦太郎、小杉響、ヴィオラ=福井萌、チェロ=湯原拓哉から成る若手のクアルテットです レスパスというのは”空間”を意味する言葉だそうです 第1ヴァイオリンを中心にハイドンの愉悦を奏でます.ヴァイオリンの小形響さんとヴィオラの福井萌さんは昨年のミュージックガーデンでも活躍した人なので顔をよく覚えています.演奏も素晴らしかったです

2曲目のラヴェル「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ト長調」は,ラヴェルの2つのヴァイオリン・ソナタのうち後に作曲された方の作品です 大きな拍手に迎えられて竹澤恭子と児玉桃が登場します

第1楽章冒頭,ピアノの揺蕩うような旋律が会場を満たし,次いで竹澤のストラディヴァリウス”ヴィオッティ”が入ってきます.その瞬間,会場の空気はフランスに一変しました.これは驚きです この二人の演奏は会場の空気を日本からフランスへ一瞬で変えてしまったのです これは凄い演奏です.第2楽章はブルース調の音楽で,ラヴェルがジャズの影響を受けていることを窺わせますが,ここでも,第1楽章から空気を一転させ,気怠いブルースの世界に引きずり込みます 第3楽章では,同じ作曲者のピアノ協奏曲の一部のパッセージも見え隠れしますが,二人は独特の浮遊感で空気を掻き回します

弾き終ると同時に会場一杯のブラボーと拍手が起こりましたが,それに値する見事な演奏でした 二人ともパリを根拠地として活躍していることと無縁ではない音空間の表出でした

 

          

 

休憩後のショーソン「ピアノとヴァイオリンと弦楽四重奏のための協奏曲ニ長調」は1891年に作曲され、1892年3月にブリュッセルで、イザイのヴァイオリンほかで初演されてイザイに献呈されました ショーソン(1855-99)はパリ音楽院でマスネに指示しましたが,サン=サーンスやフランクらが組織した「国民音楽協会」に参加しました

児玉桃をバックに,竹澤恭子とレスパス弦楽四重奏団の4人がスタンバイします 第1楽章はピアノによって3つの力強い音が打鍵され,ついで弦楽奏者が3つの音を強奏します これが”動機”のようで,第1楽章全体を通じて現われます この曲でも,竹澤のヴァイオリンが入ると,その瞬間から空気感が一変します.第2楽章は「シシリエンヌ」で,一転して抒情的な音楽が展開します.起伏の激しい第3楽章を経て,まるでタンゴのようなメロディーの第4楽章に入ります.ここでも空気を一変させ,大上段のフィナーレを迎えます

この曲は初めて聴きましたが,一流の演奏家で聴くと非常に分かり易くすんなりと耳に入ってきます この曲のクラシック音楽界における位置は分かりませんが,名演奏だと名曲に聴こえます 実はこのコンサート,聴いたことのない曲ばかりで,あまり期待していなかったのですが,結果的には大当たりでした

 

          

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ミロ・クァルテットでベートーヴェン「ラズモフスキー弦楽四重奏曲第1番~第3番」を聴く

2015年06月12日 07時01分04秒 | 日記

12日(金).わが家に来てから246日目を迎え,冷蔵庫のパンフレットを見るモコタロです 

 

          

            ご主人さまが冷蔵庫を買い替える決心をしたようだよ

 

  閑話休題  

 

昨夕,サントリーホール”ブルーローズ”で「ミロ・クァルテット ベートーヴェン・サイクルⅡ」を聴きました これは「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン2015」の一環として開かれたもので,ベートーベンの弦楽四重奏曲全曲演奏会の第2回目です。弦楽四重奏曲第7番から第9番までの『ラズモフスキー弦楽四重奏曲』が演奏されます

 

          

 

自席はRb2列6番、センター右ブロック左から3つ目です.会場はほぼ満席 ヴィオラのジョン・ラジェスがプログラム・ノートに3曲の性格を解説しています

「3曲はあたかも3幕の英雄叙事詩劇であり,調整やモチーフ,構成を常に参照し合い,ロシア風の手段を持つ楽章によって,互いに結びつくと同時に,強烈で多面的な固有の人格を有しています 雄大で,悲劇的で気ままな第7番,大荒れで,騒然としながら静寂の時も内包する第8番,堂々として,異国風で茶目っ気のある第9番

なるほどプロです.簡潔に3曲の性格を言い表しています この3曲は1805年から06年にかけて作曲されました.一番長いのは第7番で演奏時間にして約45分かかる大曲です

拍手の中,4人が登場し第7番”ラズモフスキー第1番”の第1楽章を開始します 冒頭,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロによって勇壮なメロディーが奏でられ,すぐに第1ヴァイオリンが入ってきます.このテーマは1803年―04年に作曲された交響曲第3番”英雄”に通じる雄大な音楽です ベートーヴェンの音楽を聴いていていつも思うのはアダージョ楽章の素晴らしさです それはこの第7番も例外ではありません

 

          

 

休憩時間にロビーに出ようと会場後方に行くと,クァルテット・エクセルシオの大友肇氏,吉田有紀子さんの姿が見えました ベートーヴェン・サイクルでは毎年見かけます 今年は第1ヴァイオリンの西野ゆかさんが休養のため姿が見られませんでした.早く復活すると良いですね

休憩後は,最初に第8番”ラズモフスキー第2番”が演奏されます.冒頭から激しい音楽が展開しますが,やはりアダージョ楽章が安らぎます 最後の第9番”ラズモフスキー第3番”は,第1楽章冒頭がモーツアルトの”不協和音四重奏曲”の第1楽章冒頭によく似ています 霧の中で手さぐりしているような音楽が続き,一転,霧が晴れて視界が開けたような明るいメロディーが出現します 第3楽章のメヌエットは異国情緒あふれる曲想で,曲の依頼者であるラズモフスキー伯爵がロシアのウィーン大使であることを想起させます

この曲で一番好きなのは第4楽章の終盤で,第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロへとフーガのように演奏されるパッセージです この推進力の魅力はベートーヴェンならではです ミロ・クァルテットは渾身の演奏で期待に応えてくれます

先に登場したヴィオラのジョン・ラジェスは,一連の”ラズモフスキー弦楽四重奏曲・作品59”について「プロの常設弦楽四重奏団の誕生と世界規模の室内楽マーケット拡大の歴史は,作品59と共に始まったと言ってもよいでしょう」と語っています それは先日このクァルテットで聴いた第1番~第6番と比べれば一目(一聴)瞭然です この日の演奏がそれを裏付けていました

それにしても,ベートーヴェンの音楽を聴いて驚くのはその”多様性”です 例えば,モーツアルトの音楽は,聴けば「ああ,モーツアルトだ!」とすぐに分かるようなDNAを持っています 一方,ベートーヴェンの音楽は,1曲1曲がまったく違う性格を持っており複数のDNAを持っているような気がします どちらも天才の音楽に違いがありませんが,やっぱりベートーヴェンは偉大です

 

          

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東京音大プロデュース「アルカンからの手紙」公演を聴く~「サントリーホール レインボウ21」

2015年06月11日 07時04分38秒 | 日記

11日(木).わが家に来てから245日目を迎え、廊下に脱走するモコタロです 

 

          

            ご主人さまのCDラックが並んでて 廊下が狭いんだよね

 

  閑話休題  

 

昨夕,サントリーホール”ブルーローズ”で「レインボウ21 サントリーホール デビューコンサート2015 東京音楽大学プロデュース~アルカンからの手紙」公演を聴きました これは「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン2015」の一環として開かれたコンサートです ショパンやリストが脚光を浴びていた同じ時代に生まれ、いくつもの超絶技巧曲を作曲しながら、彼らの陰に隠れて当時ろくに見向きもされなかったシャルル・ヴァランタン・アルカン(1813-88)に光を当て、その魅力を発掘しようという意欲的な試みです

 

          

 

プログラムは2部構成になっており、第1部では①アルカン「練習曲”鉄道”」、②ショパン「エチュー嬰ハ短調」、③リスト「超絶技巧練習曲集」から第4番「マゼッパ」、④アルカン「悲愴的な様式による3曲」(追憶)から第2曲「風」、⑤ショパン「ピアノ・ソナタ第2番」から最終楽章が、第2部では①アルカン「ある鸚鵡(オウム)の死によせる葬送行進曲」、②ショパン「チェロ・ソナタ ト短調」から第1楽章,③アルカン「ピアノ独奏のための協奏曲嬰ト短調」が、それぞれ演奏されます 演奏者は東京音楽大学の学生が中心です

この日は大ホールでのコンサートがないので,ホワイエは閑散としています.いつも通りコーヒーを飲みながらプログラムに目を通しました 全自由席だったのでセンターブロックの前から5列目右通路側席を押さえました.会場のブルーローズは学生らしき若者たちを中心に8割以上入っている感じです

付け髭のナビゲーターがアルカンについて語ります

「アルカンはショパン,リストと同じ時代に生きた作曲家でしたが,3人に共通するキーワードは『ピアノ』と『超絶技巧』です

確かに1曲目のアルカン「練習曲”鉄道”」と2曲目のショパン「エチュード嬰ハ短調」(演奏=豊島萌華),そして3曲目のリスト「超絶技巧練習曲」から第4番「マゼッパ」(演奏=朝倉すみれ)を聴く限り,その通りです しかしショパンは『超絶技巧』で括るのはどうだろうか?と思って,4曲目のアルカン「悲愴的な様式による3曲」から第2曲”風”と5曲目のショパン「ピアノ・ソナタ第2番」から最終楽章(演奏=森永康夫)を聴くと,確かにそういう面もあるな,と思い直しました

 

          

 

さてこの日,印象に残ったのは後半の2曲でした.まず,アルカンの「ある鸚鵡(オウム)の死によせる葬送行進曲」です これは3本のオーボエ,ファゴット,ソプラノ,テノール,バス,オルガンという珍しい組み合わせによる作品です アルカンが室内楽曲を作っていたとは知りませんでした.オウムが死んだ様子がフランス語で歌われていますが,解説によると「お昼ごはん食べた?」「それで,何?」という歌詞を繰り返して,つまり『オウム返し』で歌っているとのことです.これは非常に面白い曲です 演奏でとくに素晴らしかったのはファゴットを吹いていた洞谷美妃さんという修士課程修了の女性です このファゴットが通奏低音のように全体を支え,賑やかな曲想の中に安定感を与えていました

 

          

 

圧巻だったのはショパンの「チェロ・ソナタ」(チェロ=前嶋修光,ピアノ=川村恵里佳)の後に演奏されたアルカンの「ピアノ独奏のための協奏曲嬰ト短調」です ここで曲のタイトルをあらためて見てみると「ピアノ独奏」のための「協奏曲」になっています 通常のピアノ協奏曲はピアノ独奏と管弦楽のための協奏曲です.つまり,アルカンは独奏も伴奏もすべて1台のピアノでまかなってしまおうとした訳です 50分にも及ぶ大超絶技巧曲ですが,さすがに一人では弾き切れないのでしょう.第1楽章を4年生の小林遼君が,第2楽章と第3楽章を修士課程2年生の安並貴史君が弾きました ところによってはショパンのようでもあり,ところによってはリストのようでもあり,超絶技巧という意味ではリストを上回る”演奏不可能”とも言えるような独特の曲です 二人は暗譜で弾きましたが,こんな曲を楽譜を見ながら弾いていたら演奏が滞ってしまうでしょう.選択肢としては暗譜しかないでしょう その意味では,アルカンの”演奏不可能”に近い超絶技巧曲に果敢に挑戦した二人の演奏は見事でした.機会があればもう一度聴きたいくらいです

 

          

 

アルカンと言えば,その昔マルク・アンドレ・アムランの演奏で超絶技巧曲を生演奏で聴いたことがあります その当時は「アルカンの曲は難し過ぎて弾けない」と言われていました しかし,時は過ぎ,今や大学生が暗譜で弾く時代になりました.この間,日本人の演奏技術も飛躍的に向上したということでしょう

ナビゲーターによると,アルカンは本棚に押しつぶされて死んだそうですが,アルカンはどんな本を読んでいたのでしょうか?彼はショパンととても仲が良かったようなので,ショパンの恋人ジョルジュ・サンドの作品も書棚に収められていたかも知れません 書棚と床にサンドされてしまったとしたら可哀そうですね

 

          

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