レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

シリア難民認定ゼロとは?

2015-02-15 05:00:00 | 日記
先日、ネットで日本のニュースを拾い読みしていて、朝日新聞のデジタル版のあるニュースが目に入りました。シリア内戦問題の関連記事で、既に一月に配信されたもので、日本にいるシリア難民の男性が二年半ぶりに奥さんとお子さんふたりに日本で再会できた、というものでした。

"シリア難民支援に巨額を拠出する日本政府だが、シリア出身者の難民申請はこれまで、すべて不認定としてきた。ユセフさんのように人道配慮で滞在が認められても、家族の呼び寄せは難しかったが、支援団体や国会議員らの働きかけもあり、初めて実現した" (1月24日Asahi.com)

ということで、このユセフさんも難民として受け入れられたわけではないようです。これを読んで実に悲しく、また恥ずかしく思いました。「シリア難民受け入れゼロ」どういうことなのでしょうか?

世界では現在5000万の人が難民となっているそうです。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の報告ではそのうち60万人以上が「庇護申請者」です。難民と肥後申請者は何が違うのかを非常に簡単に言ってしまいますと、例えばシリアの内戦を逃れて大挙して避難民がヨルダンに逃れたとします。この人たちはそのまま難民です。変な言い方ですが素性がはっきりしているわけです。

ところが同じように内戦や弾圧から逃れるために、個々人が自分で工夫して国境を越え、多くの場合は偽造パスポートや無旅券で第三国に逃れてそこで保護を求めるのが「庇護申請者」となるわけです。

庇護申請者の場合は本当に難民なのか、別の意味での不法入国者なのか一目ではわかりません。そこで審査が必要になるわけです。

この難民/庇護申請者問題は実はヨーロッパでは過去何年も大きな問題となっています。先に述べましたようにUNHCRの2013年度の報告では世界で60万人以上が庇護申請を行っており、そのうちの79%がヨーロッパでの申請です。ちなみに次いで北米が16%、オセアニア4,1%、日本を含むアジアでは僅か1
%に過ぎません。

なぜヨーロッパが多いのかというと当然のことながら地理的な問題です。現時点での紛争地域は、つまり難民を生み出している地域ですが、中東やアフリカに多く、日本やアメリカよりは圧倒的にヨーロッパがたどり着きやすいからです。

地中海を挟んで北アフリカや中東は南ヨーロッパと隣り合っています。ですから必然的にと言うか、ごく自然にギリシャやイタリアが難民のヨーロッパでの玄関口になってしまいます。

難民を満載したボートが海難事故にあって多くの人が生命を落とすような悲しい出来事も多く起きていますね。2013年秋のイタリアのランペドゥーサ島沖の船火災では366人の犠牲者が出てしまいました。この船はリビアから500人以上のソマリア、エルトリア難民を乗せていたとのことでした。

ですからヨーロッパ内でも庇護申請者数は一様ではありません。申請登録数のトップはドイツで11万件。次いでフランスが6万件(北米を含めるとアメリカが9万件弱で二位)、スウェーデン5万強、イギリス3万、イタリア3万となっています。

ちなみに庇護申請者を生み出している主な国はどこかというと、やはり内戦が悲惨さを増しているシリアがトップで5万人(といってもこれは2013年の数ですので、今はもっと多いと考えられます)、ついでロシアの4万人、アフガニスタンが2万6千、セルビア、コソボ、パキスタンが2万前後、ソマリア、エルトリア、イラン、イラクがそれに続いています。

これらはUNHCRの報告からの数字なのですが、実際には全ての避難民が庇護申請をするわけではありません。たどり着いてそのまま「不法外国人」となってしまう人も多くあるようです。ですから「難民−庇護申請者−不法外国人」の境目はかなり曖昧で、その実数も把握しにくいもののようです。

その曖昧な立場の人たちのことを「難民」と呼ぶか「不法外国人」と呼ぶかでは、それだけで随分とニュアンスが変わってしまう気がしませんか?実際に難民に対しての嫌悪感や差別はギリシャなどでは相当ひどい、というニュースが伝わってきています。

ギリシャはそのままでも経済が破綻していて、国民生活が大変なくにですからね。そこへもってきて難民の受け入れ、というのは確かに負担が大きすぎるのでしょう。ギリシャやイタリアでは「EUは我々にだけ負担を押し付けて、何も援助しようとしない」という不満の声がだいぶ高まっているようです。

さて、冒頭の話しに戻って日本です。私が大学生の頃、ベトナム、ラオス、カンボジアのいわゆるインドシナ難民の受け入れ促進の運動に参加したことがあります。その頃日本は「難民に冷たい日本人」という批判を世界から受けていました。

その後多少改善されたか、と思っていたのですがこの「シリア難民認定ゼロ」のニュースを聞いて「やはりそうなのか」という気がしてしまいます。残念ですね。私は日本人で、国粋主義者ではありませんが愛国心は持っています。

その反面というか、だからこそ、やはり改善すべき点や態度を改めるべき点についてはちゃんとそれを求めていくことは絶対に必要だと考えます。シリア難民認定ゼロ、というのがヨーロッパの人から見れば「オー!マイ..!??」の出来事だと思いますよ。これでいいのでしょうか?と日本のリーダーの皆さんに問いたい出来事です。

アイスランドと難民/庇護申請者の関係については次回にでも扱ってみたいと思います。


応援します、若い力。Meet Iceland


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする