レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

Mansal アイスランドの人身取引

2015-02-01 05:00:00 | 日記
今回はシビアなトピックでHuman traffickingについてです。昔は人身売買というふうに呼びましたが、最近では日本政府は「人身取引」という言葉を使うのだそうです。

この人身取引は世界的な問題に(以前から)なっているのですが、これはもう「何件、何人が犠牲者となっている」というようには表現できないようで、報道によると「世界でおよそ三千万人が『強制労働』に従事している」といるそうです。

何が「強制」なのかということがすぐに問われますが、曖昧な表現にならざるを得ないところがこの問題の難しさのようです。

この人身取引の関しては米国務省が世界の国々の現状と取り組みを三段階で評価しており、北米、北欧などは一番良いレベル1、ロシア、インド、中国、アフリカと中南米などのいくつかの国々が最低のレベル3ということです。

ちなみに日本とアイスランドは共に「基準は満たしていないが努力中」というレベル2に属しています。人口の多い日本はともかくとして、三十万強の人口で周囲がよく見えるアイスランドがレベル2か?と思うのですが、先週のフリェッタブラージズ紙に大きな扱いが出ていました。

それによると、ここにきてアイスランドでの人身取引が新たに警察の注意を喚起してきているということです。

アイスランドではこのHuman traffickingのことをMannsalマンサルと呼びます。Manは「人」Salは「売ること」なので「人売り」ですが売るからには買う人がいるわけですから、マンマの「人身売買」です。

このマンサルについては、私が覚えている限りでは2001〜2年くらいからちょくちょくニュースで聞いていた気がします。その頃は大体こちらのナイトクラブというかサロンというか、そういうところでのヌードダンサーと関連して扱われていました。

その延長?として売春もあったわけですが、要は外国人の女性らが騙されて連れてこられてそういう労働に従事することを強制されている、というのが話しの基本でした。

今回の記事によると、最近はそのような決まりきったパターンではなく、「強制労働」の内実がもっと多様化してきていて一般の労働市場ににまで入り込んできている、というのです。

南西部警察(国際空港のある地域)のスノリ・ビルグスソン捜査官の話しでは、現在のマンサルの形態は、性的行為のための労働、一般の建築や清掃などの労働(強制)、そして麻薬等の密輸や臓器売買の強制が主なパターンなどだそうです。このうちアイスランドでここのところ顕著になってきてしまっているのが「一般労働の強制」だということ。

よくあるパターンは経済水準の低い国からの女性なのですが、口先で良い仕事や住居を約束して連れてきてから、パスポートなどを預かってしまいます。そしてセキュリティナンバーの取得や、住民登録などのすべてにお金がかかるのだ、と嘘をつき、自分に借りがあるのだと思わせてします。

それ以降も社会についての正しい知識を与えることをせずに、とにかく周りとの接触を断つようにして孤立させる。そしてさらに外に相談を持ちかけたりしたら国外退去になるのはお前だ、と吹き込むのだそうです。

こうしたマンサルは2009年に初めて人身取引として起訴された件があったそうですが、証拠不十分で容疑者は無罪になりました。スノリ捜査官の話しによると、被害者の協力を得るのが非常に難しく、よってマンサルを立件するのは容易なことではないのだそうです。

被害者が自分を被害者と認識するのを拒否したり、あるいはまったく被害にあっていると気がつかないこともあるのだそうで、これはマンサルの「特徴」のひとつに挙げられています。

こうしたマンサルに対抗するには、警察や関係機関はもちろんのこと、一般の人々がマンサルについての理解を深めて知識を持ち、周囲にマンサルの被害者がいないかどうか注意を配ることが望ましいことのようです。

「マンサルについての対応する側の知識も幅広く深くなってきています。十年前なら『普通の人材派遣ビジネス』として見られていたような商売が、現在ではまったく違った視点をもってチェックされています」とスノリ捜査官。

注意すべきマンサルの特徴として挙げられているのは、特定の個人がパスポートなどを保持していない。当該者が自由に友達などと付き合っていない。当該者が自由に旅行に行ったり、余暇の活用をしていない。当該者が他の人と接触する機会(集会に参加したり、教会に行ったり)を制限されている、等々です。

ちなみに世界的に見て、マンサルの被害者は八割が女性、そして総数の半分以上が十八歳以下の未成年、子供だそうです。

というわけで、残念ながらアイスランドも犯罪のない明るい社会というわけではありません。取り分けひどい、というわけでもないでしょうが、努力すべき課題は山ほどあるようで。

私自身、実は移民牧師としてマンサルの被害者に接する可能性は常にあります。うっかりしてマンサルの「サイン」を見逃ししまったりしたら、単なる「ボケ」ではすみません。新しい知識をインプットしないと...


応援します、若い力。Meet Iceland


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is


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