長嶋野球と森野球は柏戸と大鵬の図式

 スポーツイベントがない昨今は過去の名勝負が語られるケースが
多いのだが、昨日はNumber webで鷲田康氏のコラム・プロ野球亭
日乗で‘ジャズとオーケストラの監督論’が掲載されていた。

 これは94年の日本シリーズ前に当時ライオンズの監督として常勝
軍団を作っていた森祇晶監督のスタイルに対して長嶋茂雄監督が、
‘指揮者のタクト1本で整然と各パートが譜面通りに音楽を奏でるオ
ーケストラがライオンズの野球なのに対し、私の野球は演奏のノリ
の中で様々なアドリブが飛び交うジャズみたいなもの’と語っていた
という長嶋と森の監督論の違いである。

 そういえば当時の藤田元司監督率いるジャイアンツがライオンズ
に勝てないのが話題になっていたわけで、今となっては何とも懐か
しい話を思い出させるコラムだった。

 鷲田氏がコラムで語っているように緻密なデータ分析に基づいた
戦術眼で選手を駒として起用しチームの力を引き出して行くスタイ
ルの川上哲治・森祇晶・野村克也・落合博満と、選手の力量を引き
出し それを束ねて勝利に結び付けていく星野仙一・仰木彬・権藤博
に長嶋茂雄と監督には2通りのタイプがある。

 オーケストラ型は安定感がジャズ型は爆発力が持ち味という事に
なるわけで、オーケストラ型はややもすれば‘面白くない’と言われる
しジャズ型は‘安定感がない’と言われる欠点を持つのだろう。

 長嶋野球に詳しい柏英樹氏が長嶋監督が好きな力士は高見山と言っ
ていたのを思い出す。

 高見山は勝つ時は派手だが負ける時も負けっぷりがいいわけで、
観客を喜ばせる‘華’を持つタイプで横綱でいえば‘大鵬より柏戸’と
いう事になるのだろう。

 速攻相撲を得意とした柏戸は大関昇進前に度々うっちゃりを食う
ため評論家達や一門の親方衆から四つ相撲を取る事を勧められるの
だが、師匠の伊勢ノ海親方は‘柏戸は体が硬いうえに不器用なのだか
ら下手に四つ相撲を覚えると最大の武器であるスピードと突進力が
犠牲になるので立ち合いのスピードを磨くように’という教えを守り
自らの長所を磨く事で大関&横綱に上り詰めている。

 つまり長嶋野球というのは長所を伸ばして短所を覆い隠して行く
というスタイルで、柏戸のスタイルとよく似ていると思う。

 だから大鵬と柏戸という全く対照的なキャラの横綱が鎬を削った
柏鵬時代に相撲界の人気が上がったように、オーケストラ型とジャ
ズ型が互いを否定せず鎬を削る事により野球界も盛り上がるのでは
ないだろうか。

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