人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

スティーヴン・オカザキ監督 「 MIFUNE : THE LAST SAMURAI 」を観る ~ 内外の映画人が語る”世界のミフネ”の真実 ~ 黒澤明監督ファン、三船敏郎ファン必見:新文芸坐

2018年07月11日 07時26分15秒 | 日記

11日(水)。昨日、大学時代の友人K君から、久しぶりに上京するから明日(11日)飲まないか、というお誘いの電話がありました 今日は錦糸町で当ブログ読者Hさんとアイスコーヒーを飲んで、気が向いたら新日本フィルの室内楽シリーズを聴くつもりでいたのですが、K君は12日午前には帰郷してしまうというので、迷った挙句 K君と都内某所で飲むことにしました Hさんとお会いするのを楽しみにしていたのですが、いずれ いつかお会いする機会があると思うので、次のチャンスを待ちたいと思います Hさん、もし新日本フィルの篠原英和さんにお会いになったら よろしくお伝えいただければ幸いです

というわけで、わが家に来てから今日で1378日目を迎え、トランプ米大統領の個人運転手を25年以上務めたというノエル・シントロン氏が9日、トランプ一族が経営する「トランプ・オーガニゼーション」を相手取り、過去6年間で3300時間の超過労働分の賃金 約17万8千ドル(約2000万円)が支払われていないとして訴訟を起こした というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      トランプ大統領一族の経営ってせこいよね  このケースも交渉で値切るんだろうな

 

         

 

昨日は、夕食に勝浦氏在住のS君が送ってくれたアジを塩焼き イカを丸焼きにして、「生野菜と生ハムのサラダ」と「マグロの山掛け」を作りました アジもイカも新鮮でとても美味しかったです

 

     

 

         

 

現在、池袋の新文芸坐では「永遠の映画スター三船敏郎~没後20年/映画デビュー70年記念上映会」を開催中です

三船敏郎というと、私などは「七人の侍」「用心棒」「椿三十郎」「羅生門」といった黒澤明監督の作品を思い浮かべますが、この上映会では黒澤作品以外の作品を中心に上映されます 今回上映されるのは全33作品ですが、このうち黒澤明監督による作品は「蜘蛛巣城」「酔いどれ天使」「静かなる決闘」「醜聞(スキャンダル)」の4作品のみで、あとは稲垣浩、岡本喜八、木下恵介、熊井啓ほかの監督作品です

ということで 昨日「 MIFUNE : THE  LAST  SAMURAI 」を観ました これはスティーヴン・オカザキ監督・脚本による2018年ドキュメンタリー映画(80分)です

 

     

 

この映画は、三船敏郎の息子・史郎や黒澤組のスクリプターを務めた野上照代をはじめ香川京子、司葉子、八千草薫、役所広司など三船を良く知る俳優たちから、三船の演技に魅了されたスティーブン・スピルバーグ、マーティン・スコセッシといった海外の名監督まで、三船を取り巻く映画関係者への膨大なインタビューと貴重な映像によって、サムライ映画を世界に知らしめた三船敏郎の波乱万丈の人生を紹介しています

一番驚いたのは野上照代さんの証言で、「『蜘蛛巣城』のラストで、三船さん演じる武時が次々と矢を射かけられるシーンがありますが、あれは編集じゃなくて、大学の弓道部の学生が実際に矢を射ていたんですよ 極めて危険なシーンでしたが、三船さんは自分を取り立てて成長させてくれた黒澤監督に恩義を感じて我慢して演じたんだと思います」というものです。それは怖いですよね。弓道の師範じゃなくて大学生が自分めがけて矢を射ってくるんですから この時、三船氏は本気で恐怖を感じていたようで、撮影終了後に黒澤監督に「俺を殺す気か」と怒鳴ったといいます。気持ちはよく分かります

 

     

 

また、野上さんの証言によると、黒澤監督は他の役者には事細かに演技指導をしていたのに、三船には「好きにやっていいよ」と言っていたということです 黒澤監督は三船に余計な演技指導をすると彼の潜在能力を殺すことになると感じていたのでしょう

スピルバーグ監督は「荒野の七人」(1960年・アメリカ)を観た時よりも オリジナルの「七人の侍」(1954年)を観た時の方が大きな衝撃を受けたと語っています   彼は黒澤映画から大きな影響を受け、「スターウォーズ」を製作した時、黒澤監督の「隠し砦の三悪人」(1958年)に出てくる大将・真壁六郎太に付き添う百姓コンビをモデルに C3-POとR2-D2のロボット・コンビを登場させています

 

     

 

この映画では「羅生門」「七人の侍」「蜘蛛巣城」「用心棒」「赤ひげ」など黒澤+三船コンビによる名場面が細切れで短時間ながら紹介されているほか、序盤では日本映画の創成期の無声映画も紹介されていて、「日本映画の歴史」を勉強する機会にもなります 黒澤明ファン、三船敏郎ファンには必見です

 

     

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「ベロニカとの記憶」「あなたの旅立ち、綴ります」を観る ~ 人生の黄昏を迎えたこの2つの映画の主人公から われわれは何を学ぶべきか? ~ ギンレイホール

2018年07月10日 07時53分17秒 | 日記

10日(火)。わが家に来てから今日で1377日目を迎え、英国のデービス欧州連合(EU)離脱担当相が8日夜 辞任した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                英国がEUを離脱する前に 閣僚が内閣を離脱したわけね  メイ首相も気がメイるな

 

         

 

昨日、夕食に「ハッシュドビーフ」と「生野菜と生鮭のサラダ」を作りました 「ハッシュドビーフ」は ほぼほぼ 月曜日の定番料理になりつつありますが、作るたびに ほぼほぼ 腕が上がりつつあります

 

     

 

         

 

昨日、神楽坂のギンレイホールで「ベロニカとの記憶」と「あなたの旅立ち、綴ります」の2本立てを観ました

「ベロニカとの記憶」はリテーシュ・バトラ監督による2015年イギリス映画(108分)です

小さな中古カメラ店を営みながら独り穏やかに引退生活を送るトニー・ウェブスター(ジム・ブロードベント)のもとに、ある日 見知らぬ弁護士から手紙が届く   40年も前に別れた初恋の相手ベロニカの母親がトニーに日記を残しているというものだった  しかし、ベロニカ本人(シャーロット・ランプリング)はトニーにその日記を引き渡すことを拒否しているということが分かる。なぜ彼女は拒否するのか トニーは長い間忘れていた青春時代の思い出を呼び起こしながら、若くして自殺した親友や初恋にまつわる真実を手繰り寄せていく。そして、トニーは40年間ベロニカのことを誤解していたことを知る

 

     

 

この作品は、2011年のブッカー賞を受賞したジュリアン・バーンズの小説「終わりの感覚」を映画化したものです

この映画を観て思ったのは、若い時は特にそうですが、感情の赴くままに行動すると、軽い気持ちでやったことでも、相手はそうは捉えず深く傷つくことがあり、ひいては自殺にまで追い込んでしまうこともある、したがって、自分の言動や行動が相手にどう捉えられるのかを常に考えながら行動しなければならない、ということです

 

         

 

「あなたの旅立ち、綴ります」はマーク・ぺリントン監督による2016年アメリカ映画(108分)です

広告界で財をなし、思うがままの裕福な老後生活を送っていたハリエット・ローラー(シャーリー・マクレーン)だが、80代になって孤独と死への不安を抱くようになり、ある死亡記事を見たのをきっかけに、生前に納得のいく死亡記事を用意しておこうと思い立つ 新聞社の死亡記事担当アン・シャーマン(アマンダ・セイフライド)に依頼するが、ハリエットを知る人たちに彼女の人柄や行いを取材していくと、彼女はわがままな自己中心的な性格で 何一つ誉めるべき良い所がないことを知る それを聞かされたハリエットは、自分自身が変わるしかないと決意し、人々から愛され、尊敬される人物になるよう奮闘する かくして、教会でアンによってハリエットの死亡記事が読まれることとなる

 

     

 

この映画は、金持ちだが 人生の終わりが見えた嫌われ者の老婦人と、キャリアを始めたばかりの自信のない若い女性記者が、世代を超えて友情を育むことを描いたコメディーです

地元のラジオ局のディレクターと意気投合して80歳を超えたハリエットが即日ディスクジョッキーに採用されるという信じられないストーリーも出てきますが、80歳を超えた日本人女性コンピューター・プログラマーも存在するという世の中ですから、あり得ない話ではないな、と思いながら観ていました

それにしても、人間というのは誰もが 死ぬときは「いい人だった」「惜しい人を亡くした」と言われたいと思うものなのかな、と考えてしまいました   普段から「あの人はいい人だ」と思われている人は何の問題もありませんが、この映画の主人公のハリエットのように「天下の嫌われ者」の場合は問題が複雑です ハリエットのように生き方を変えることが出来れば良いですが、人間、歳を取ると自分の信条や生き方を変えて、他人に合わせて生きることは容易ではありません

コンサート会場でもよく見かけます。「天下の嫌われ者」を。特に目立つのが麦わら帽子を被り、大きなリュックを背負って雪駄をカランコロンと鳴らしながら堂々と開演時間ギリギリに入場してきて最前列のど真ん中に座る、目立つことだけが生きがいのサスペンダーじいさんです だれが何と言おうがあの悪習は変えようとしないでしょうね。それがじいさんのアイデンティティーだからです 

この映画の原題は  THE  LAST  WORD  ですが、じいさんに贈る最後の言葉は「目障りだ、さっさと席に着け」です

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ザ・シンフォニカ第64回定期演奏会を聴く~シュトラウス兄弟「ワルツ・ポルカ集」+R.シュトラウス「ばらの騎士」より / N響2018-19シーズンの定期会員座席指定を取る

2018年07月09日 07時17分27秒 | 日記

9日(月)。大学時代の友人で千葉県勝浦市在住のS君から大量の鮮魚が送られてきました アジ、サバ、赤身魚、イカ等が箱から溢れんばかりです 最近、わが家では週に1度は魚料理にすることが定着しているので、助かります。持つべきものは友だちです

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で1376日目を迎え、参院の定数を6増やす公職選挙法改正案を国会に提出している自民党に対し、公明党が定数4増の修正案を示した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     要するに政権与党は議席を増やすことしか考えてないってことね 民意とは真逆だ

 

         

 

昨日、N響2018-19シーズンの定期会員座席指定を取りました 午前10時からWEB受付開始でしたが、繋がったのは11時近くでした これまでC1プログラムでしたが、A,B,C各プログラムのラインナップを検討の結果 B2プログラムに変更し、S席の空席状況を確認したら条件の良い残席がなかったことからA席に変更しました 1階席のほぼ中央の右端ですが、NHKホールと違いサントリーホールはどこで聴いてもハズレが少なく、通路に面しているのでこれで良しとしました

 

         

 

昨日、東京オペラシティコンサートホールでザ・シンフォニカ第64回定期演奏会を聴きました プログラムは①ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「こうもり」序曲、②同:ポルカ「クラプフェンの森で」、③ヨーゼフ・シュトラウス「鍛冶屋のポルカ」、④ヨハン・シュトラウス2世「トリッチ・トラッチ・ポルカ」、⑤ヨハン・シュトラウス2世&ヨーゼフ・シュトラウス「ピチカート・ポルカ」、⑥ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「芸術家の生活」、⑦シューベルト(ウェーベルン編)「6つのドイツ舞曲」、⑧ヨハン・シュトラウス2世:ポルカ「雷鳴と稲妻」、⑨ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「天体の音楽」、⑩リヒャルト・シュトラウス:歌劇「ばらの騎士」から抜粋です 指揮は1995年、第44回ブザンソン国際指揮者コンクール優勝の阪哲朗です

 

     

 

全席自由です。1階22列10番、左ブロック右通路側を押さえました 会場に詰め掛けた聴衆の多くは出演者の家族・親戚・友人・知人などと思われます ステージに勢ぞろいした演奏者を眺めていた隣席のグループからも「〇〇さん、どこ?」「ほら、後ろから〇列目の左から2番目のメガネをかけている人よ」「ああ、あれが・・・」という会話が聞こえて来ます こうした光景は会場のあちこちで見られたことでしょう 誤解しないでいただきたいのですが、これは良いことだと思います アマチュア・オーケストラ特有の現象ですが、演奏する側からすれば知っている親しい人に聴いてほしいでしょうし、聴く側からも知っている人の演奏だからこそ聴きたいと思うでしょう さらに付け加えれば、今回はヨハン・シュトラウスのワルツやポルカが中心ということで、肩ひじ張らずに聴けるプログラムなのでなおさらだと思います。私のように何の関係もない聴き手にとってもリラックスして聴きたいプログラムです

オケの並びは、ヨーロッパ諸国に客演の多い阪哲朗らしく、コントラバスを左に配し、左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとります

1曲目はヨハン・シュトラウス2世の喜歌劇「こうもり」序曲です 1874年に初演された3幕もののオペレッタですが、コンサートの幕開けに相応しい景気のいい曲です 新国立オペラで観た何回かの公演の傑作シーンを思い浮かべながら聴きました

2曲目は同じくシュトラウス2世のポルカ「クラプフェンの森で」です 曲名だけでは分かりにくいのですが、カッコウの鳴き声が聴こえてきたりすると「ああ、この曲か」と思い出します。とてものどかで良い曲です

3曲目はヨーゼフ・シュトラウス「鍛冶屋のポルカ」です ヨーゼフはヨハン2世の弟です。この曲は、金庫屋さんの売り上げ達成記念の舞踏会向けに作曲されました 金槌でキンコンカンコンと金庫を作る様子を表していますが、この曲の時ばかりは打楽器奏者が注目を浴びます 金庫屋さんは売り上げを達成して大金が入り、そのお金を入れる丈夫な金庫を作ったとさ。めでたしめでたし

4曲目はヨハン・シュトラウス2世「トリッチ・トラッチ・ポルカ」です 習慣文春や収監慎重が得意なゴシップなどを早口で喋る様子が表されています。速いテンポの軽快な曲です

5曲目はヨハン・シュトラウス2世&ヨーゼフ・シュトラウス合作による「ピチカート・ポルカ」です 弦楽器が弓を使わず、終始 弦を指ではじくピチカート奏法で演奏します。この当時は画期的な演奏方法だったでしょうね ピチカートによる演奏ということで言えば、チャイコフスキーの「交響曲第4番ヘ短調」の第3楽章「スケルツォ:ピッツィカート・オスティナート:アレグロ」が有名ですね。こちらは中盤で管楽器が絡んできますが

6曲目はヨハン・シュトラウス2世のワルツ「芸術家の生活」です   この曲は1867年にワルツ「美しく青きドナウ」が初演された3日後に初演されました 以前「芸術家の生涯」と呼ばれていましたが、プログラム・ノートによると、最近では「芸術家の生活」と呼ばれることが多いそうです  芸術家だって人間です。生活がかかっています

7曲目はシューベルト(ウェーベルン編)「6つのドイツ舞曲」です この曲は元々ピアノ独奏用に作曲されましたが、エステルハージ家に長い間秘蔵されていた関係で、1930年頃発掘され、1931年に出版されました その際、ウェーベルンがオーケストラ用に編曲し出版しました。演奏を聴く限り、これまでの流れの中で この曲だけが異質です その原因は明らかで、当時最先端をいくウィーン楽派のウェーベルンが編曲しているからです はっきり言って、シューベルトらしさはまったく感じません

8曲目はヨハン・シュトラウス2世のポルカ「雷鳴と稲妻」です この曲は雷鳴を大太鼓、稲妻をシンバルで表現していますが、シュトラウス2世の作品の中で最も派手な音楽でしょう この曲は喜歌劇「こうもり」第2幕の舞踏会で踊られるバレエに代えて演奏されるケースが多いようです 新国立オペラの演出はこのスタイルです この曲で思い出すのは、1986年5月のカルロス・クライバー指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団の来日公演でのアンコールです 満を持して神奈川県民ホールに出かけましたが、当日のプログラムはベートーヴェンの交響曲第4番と第7番という願ってもない楽曲でした もちろん、両曲の演奏は素晴らしかったのですが、それを上回って素晴らしかったのがアンコールに演奏されたポルカ「雷鳴と稲妻」でした この時「華麗な指揮」というのはクライバーのためにある言葉だと確信しました

プログラム前半の最後はヨーゼフ・シュトラウスのワルツ「天体の音楽」です この曲は医学生による「天体の音楽」をテーマにした舞踏会にこのワルツを提供したことから、このタイトルが付けられました ハープに導かれる序奏部は、まさに「天体の音楽」への誘いにピッタリです これからの季節、夜空を見上げながらこの曲を聴くのも風流かもしれません


     


プログラム後半はリヒャルト・シュトラウスの歌劇「ばらの騎士」から抜粋です 指揮者ロジンスキーによる編曲版など、いくつか「組曲」が作られていますが、この公演で演奏されるのは聴きどころを繋げたオリジナル版とのことです 演奏時間にして正味3時間強の3幕ものオペラを約35分に縮めて演奏するのですから、相当カットしなければなりません

特に印象に残ったのは、まず最初に、第1幕冒頭の元帥夫人の寝室の場面のホルンの咆哮です 元帥夫人とオクタヴィアンの情熱的な一夜を彷彿とさせる熱い演奏でした 次に、第2幕でばらの騎士が登場する時のファンファーレです。感動的な演奏でした そして第3幕のオクタヴィアンとゾフィーの愛の二重唱です いずれも、これまで観たオペラのシーンを想像しながら音楽を聴いていました

前半の「ヨハン・シュトラウス一家のワルツ・ポルカの部」と 後半の「リヒャルト・シュトラウス『ばらの騎士』抜粋の部」を比べると、聴く楽しさでは前半が、演奏内容では後半の方が良かったと思います 私がオペラ好きということもあるかもしれませんが、後半の方が各楽器が良く鳴っていたように思います

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「第9回 音楽大学オーケストラ フェスティバル」 4公演通し券を取る ~ 東京芸術劇場、ミューザ川崎 / 「シェイプ・オブ・ウォーター」 「KUBO クボ 二本の弦の秘密」を観る~新文芸坐

2018年07月08日 07時24分16秒 | 日記

8日(日)。わが家に来てから今日で1375日目を迎え、英首相官邸は6日、トランプ米大統領が7月13日の訪英時にエリザベス女王とロンドン近郊のウィンザー城で会見すると発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      数千人規模のデモが連日予定されているから ロンドン市内は避けたんだろうな

 

         

 

毎年恒例の「音楽大学オーケストラ フェスティバル」の4公演通し券を取りました 2018年の今年は第9回目を迎えますが、日程とプログラム等は下記の通りです

Ⅰ.11月24日(土)15時開演。ミューザ川崎シンフォニーホール。

 ①東京藝術大学(指揮:梅田俊明)=バルトーク「管弦楽のための協奏曲」

 ②武蔵野音楽大学(指揮:北原幸男)=ベートーヴェン「交響曲第9番”合唱付き”」

Ⅱ.11月25日(日)15時開演。東京芸術劇場コンサートホール

 ①上野学園大学(指揮:清水醍輝)=レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」、プロコフィエフ:交響組曲「3つのオレンジへの恋」

 ②桐朋学園大学(指揮:沼尻竜典)=ホルスト:組曲「惑星」

Ⅲ.12月1日(土)15時開演。ミューザ川崎シンフォニーホール

 ①昭和音楽大学(指揮:斎藤一郎)=リムスキー・コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」

 ②国立音楽大学(指揮:現田茂夫)=チャイコフスキー「交響曲第5番ホ短調」

 ③洗足学園音楽大学(指揮:秋山和慶)=バルトーク「管弦楽のための協奏曲」

Ⅳ.12月8日(土)15時開演。東京芸術劇場コンサートホール

 ①東京音楽大学(指揮:広上淳一)=R.シュトラウス「ツァラトゥストラはかく語り」

 ②東邦音楽大学(指揮:大友直人)=サン=サーンス「交響曲第3番”オルガン付き”」

以上のうち3公演を取るつもりで池袋の東京芸術劇場チケット・ボックスに行ったのですが、1公演1000円のところ 通し券なら4公演で3000円ということに気が付き、通し券を買いました 通し券と言っても座席はすべて異なります。残念ながら4公演とも通路側席が取れませんでした

それにしても、武蔵野音大の「第九」には驚きます ソリストはまだ発表されていませんが、力が入っていますね バルトーク「管弦楽のための協奏曲」は東京藝大と洗足学園音大との競演となります。同じプログラムを異なる指揮者✕オケで聴くのもクラシックの醍醐味です。楽しみにしたいと思います

 

     

 

         

昨日、池袋の新文芸坐で「シェイプ・オブ・ウォーター」と「KUBO  クボ  二本の弦の秘密」を観ました

「シェイプ・オブ・ウォーター」はギレルモ・デル・トロ監督・脚本・製作による2017年アメリカ映画(124分)です

1962年、ソビエトとの冷戦時代のアメリカで、清掃員として政府の極秘研究所で働くイライザ(サリー・ホーキンス)は、同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と一緒に極秘の実験を見てしまう 研究所に密かに運びこまれた、アマゾンで神のように崇められていたという不思議な生き物の魅惑的な姿に心を奪われたイライザは、周囲の目を盗んで会いに行くようになる イライザは子供の頃のトラウマで声が出せなかったが、手話でコミュニケーションを図る 二人の心は通い始めるが、イライザは彼が間もなく実験の犠牲になることを知り、彼を救出することを決心する

 

     

 

不思議な生き物は顔が魚、身体が人間、全身にウロコがあるという半魚人のような生物です  この映画を観て 真っ先に思い出したのは「美女と野獣」です 半魚人のような生物はかなりグロテスクですが、イライザの方から接近します。自分が大好物のゆで卵を水槽の淵に置いて、彼が取るのを確かめることを通してお互いに心を通わせるようになります

映画の中盤で、半漁人を前にしたイライザが突然声を出して歌い始め、二人で踊るシーンがありますが、この時、子ども時代のトラウマが解けたのかと思いきや、このシーンが終わると元に戻って話すことが出来なくなります。やはり夢で ュージカルではありませんでした

半魚人はアマゾンで神のように崇められていたということを証明するかのように、人の傷に手を触れただけで治癒してしまいます それだけに、イライザが銃で撃たれて倒れても、いずれ再生して二人(?)で幸せに過ごすのだろうと暗示して幕を閉じます 映像が綺麗な「ファンタジック・ロマン」とでも言うべき作品だと思います

 

         

 

「kUBO  クボ  二本の弦の秘密」はトラビス・ナイト監督による2016年アメリカ映画(103分)です

魔法の三味線と折り紙を操る片目の少年クボは、身体の弱い母と二人で静かに暮らしていた 不吉な子どもとして一族から命を狙われていたクボは、ある時、邪悪な伯母たちに見つかってしまうが、母親が最後の力を振り絞って放った魔法に助けられる 一人だけ取り残されたクボは、母の力によって命を吹き込まれたサルとともに、母が最後に言い残した「3つの武具」を探し、自身の出自の秘密に迫る旅に出る 旅の途中で、記憶を失ったクワガタも仲間に加え、目の前に立ちはだかる数々の障害を乗り越え、3つの武具を見つけ、いったい自分は何者なのかを突き止める

 

     

 

この作品は、アニメーションスタジオのライカが、中世の日本を舞台に勇敢で心優しい少年クボの冒険を描いたストップモーションアニメです 

クボはいつも魔法の三味線を持っていますが、三味線なのに映画のタイトルが「二本の弦の秘密」となっています。この二本の弦とは何を意味するのか、三本目の弦は何を意味するのか、がこの作品のテーマとなります それは、彼の目の前に現れたサルと、旅の途中で仲間に加わったクワガタにも言えます 彼らの本当の正体は何かということです

「ストップモーションアニメ」とは、人形などの被写体を少しずつ動かして撮影し、まるで動いているかのように見せる撮影技術によるアニメーションですが、その映像はリアルです

どうでもいいことですが、クボの顔はなぜかフィギュアスケートの羽生結弦選手に似ています まさか、彼をモデルにしたのではないでしょうね

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小林研一郎✕エリソ・ヴィルサラーゼ✕読売日響でベートーヴェン「ピアノ協奏曲第1番」、チャイコフスキー「マンフレッド交響曲」を聴く~第580回定期演奏会

2018年07月07日 07時40分07秒 | 日記

7日(土)。昨日は、梅雨は本当に空けたのか?と思われる雨模様の1日でした 昨日、長袖シャツをタンスにしまい半袖シャツを出しました。長嶋さん言うところの「いわゆる一つの衣替え」です 今まではコンサートホールや喫茶店で冷房が効きすぎて寒い場合を想定して長袖シャツを着て出かけていましたが、いつも袖をめくって半袖状態にしていたので、これでは同じことだ、ということで思い切って半袖に切り替えました

ところで、話は360度変わりますが(これ、ギャグですよ、分かってね)、昨日の朝日朝刊・オピニオン欄に「『ガーファ』の世界で」という見出しが躍っていました 「ガ-ファって何よ」と リード記事を読んだら「グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンというアメリカの巨大IT企業4社の頭文字だということでした 3人の論客がガ-ファについて持論を展開していますが、このうちインフォバーン代表取締役・小林弘人氏は「2016年の米大統領選では、フェイスブックやグーグル上でフェイクニュースが拡散し選挙に影響したのでは、という懸念も起きた 米国家安全保障局(NSA)による大規模情報監視を暴露したスノーデン事件では、グーグル、フェイスブック、アップルなどから情報を入手していたとの告発もあった」として、「ガ-ファのサービスは便利だが、それと引き換えに何を失っているのかについて向き合う必要がある」と主張しています

たしかに おっしゃる通りなのですが、われわれ一般市民に何が出来るのだろうか、と考えてしまいます グーグルは便利なので毎日のように検索しているし、アップルはスマホで使っているし、アマゾンは娘が頻繁に利用しているし、やっていないのはフェイスブックだけです 個人的にはフェイスブックは個人情報流出の危険性が極めて高いと思うので、流出して困る個人情報はほとんどありませんが、今後もやるつもりはありません

ということで、わが家に来てから今日で1374日目を迎え、トランプ政権が6日、中国の知的財産権侵害に対する制裁関税を発動、産業用ロボットなど340億ドル(約3兆8千億円)分に25%の関税を課したが、中国も同規模の報復に出た というニュースを見て感想を述べるモコタロです 

 

     

                トランプの頭にあるのは大統領に再選されることだけ 世界経済なんて考えてない

 

         

 

昨日、いつも魚を買っている池袋のN水産で頭付きの鯛を買ってきました これで1280円(税別)です。これを料理します

 

     

 

切り身を「煮つけ」にし、頭を「味噌汁」にしました あとは「生野菜とツナのサラダ」と「マグロの山掛け」を作りました 娘は子供の頃から魚の目が大好物で、目には目がないと言っても過言ではありません 煮つけも味噌汁もとても美味しくいただきました

 

     

 

         

 

5日(木)午後7時からサントリーホールで読売日響 第580回定期演奏会を聴きました プログラムは①ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第1番ハ長調作品15」、②チャイコフスキー「マンフレッド交響曲作品58」です ①のピアノ独奏はエリソ・ヴィルサラーゼ、指揮は"炎のコバケン”こと小林研一郎です

エリソ・ヴィルサラーゼは1942年ジョージア生まれ、ロシア・ピアニズムを現代に継承する世界的なヴィルトゥオーゾ・ピアニストと言われています モスクワ音楽院で名匠ネイガウスとザークに師事、20歳の時 チャイコフスキー国際コンクールで第3位入賞、24歳でシューマン国際コンクールで優勝を果たしています 現在、モスクワ音楽院とミュンヘン音楽大学の常任教授を務めるほか、主要な国際コンクールの審査員を務めています

 

     

 

オケはいつもの編成で、左サイドにヴァイオリン・セクションを集めています。コンマスは長原幸太です

1曲目はベートーヴェン「ピアノ協奏曲第1番ハ長調作品15」です この曲はベートーヴェン(Ⅰ770-1827)が1793年から95年にかけて作曲し、その後1800年に改訂した作品です 第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「ラルゴ」、第3楽章「ロンド:アレグロ」の3楽章から成ります

大きな拍手の中、トレードマークの黒い衣装に身を包まれたヴィルサラーゼが登場、ピアノに向かいます コバケンのタクトで第1楽章が開始されます。古典派の協奏曲に特有の長い序奏が続きますが、コバケン✕読響は、20代の若き日の作品だろうがベートーヴェンはベートーヴェンだ という堂々たる演奏を展開します 次いで ヴィルサラーゼのピアノが入ってきて主題を演奏します この楽章の聴きどころはカデンツァです。ベートーヴェンは3つのカデンツァを残していますが、演奏を聴いた限りでは技巧を凝らした長大な曲だったので、3つのうちで一番重厚なカデンツァを選んだのかも知れません ヴィルサラーゼの演奏は、これぞベートーヴェン といった端正ながらも堂々たるものでした 第2楽章のラルゴでは一転、一音一音を慈しむように丁寧に弾き切りました 第3楽章に入ると、躍動感あふれるロンドを軽快に演奏、彼女をサポートする楽員たちもなぜか楽し気に演奏していました ヴィルサラーゼはテンポを揺らして故意に特徴付けたりすることなく、自然体で弾いていましたが、それが反ってベートーヴェンの本質が伝わってくる演奏になっていました

満場の拍手とブラボーにカーテンコールが繰り返されましたが、3度目にステージに呼び戻された時、なぜか彼女の片方の靴が脱げてしまい、聴衆から「あっ」という声が上がりましたが、転ぶことなく 履き直して 無事にステージ中央に進みました さすがはロシア・ピアニズムを現代に継承するピアニストです。晴れの舞台を「履かない一生」にはしません

 

     

 

プログラム後半はチャイコフスキー「マンフレッド交響曲作品58」です この曲はイギリスのロマン派の詩人バイロンの詩劇「マンフレッド」に着想を得た交響曲で、交響曲第4番と第5番の間に当たる1885年に書かれました。チャイコフスキー(Ⅰ788-1824)は、シューマンの劇付随音楽「マンフレッド」を意識して、なかなか作曲に踏み切れなかったようです 第1楽章「レント・ルグーブレ」、第2楽章「ヴィヴァーチェ・コン・スピーリト」、第3楽章「アンダンテ・コン・モート」、第4楽章「アレグロ・コン・フォーコ」の4楽章から成ります

チャイコフスキーは、楽譜に標題を記していますが、それによると第1楽章「マンフレッドは、人生に疲れ果てアルプス山中をさまよっている。自ら命を絶ったアスタルテの思い出が彼の胸を締めつける」、第2楽章「滝のしぶきにかかる虹のもと、マンフレッドの前にアルプスの聖霊が現れる」、第3楽章「パストラーレ、山人たちの素朴でのどかな生活」、第4楽章「アリマネスの地下宮殿。地獄の酒宴にアスタルテの亡霊が現われ、マンフレッドは許され、苦悩に満ちた生涯を終える」となっています

チラシの解説によると、コバケン✕読響による「マンフレッド交響曲」は1985年2月以来33年ぶりとのことです コバケンはベルリオーズの「幻想交響曲」など標題付きの交響曲を得意にしていますが、この曲もチェコ・フィルやロンドン・フィルと録音しており、得意のレパートリーなのでしょう

コバケンのタクトで第1楽章が始まります。冒頭、ファゴットによる重苦しいマンフレッドの主題が奏でられますが、チャイコフスキーはファゴットの使い方が上手いですね 彼は後の「交響曲第6番”悲愴”」でもファゴットから開始しています 第2楽章では、まるでメンデルスゾーンの「夏の夜の夢」の妖精が飛び交うような軽快な音楽が各楽器にリレーされていきます 第3楽章では冒頭、オーボエが美しいメロディーを奏でますが、蠣崎耕三の演奏が冴えわたっていました オーボエと言えば、プログラム冊子に「オーディションのお知らせ」として首席オーボエ1名が募集されていましたが、ひょっとすると蠣崎氏の後任狙いでしょうか 第4楽章では力強いモティーフが演奏されますが、最後には第1楽章に現れたマンフレッドのテーマが再現され、パイプオルガンが荘重に響く中、マンフレッドの死が暗示され、フィナーレを迎えます

弦楽器、管楽器、打楽器、オルガン総動員による読響の熱演でしたが、正直な感想を言えば、名曲と言われる交響曲第4番、第5番、第6番に比べると、今一つ魅力が乏しい作品だと思います チャイコフスキーは、パトロンのメック夫人に「これは、私の交響作品のなかで最も優れたものだと思います」と書き送っていますが、冒頭のファゴットによる衝撃的な主題の提示や、フィナーレのパイプオルガンの荘重な音楽など、いくつか強い印象を与えるフレーズがあるものの、継続的に耳を傾けさせる力を持つまでには至っていないように思います 演奏時間して1時間弱の作品ですが、正直言って 全曲を聴き通すには若干長すぎ、辛いものがあります    逆に言えば、交響曲第4番~第6番は 屈指のメロディーメーカー、チャイコフスキーらしい魅力的な旋律に溢れた名曲だと言えるかもしれません

そうは言うものの、演奏するのは炎のコバケン✕読響です チャイコフスキーの隠れた名作「マンフレッド交響曲」の一大叙情詩を総力戦で見事に歌い上げました

実は今、コンサートの予習で聴いたナクソスのCDを聴きながらこれを書いていますが、聴けば聴くほどドラマティックな良い曲だと思うようになりつつあります

 

     

 

さて、コンサートは演奏後、コバケンがセクションごとに立たせた後、例によって拍手を制し、

「皆さん、今日はありがとうございました 読売日響は2017年度のサントリー音楽賞を受賞しました どうか これからも勇気を与えてください

とあいさつ、満場の拍手とブラボーを浴びました いかにも気配りのコバケンらしい あいさつだと思いました


     

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東京藝大モーニングコンサートでシュポーア「クラリネット協奏曲第4番」(Cl:吉本拓)、ハチャトゥリアン「ピアノ協奏曲」(Pf:間世田采伽)を聴く

2018年07月06日 07時27分58秒 | 日記

6日(金)。わが家に来てから今日で1373日目を迎え、トランプ米大統領は4日 自身のツイッターで、石油輸出国機構(OPEC)に原油価格の引き下げにつながる増産を強く求めた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      増産しないとガソリン代の値上げにつながるから 11月の選挙で不利になるからね

 

         

 

昨日の夕食は「牛タン塩焼き+牛ミスジ焼肉」と「生野菜サラダ」「卵スープ」にしました 雨模様の日が続きますが、気温が高いので疲れ気味になります。スタミナを付けないと乗り切れません

 

     

 

         

 

昨日、午前11時から「東京藝大モーニングコンサート」を、午後7時から「読売日響 第580回定期演奏会」を聴きました ここでは東京藝大奏楽堂で開かれた「第7回藝大モーニングコンサート」の模様を書きます

プログラムは①シュポーア「クラリネット協奏曲第4番ホ短調」、②ハチャトゥリアン「ピアノ協奏曲変ニ長調」です ①のクラリネット独奏は藝大4年生・吉本拓君、②のピアノ独奏は藝大4年生・間世田菜伽さん、管弦楽=藝大フィルハーモニア管弦楽団、指揮=迫田嘉です

 

     

 

全席自由です。前回と同じ1階10列13番、センターブロック左通路側を押さえました 会場は8割くらい入っているでしょうか

オケはいつも通り ヴァイオリン・セクションが左に固まります。コンマスは植村太郎です

1曲目はシュポーアの「クラリネット協奏曲第4番ホ短調」です ルイ・シュポーア(1784‐1859)はドイツ出身のヴァイオリニスト・作曲家ですが、ヴァイオリン協奏曲を15曲、クラリネット協奏曲を4曲書いたほか、交響曲や弦楽四重奏曲なども数多く作曲しました クラリネット協奏曲第4番は4曲中唯一のA管クラリネット(半音低い)で演奏されます 第1楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「ロンド・アル・エスパニョール」の3楽章から成ります

藝大4年在学中の吉本拓君が指揮者とともに登場します 彼はN響首席の伊藤圭氏にも師事したことがあるとのことですが、風貌が何となく師匠に似ています 迫昭嘉の指揮で第1楽章に入ります。冒頭、かなり長い序奏が続きますが、歌心に溢れた曲想で、まるでオペラの序曲を聴いているような感覚を覚えます 独奏クラリネットがほの暗い雰囲気で入ってきますが、徐々に力強い曲調に変化していきます 第2楽章は冒頭、オケの伴奏により独奏クラリネットが哀愁を帯びたメロディーを奏でますが、この楽章も歌心に満ちています シュポーアは、ドイツのゴータで出会ったスペイン兵士の奏でるギターの音色を聴いてスペイン風の曲の着想を得たそうですが、それがこの楽章に生かされています 第3楽章で吉本君は 技巧的なパッセージを情熱的に演奏し、クラリネットの音色の魅力を楽しませてくれました

 

     

 

2曲目はハチャトゥリアン「ピアノ協奏曲変ニ長調」です アラム・イリイチ・ハチャトゥリアン(1903‐1978)はアルメニア人作曲家ですが、あの激しい「剣の舞」を想い起こします この作品はハチャトゥリアンが33歳の時、1936年作曲されました。第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ・エ・マエストーソ」、第2楽章「アンダンテ・コン・アニマ」、第3楽章「アレグロ・ブリランテ」の3楽章から成ります

藝大4年在学中の間世田菜伽(ませだ あやか)さんが、シルバーのラメ入り衣装で登場し、ピアノに向かいます 迫昭嘉の指揮で第1楽章がオケの強烈なフォルティシモで開始されます 重厚感のある序奏に続いて独奏ピアノが入ってきます。終始ハチャトゥリアンらしい民族的な響きがピアノから、オケから聴こえてきます 終盤の間世田さんによるカデンツァではそれが顕著に現れます。第2楽章は冒頭、バスクラリネットの序奏に続き独奏ピアノが民謡調のテーマを静かに奏でますが、これが実に美しい 第3楽章は一転、ハチャトゥリアン得意の”お祭り騒ぎ”的な賑やかな音楽が展開します カデンツァの演奏は民族色豊かな響きで聴衆を魅了しました 終盤はピアノとオケとの丁々発止のやり取りが刺激的で、間世田さんは超絶技巧を駆使しながらスピード感をもって最後まで弾き切りました

将来が楽しみな吉本拓君、間世田菜伽さんの今後の活躍を期待します

 

     

 

 

toraブログのトータル訪問者数が98万 I P を超えました( 980,559 I P )。これもひとえに普段からご覧いただいている読者の皆さまのお陰と感謝申し上げます これからも週休0日制で毎日書き続けて参りますので、モコタロともどもよろしくお願いいたします

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「テアトロ・レアル(王立劇場)オペラ・オン・スクリーン」でヴェルディ「椿姫」を観る~ヴィオレッタに成り切った迫真の演技のエルモネラ・ヤオにブラボー!:新国立劇場小劇場

2018年07月05日 07時21分13秒 | 日記

5日(木)。わが家に来てから今日で1372日目を迎え、米ハワイ州のイゲ知事は3日、サンゴ礁への有害性が指摘される物質を含んだ日焼け止めの販売や流通を禁じる法律に署名した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       プラスティックゴミの方が深刻だね ただのゴミはサッカーのサポーターに任せて!

     

         

 

昨日、夕食に「野菜とひき肉のドライカレー」と「生野菜とサーモンのサラダ」を作りました 「野菜と~」の材料は、豚ひき肉、ナス、ピーマン、玉ねぎ、トマトです。初挑戦ですが美味しく出来ました 暑い夏にお薦めメニューです

 

     

 

         

 

昨日、初台の新国立劇場小劇場で「テアトロ・レアル(王立劇場)オペラ・オン・スクリーン」の第3回:ヴェルディ「椿姫」を観ました

キャストは、ヴィオレッタ=エルモネラ・ヤオ、アルフレード=フランチェスコ・デムーロ、ジェルモン=フアン・ヘスス・ロドリゲス、フローラ=マリフェ・ウビエタほか、指揮=レナ―ト・パルンボ、演出=デイヴィッド・マクヴィカーです 

このうちエルモネラ・ヤオは第1回目「蝶々夫人」のタイトルロールを歌い、圧倒的な存在感を示したソプラノです また、演出のデイヴィッド・マクヴィカーは今年2月のMETライブビューイング、プッチーニ「トスカ」において冴えた演出で話題を呼んだスコットランド生まれの演出家です

 

     

 

最終日のこの日は、午前中に来日したばかりのテアトロ・レアルのイグナシオ・ガルシア・べレンゲル総裁の挨拶がありました

聴衆は3日間で一番多く、バルコニー席を除いて9割方埋まっている感じです

レナ―ト・パレンボの指揮によりピアニシモで開始される前奏曲が演奏されます これほど繊細で美しい前奏曲も珍しいでしょう 一転、舞踏会の賑やかな音楽が展開し、椿姫=ヴィオレッタが登場します ヒロインを演じるエルモネラ・ヤオは「蝶々夫人」では15歳から18歳までのヒロインを演じましたが、今回はパリの高級娼婦の役割ということで、年齢的にはこちらの方が演じやすいかもしれません

アルフレードとともに「乾杯の歌」を歌いますが、ステージが一気に華やぎます 演出・舞台は極めてオーソドックスなもので好感が持てます 第1幕の一番の聴きどころはフィナーレでヴィオレッタが歌う「ああ、そは彼の人か~花から花へ」です 蝶々夫人の時と同様、ヤオはヴィオレッタに成り切って、美しいコロラトゥーラ・ソプラノで戸惑う心を歌い上げます。大迫 力半端ないです 一方、相手役のアルフレードを歌ったフランチェスコ・デムーロは 風貌からして「この女性一筋」のマジメ男で、役柄にピッタリです。歌も誠実さに溢れています

第2幕ではアルフレードの父親ジェルモンがパリ郊外で暮らすヴィオレッタを訪ね、娘の結婚のためにアルフレードを諦めてくれと頼みますが、フアン・ヘスス・ロドリゲスは深みのあるバリトンで、子を持つ父親の心情を切々と歌い上げました 最初は抵抗していたヴィオレッタですが、最後には説得されて不本意ながらアルフレードを諦めます。その時のヤオの頬には涙の筋が伝っていました

その後、ジェルモンはアルフレートを相手に「プロヴァンスの海と土地」を朗々と歌いますが、このアリアは聴きごたえがありました

 

     

 

第3幕は病床に伏すヴィオレッタの最後のシーンですが、冒頭、音楽だけが流れる間のヤオの演技は、今にもヴィオレッタが咳き込んだまま死んでしまうのではないかと思わせるような迫真の演技でした そして、「アルフレードは外国におります。あなたの犠牲については私自身が彼に打ち明けました。彼はあなたのお許しを求めに行くでしょう。私もまた行くつもりです」というジェルモンから届いた手紙を声を出して読んで、「遅すぎるわ」と叫んで「ああ、道に迷った女の希望に微笑んで・・・、ああ、すべては終わったわ」とはっきりと死を意識した最後のアリアを歌いますが、この時 彼女の目から涙が流れていました。それを観ているわれわれは、彼女こそヴィオレッタその人だと確信します

2日前の「蝶々夫人」がそうであったように、この「椿姫」もエルモネラ・ヤオのための「椿姫」だったと思います

これをもって3日間にわたり上映されてきたテアトロ・レアル「オペラ・オン・スクリーン」が終了したわけですが、上映された三作品「蝶々夫人」「カルメン」「椿姫」には2つの共通点があります 言うまでもなく、いずれも女性が主役だということ、そして、最後にヒロインは死ぬということです 蝶々夫人は自ら首をかき切って、カルメンはホセに刺されて、椿姫は肺結核で息を引き取ります。もっとも、ヒーローやヒロインが最後に死ぬのはこの三作品に限ったことではなく、”正統派”オペラの常道と言えるかもしれません   おっと、私としたことが 3つ目の共通点を失念していました 3作ともオペラの歴史に燦然と輝く名曲中の名曲だということです

 

     

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「テアトロ・レアル(王立劇場)オペラ・オン・スクリーン」でビゼー「カルメン」を観る ~ 前代未聞!ステージ上に自家用車が10台登場:新国立劇場小劇場

2018年07月04日 07時20分50秒 | 日記

4日(水)。わが家に来てから今日で1371日目を迎え、10月11日の東京都の豊洲市場開場まで100日となった3日、市場の業界団体が築地市場内で残り日数を表示する電光掲示板を再び点灯させた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     これでもう魚ッとする”場外”乱闘はないですよね  イケイケ コイケヤの都知事さん

 

         

 

昨日、夕食に「鶏肉とパプリカの中華炒め」と「生野菜とアボカドのサラダ」を作りました 「鶏肉~」は初挑戦ですが、何とか美味しく出来ました

 

     

 

         

 

昨夕、初台の新国立劇場小劇場で「テアトロ・レアル(王立劇場)オペラ・オン・スクリーン」の第2回:ビゼー「カルメン」を観ました キャストは、カルメン=アンナ・ゴリャチョヴァ、ドン・ホセ=フランチェスコ・メリ、エスカミーリョ=カイル・ケテルセン、ミカエラ=エレオノーラ・ブラット、フラスキータ=オリヴィア・ドレイ、メルセデス=リディア・ピンイェ・クルティスほか、指揮=マルク・ピオレ、演出=カリスト・ピエイトです

 

     

 

初日は理事長でしたが、2日目は駐日スペイン大使館のゴンサロ・デ・ベニート大使が挨拶されました   バルコニー席を除く288席のうち8割方埋まっている感じです

指揮者が登場し、あの勇ましい「序曲」が演奏されます 前日の「蝶々夫人」と違い、ステージの中央に国旗掲揚用のポールが、左サイドには電話ボックスが置かれているだけなので舞台が広く感じます この広さを利用して、後で大変なことが起こります 登場人物の衣装からみても どうやら舞台を現代に置き換えて演出するようです

第1幕では、まずドン・ホセが登場しますが、フランチェスコ・メリはこの役を得意としているようで、演技を伴った素晴らしい歌唱力です 次いでヒロインのカルメンが登場しますが、アンナ・ゴリャチョヴァは”魔性の女”カルメンにピッタリの風貌とふてぶてしいまでの強靭な歌唱力を持っています カルメンは歌って踊って演技してと3拍子揃っていないと務まりませんが、彼女はスタミナ十分です

次に登場するのはホセの母親から手紙を預かって故郷から出てきたミカエラですが、エレオノーラ・ブラットはか弱い女性というよりも自分の意志をしっかり持った女性として演じていました

最近のオペラでは 受け狙いで 小道具にスマホが使われたりします 昨年のヤルヴィ✕N響によるモーツアルト「ドン・ジョバンニ」でもレポレッロが「カタログの歌」を歌いながら器用に操作していました 今回の公演では、第1幕でホセとミカエラが二重唱を歌いながらポラロイド・カメラでお互いを撮影したり、二人そろって自撮りしたりするシーンがあります 同じ現代でもちょっと昔の現代でしょうか ところが、ホセはせっかく撮った写真をカメラから引き出して捨ててしまうのです 母親から託された手紙(ミカエラと結婚しなさいということを暗示している)を持ってきてくれたミカエラに対しむごい仕打ちだと思いますが、これには理由がありそうです

実はミカエラが来る直前にホセは カルメンが意味ありげに自分に投げつけた薔薇の花を大事に持っていて、心はカルメンに傾いていたのです しかし、母親の手紙を読んで「危うくカルメンの魔力の虜になるところだった」と言ってカルメンを諦めるのです、普通の演出では ところがこの演出では、二人が写った写真を捨てることによって ホセはまだカルメンが諦めきれないでいることを暗示しているのです。これはホセの内心の可視化を試みた演出だと思います

闘牛士エスカミーリョを歌ったカイル・ケテルセンは どこかで見たことがあると思ったら、昨年9月9日のヤルヴィ✕N響によるモーツアルト「ドン・ジョバンニ」でレポレッロを歌ったバスでした   彼です、スマホを操作して「カタログの歌」を歌っていたのは   このエスカミーリョは魅力があります。イケメンで背丈もあり歌も上手いときたらエスカミーリョをやるしかないでしょう

第2幕に入ると、古いベンツが登場します ところが、第3幕に入ると何と10台もの車が次々とステージに現われ駐車していきます 「これはオペラ界の10台ニュースだ」と独り言を言っても誰も振り向いてくれません

カリスト・ピエイトの演出では、ホセとカルメンの間でR15あるいはR18指定寸前の際どいシーンが何カ所かありますが、スペインのオペラ界はここまで来ているということでしょうか サッカー・ワールドカップ、お互いに惜しかったですね・・・関係ないか フラスキータとメルセデスは限りなく透明に近いセクシーでした

私は基本的に 舞台を現代に移したりする演出は嫌いです その意味で最悪だったのは数年前の新国立オペラ、ヴェルディ「ナブッコ」でした。あろうことか舞台がデパートでした サリエリの真似ではないですが「まずは音楽、お次は演出」であるべきです あの演出では音楽が 黄色の翼に乗って どこかにすっ飛んで行ってしまいました 「金返せ」の世界です。その点、今回の演出は 自家用車が10台も出てきたりしましたが、車を道具として有効に活用していたし、何より歌を損なうようなことはありませんでした   その意味では許される範囲の演出だったと思います

それにつけても、「カルメン」は素晴らしいオペラですね 美しいメロディーラインに溢れています   幕間の2つの間奏曲を含めて魅力的な音楽だと思います

 

      

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「テアトル・レアル(王立劇場) オペラ・オン・スクリーン」でプッチーニ「蝶々夫人」を観る~圧倒的な存在感を示した蝶々夫人役のエルモネラ・ヤオ:新国立劇場小劇場

2018年07月03日 07時55分52秒 | 日記

3日(火)。わが家に来てから今日で1370日目を迎え、国税庁は2日、2018年分の路線価を発表したが 33年連続日本一になった東京都中央区銀座5の「鳩居堂」前は1平方メートルあたり4432万円だった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      鳩居堂前の道路を削って 自宅に持ち帰っても路線価は上がらず 悪評が上がるかも

 

         

 

昨日、夕食に「塩だれ豚丼」と「生野菜サラダ」「マグロの山掛け」を作りました   暑い日が続くので「豚丼」には スタミナが付くようにレシピにはないニラも入れました

     

 

         

 

昨夕、新国立劇場小劇場で「テアトロ・レアル(王立劇場)オペラ・オン・スクリーン」の第1回目:プッチーニ「蝶々夫人」を観ました これは日本スペイン外交関係樹立150周年を記念して上映されるライブビューイングで、スペインのテアトロ・レアル(王立劇場)と新国立劇場とが互いの舞台公演の映像を提供し合い上映会を開催するものです 第1回がプッチーニ「蝶々夫人」、第2回がビゼー「カルメン」、第3回がヴェルディ「椿姫」です。あらかじめ申し込んで先着順に受け入れるという形を採っていますが、幸い私は3回とも観ることができます

 

     

 

バルコニー席を除いて会場の7割くらいが埋っているでしょうか 全席自由です。左サイドやや後方の通路側を押さえました

第1回:プッチーニ「蝶々夫人」のキャストは、蝶々夫人=エルモネラ・ヤオ、スズキ=エンケレイダ・シュコーザ、ピンカートン=ホルヘ・デ・レオン、シャープレス=アンヘル・オデナ、ゴロー=フランシス・バス、ボンゾ=フェルナンド・ラド、ヤマドリ=トメウ・ビビィロニ、ケート=マリフェ・ノガレス、指揮=マルコ・アルミリアート、演出=マリオ・ガスです このうち私が分かるのは、METライブビューイングでお馴染みの指揮者・アルミリアートを除けば ホルヘ・デ・レオンだけです 前日の新国立オペラ「トスカ」でカヴァラドッシを歌ったテノールです。忘れるわけがありません

上映に先立って、主催者側から挨拶がありました 進行役が「理事長からご挨拶申し上げます」と紹介すると、その人が登壇し「理事長の〇〇です」と自己紹介してあいさつに入りましたが、聴いている側からは、いったいどこの理事長なのかが不明です もちろん、事前に配布されたパンフレットには「公益財団法人新国立劇場運営財団理事長〇〇〇〇」の挨拶の言葉が載っているので、それを読んでいるはず、という前提で話をしていると思われますが、世間一般の常識からは かけ離れていると思います   パンフレットに書かれていようがいまいが、主催者を代表して挨拶をする限り、きちんと立場を表明すべきだと思います

 

     

 

理事長のあいさつに続き、上映会に移りましたが、どうやらこの公演の演出は「メイキング・オブ『マダム・バタフライ』」といったような、オペラの映画作りの過程をそのまま見せる形をとるようです 冒頭は、BGMのない無音の状態で、キャストや制作関係者のタイトルロールが流れます。これは無声映画を表しているのでしょう 幕開きでピンカートンとシャープレスが登場し会話を交わしますが、その間、舞台袖では蝶々さんがヘア・メイクをして出番を待っている様子をカメラが捉えています 全編を通してこのような演出が見られますが、しつこさはなく、カメラの露出は最低限に抑えられています

第1幕で、さっそくヒロインの蝶々さん役のエルモネラ・ヤオが登場しますが、われわれが新国立劇場で見慣れている日本人の「蝶々夫人」とはイメージがかなり離れています しかし、それは日本人がプッチーニやヴェルディのオペラを歌うのをイタリア人が観た時も同じような違和感を感じるでしょうから、ある程度仕方ないことです それよりも、蝶々さんの連れの女性たちの衣装にはビックリしました 白地に黒の線を基調とするシンプルな衣装なのですが、日本人の私から見ると、まるで浴衣(ゆかた)です 演出的には蝶々さんの赤と白と金を基調とする花嫁衣裳を引き立てるために地味に徹したということでしょうが、この点だけは感覚がズレていると言わざるを得ません

ここで、本来の歌唱力と演技力に焦点を絞った時、蝶々さんを歌い演じたエルモネラ・ヤオという歌手は強烈な個性を持ったソプラノで、歌唱力が抜群であることに加え、「役に成り切る」という言葉はこの人にこそ当てはまるのではないかと思わせる強靭な力を持っています 端的な例が、第3幕でピンカートン夫人を見た蝶々さんが、夫人に子供を預ける決心をするシーンで、彼女は涙を流して歌っていました 考えるに、こうした感情移入による自然な演技は、アップが可能な「オペラ・オン・スクリーン」あるいは「ライブビューイング」だからこそ分かることかも知れず、われわれがいつも観ているリアルなオペラの舞台ではこうしたことが実際に起こっているのかも知れません

迫真の演技ということでは、ピンカートンへの望みを失った蝶々さんが 父親の形見の短刀で首の頸動脈をかき切ったものの 子どもの姿を目にして死にきれず もだえ苦しみながら息絶えるラストシーンは壮絶なものがありました

前日 新国立劇場で「トスカ」のカヴァラドッシを歌ったホルヘ・デ・レオンは、この公演のピンカートンでも絶好調で、無理のない輝くテノールを披露しています シャープレスを歌ったアンヘル・オデナも、スズキを歌ったエンケレイダ・シュコーザも、魅力のある歌唱を聴かせてくれました しかし、この「蝶々夫人」は 徹頭徹尾 タイトルロールを歌ったエルモネラ・ヤオのための「蝶々夫人」でした

エルモネラ・ヤオは7月4日の「オペラ・オン・スクリーン」第3回目:ヴェルディ「椿姫」でヒロインのヴィオレッタを歌いますが、いかにスペイン側が自信をもって彼女をアピールしたいかが分かります

 

     

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新国立オペラ、プッチーニ「トスカ」を観る~キャサリン・ネーグルスタッドのトスカ、ホルヘ・デ・レオンのカヴァラドッシ、クラウディオ・スグーラのスカルピア、ヴィオッティ✕東京フィルにブラボー!

2018年07月02日 08時08分43秒 | 日記

2日(月)。わが家に来てから今日で1369日目を迎え、細野豪志元環境相(無所属)が昨年秋の衆院選期間中に証券会社から5千万円を受け取っていた問題で、資金提供の時点で借用書が交わされていなかったことがわかった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      最初から返す気が無かったんだろうな 政治家っていい商売だよな 与党も野党も

 

         

 

昨日、初台の新国立劇場「オペラパレス」でプッチーニの歌劇「トスカ」を観ました 出演はトスカ=キャサリン・ネーグルスタッド、カヴァラドッシ=ホルヘ・デ・レオン、スカルピア=クラウディオ・スグ―ラ、アンジェロッティ=久保田真澄、スポレッタ=今尾滋、シャルローネ=大塚博章、堂守=志村文彦、羊飼い=前川依子。管弦楽=東京フィル、合唱=新国立劇場合唱団、TOKYO FM少年合唱団、指揮=ロレンツォ・ヴィオッティ、演出=アントネッロ・マダウ=ディアツです

 

     

 

舞台は1800年6月のオーストリア支配下のローマ。共和派の画家カヴァラドッシは、脱獄した友人のアンジェロッティを匿った罪で捕らえられる 彼の恋人トスカを我がものにしようと狙う警視総監スカルピアは、トスカに分かるようにカヴァラドッシを拷問し、彼の命を救う代償にその身体を要求する。トスカは取引に応じ、カヴァラドッシを形だけの死刑にするという約束を取り付け、2人の出国許可証を手にするが、偶然手にしたナイフでスカルピアを刺し殺す 明け方、城の屋上で見せかけのはずの銃殺刑が執行される

 

     

 

私が新国立オペラで「トスカ」を観るのは2003年、2009年、1012年、2015年に次いで今回が5回目です 演出・舞台はすべて同じアントネッロ・マダウ=ディアツによる極めてオーソドックスなものです ヒロインのトスカは、エリザベス・ホワイトハウス、イアーノ・タマ―、ノルマ・ファンティー二、マリア・ホセ・シーリと聴いてきましたが、これまでのマイ・ベストは2012年に歌ったノルマ・ファンティー二です 歌唱力・演技力ともに強烈な個性を持ったソプラノでした それ以来、彼女を超えることが出来るかどうかが「トスカ」を聴く基準になっています

スイス・ローザンヌ出身の若手指揮者ロレンツォ・ヴィオッティがオーケストラ・ピットに入り、3つの力強い和音から成る「スカルピアの動機」で全曲の幕が開きます この演奏を聴いて、この公演の成功を確信しました 何より音が良く鳴っています これがショボい音だとガックリします。一気にトスカの世界に引き込まれました

トスカを歌ったキャサリン・ネーグルスタッドはアメリカ出身のソプラノですが、2006年にドイツ芸術省から宮廷歌手の称号を授与されている実力者です トスカ役はウィーン国立歌劇場、パリ・オペラ座、ベルリン・ドイツ・オペラほか、世界中の歌劇場で歌い演じているということで、当たり役と言えるかも知れません 第2幕の有名なアリア「歌に生き、愛に生き」をドラマティックに歌い上げ大喝采を浴びました 同じ幕のスカルピアを刺し殺した後のシーンで、息絶えたスカルピアを見下ろして「死んでしまった。今はもう許してあげるわ」というモノローグは、いかにトスカがスカルピアに苦しめられてきたかを如実に表すドスの効いた声で、演技力抜群でした

カヴァラドッシを歌ったホルヘ・デ・レオンはスペインのカナリヤ諸島出身のテノールですが、前回(2015年)に続いての出演です 伸びのあるテノールで歌唱に無理がありません 第3幕でのアリア「星は光りぬ」は感動を呼びました

さて、今回 私が最も強く印象に残ったのはスカルピアを歌ったクラウディオ・スグ―ラです   ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、英国ロイヤルオペラなど世界のオペラ劇場で活躍し、2018/19シーズンにはスカルピア役で米メトロポリタン歌劇場にデビュー予定とのことです ふてぶてしい面構えからして”悪代官”スカルピアにピッタリで、力強く威圧感のあるバリトンは冷酷な性格のスカルピアに最適です

「トスカ」を観るたびに一番感動するのは第1幕のフィナーレです スカルピアが「お前の心の中に、スカルピアは根を下ろしたぞ! 行け、トスカ お前の嫉妬の鷹を飛び立たせたのはこのスカルピアだ。行け、トスカ」と歌う中、舞台が転換し、鐘やオルガンに伴われた三部合唱が「テ・デウム」を歌い上げてクライマックスに達しますが、このシーン(上のチラシの場面)の音楽を聴くたびに背筋が寒くなるほどの感動を覚えます

第2幕はスカルピアが夕食をとる場面で始まりますが、窓の外から「ガヴォット」(一種の舞曲)が聞こえてきます これを聴いたスカルピアは「下手くそな演奏だ!」と こき下ろしますが、この「ガヴォット」はプッチーニの弟ミケーレが書いた作品です したがって、プッチーニは「つまらない音楽だ」ではなく「下手くそな演奏だ」と言わせたのかも知れません

さて、オペラ「トスカ」を観ていて、一番分かりにくいのは 第2幕で スカルピアが部下のスポレッタに対し「カヴァラドッシを パルミエリ伯爵の時のように、偽の、見せかけの銃殺をするように」と命令しますが、この「パルミエリ伯爵の時」の銃殺がどのような方法かが分からないのです 今回の演出を注意深く見ていたら、聖アンジェロ城の屋上でカヴァラドッシが銃で撃たれて倒れたところに、一人の兵士が近づいて短銃でとどめを刺そうとすると、スポレッタがそれを引き止めるシーンがあります。これを見て「パルミエリ伯爵の時のように」というのは、「銃殺はするが、とどめは刺さない方法を取ること」ではないかと推測しますが、そのように気が付く人は少数かも知れません なぜなら「通常の銃殺」がどのようなものかを知らないので「パルミエリ伯爵の時の銃殺」がどのようなものかがイメージできないからです これについては、今年2月19日にMETライブビューイングの「トスカ」を観て初めて理解できました スコットランド生まれのデイヴィッド・マクヴィカーの演出による「トスカ」では、「通常の銃殺」を舞台上で再現させることによって、両者のどこがどう違うのかが可視化され、われわれが理解できるように工夫されているのです 興味のある向きは2月20日付のtoraブログをご覧ください。いずれにしても、スカルピアの言う「偽の、見せかけの」というのは真っ赤な嘘(それ自体が偽の、見せかけの言葉!)で、最初からカヴァラドッシを銃殺しようとしていたことには違いがないのです

今回のプルミエ(初日)公演で、歌手陣に劣らず大健闘だったのは若き指揮者ロレンツォ・ヴィオッティ指揮東京フィルです 歌手にぴったり寄り添いながら、歌うべきところはしっかりと歌い上げていました カーテンコールで歌手陣とともに満場の拍手とブラボーを浴びていたのは 十分頷けます

急病人が出て第2幕終了後に救急車で搬出され 第3幕が10分遅れての開始となるアクシデントがありましたが、オペラの方は初日から大成功裏に終わったと言うべきでしょう

 

     

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